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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第一部  鉄の勇者のサバイバル
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第7話 戦闘力

グルーーという唸り声で目を覚ますと、熊が消えていた。

引きずられた血の跡、そして、小屋のすぐ外に、狼の大群がおりましたとさ。

狼は灰色で、おでこに小さなツノが1本生えていた。異世界狼。

狼は熊の死骸に群がり、貪っていた。


狼はコンテナのバリアには入れないようで小屋の周りをぐるぐるしていた。数匹が俺を狙っている。

では、なぜ熊がいないのか。思い起こしてみれば、熊でかすぎて、足がはみ出てましたわ。血の跡がべっとり続いていた。足をくわえてひきづったのだろう。


俺を食べたい狼たちは何度もバリアに頭をぶつけて無念そうな顔。ぶつかっているところを見ると、コンテナからの距離は3メートルくらい。つまり3メートルの絶対安全圏というわけ。


うーん。しかし、考えてみると、女神バリアに頼っているとダメなのではないか。戦う術を鍛えないと、この先、詰むな。

そういえば、女神が言っていた。

俺には戦いの才能があると。

これまでの日常生活にほんで、戦いの才能を自覚したことはなかった、というか、喧嘩で勝って気持ち良いことなんてなかったし、正直、本質的には暴力は好かん。

日本にいるとき、喧嘩で勝っても良いことなんてほどんど無かった。勝っても負けても気持ちの良いことなんてなかったし、喧嘩の噂を聞いた周りの女子なんかからは、すごく怖がられるし、近所のおばさん達からは白い目で見られるし、親には怒られるし、警察にはお世話になるし、怪我はするし。良い記憶なんか無い。

だが、しかし。今はそんな悠長なことは言ってられない!

異世界で、生きるため、食べるための戦いならなら仕方ない!


ここは弱肉強食の世界。

気持ちを切り替えなければ生きていけない。

やらなければやられる。


今、周りをたむろう狼は、俺を食おうと狙っている。

敵は、およそ12匹。


うん、本能的には、勝てそうな気がする。剣を手に入れた今、熊と比べれば、こいつら、弱そうな気がする。

が、念には念を。昨日の熊の愚行は繰り返さないぜ。

まずは・・・


バリアの中で「鑑定」して、素早く本に目を通す。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

クライウルフ

獣類 通称泣狼 食用可

割とどこにでもいる肉食獣。危険度C

10匹程度で群れて行動する。連携能力に長け、泣くことで会話している。四方から襲いかかる同時攻撃を得意とするため、ある程度の腕前でないと危険。

短いツノは特に何の力も持たない、ほぼ飾り。特殊能力が特にないため、対処さえできれば良いカモ。

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


ふーむ。鳴きではなく泣くのか。

これは。

よし、こうしよう。

これからは基本、コンテナを持って移動。

敵を見つけたら鑑定、即調べ、勝てそうならコンテナを置いて挑む。

最悪負けそうなら、コンテナに守ってもらい、逃亡。

完全な作戦じゃあないか。余裕すぐる。


「よっしゃ!」と立ち上がり刀を構える。

小屋の入り口に刀を向け、コンテナを左手で抱えながら、ゆっくりと外へ出る。

外に熊の死骸が転がっていた。一部、食いちぎられて骨が見えている。

俺の夕飯になんちゅうことをしやがる。ちょっと腹が立ったが、小屋の周りで戦うのは避ける。小屋の周りが血まみれになるのは、叶わん。

血の匂いで新たな敵が来ちゃう。熊の死骸もちょっと離れたところに後で捨てにいこう。貴重なタンパク源。なんかもったいないけど、狼の食べ残しは抵抗ある。


狼は俺の周りをぐるぐる回っている。まずは、海岸近くまで行く。開けている場所の方がりやすい。


狼を引き連れ、砂浜へ向かう。一定の距離を空けて、ぞろぞろとついてくる狼。

この異境の地では、この狼でも最弱の部類かもしれない。もしかしたら、トカゲも狼くらいの強さなのか? 熊と魚が異常に強い?

うーむ、よくわからんが、これから試していくしかない。


砂浜にそっとコンテナを置いて、狼たちと対峙する。

「さあ、狼くんたち。君たちに恨みはないが、経験値になってもらおうか」

刀を目線に構え、腰を低くする。四つ足の獣は、低いところから襲ってくる。

目だ、目を狙え!


かすかな砂を噛む音、すかさず刀を一閃する。

飛びかかる狼の首を上から一太刀。

まず1匹目の狼の首が飛んだ。ほおお、切れ味良いね。


同時攻撃が得意ということだから、すぐさま位置を入れ替え、可能な限りコンテナの安全地帯を背負うようにして、狼どもを背後に回らせない。


ぐるう、という唸り声と共に次の1匹が飛びかかる、かと思うとフェイント。左のやつが飛びかかってきた。さすが、連携が優れている。完全に目線がフェイントに向いてしまった。


が、甘い。


死角に刀を突き刺す。

案の定、狼が飛びかかってきていた。

ぶっさりと、狼の首筋に刀が突き刺さった。


連携が取れているということは、タイミングが取りやすい。

見なくてもわかる。


狼の首に刀を突き刺したまま、そのまま右へ狼ごと刀を振る。


1匹に死体をぶつけた。

キャインと泣いて飛びのく。衝撃で刀から死体が抜ける。


続いてはこちらの左足、右足、左腕への同時攻撃。

3匹同時に口を開けて襲ってくる。


しかし、すぐさま後ろに下がり、安全地帯を抜けて一気に5メートルほど距離をとる。


狼が見えない壁に狼どもはぶち当たり、仰け反る。


バリアにぶつかった狼を見て、他の狼が困惑した顔をする。


ふふ、ずるいだろう。人間様を舐めるな。


狼の隙を見逃さず、孤立している1匹に肉薄して、前足を斬る。


そのまま目を突き刺して、3匹目の処理。


その瞬間、1匹が吠えた。体が大きめ、ボスらしい。


続いて5匹が左右から同時に牙を向いてきた。


見える、見えるぞ! まるでスローモーションのように見える。


そういえば、なんとなくだけれども、昔から空間把握は得意だった。

ドッヂボールで当たったことがなかったよな。


あ、こんな時にそんなことまで思い出すとか、うん、走馬灯ってやつかこれ。


刀は二閃。飛び上がり、距離を取り、2匹の首を撥ねた。


チリリとする緊張感。日本の平穏では感じることが無かった命のやり取り。

うん、悪くないかも。


これが天性ってやつか。女神が言う、戦いの才能。


1匹がまず逃げて、ボスが焦ったように逃げた。それに続いて、他が続々と逃げ出した。


ハアハア。乱れた呼吸を整える。どうやら興奮しているようだ。

初めてに近い感覚。

生き延びたという喜び。


日本では味わえなかった格上との命のやり取り。

多分、この死の大陸で最弱に近い俺が、1日生き延びたこと。


蹂躙されることなく、抗える喜び。


絶望に近い中から、それでも足掻けるという実感に震えた。



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