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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第二部  鉄の勇者、大陸をゆく
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第67話 待望の相手

モーゼルが村に踏み込んだ時、ヤ人族の勘が、圧倒的な危険を知らせてきた。ドラゴンと戦った時よりも高鳴る危機感。

小屋の陰から、圧倒的な殺意と、強力な暴力が、モーゼルを狙い撃ちした。

この攻撃は!

気弾による攻撃!

モーゼルの横をかすめ、2階建ての建物を砕く。舞い上がる土埃と、破壊の煙。

続いて吹き飛ばされるモーゼルの巨体。

やばい、これは。

「逃げろ!」

吹き飛ばされながら、モーゼルは大声で叫んだ。俺が止めねばならん。こいつは。

着地と同時に、モーゼルは飛び出し、敵に渾身の拳をぶち当てた。

敵は片手でそれを受け止め。

「少しは、やるようになったか」

と、嘲るように言った。

気配で分かっていた。この相手は。

モーゼルは髪の毛をこれまで以上に逆立て、怒った。


「マグナ! 貴様ぁあああ!!!」


そう、その相手とは、長年の大望、探し求めた兄だった。


黒髪をなびかせ、目を閉じたままで、嘲るようにマグナが言う。

「貴様など弟ではないわ、この裏切り者が。人と暮らし脆弱に退化したクズなど、誇り高き我らの血と認めぬ」

マグナの蹴りが、モーゼルを弾き飛ばす。


瞬殺のマグナリア。


モーゼルは、その名を聞いた時、もしかしてと思った。

第二魔王軍最強。見るもの全てを瞬殺すると言う、伝説の戦士。


戦いに出ることは少なく、出ればみなごろし


いずれ、相見えると思っていたが、まさか。

モーゼルは悟った。ここが、自分が予感していた死地である、と。

そう考えると、モーゼルは少し冷静になった。


ふうと大きく呼吸をし、整える。

「兄者。次に会う時、俺は何を語るか、色々と考えていた」


しばらくの沈黙の後。

「だが、実際に会って、話すことなど、一つもない。ここで死んでくれ」

モーゼルが毅然とした顔つきで言い放った。


金色に輝きながら、マグナを睨む。


「愚かな。貴様に俺が倒せるわけがなかろう。貴様こそ死ね。死んで恥を雪げ」


マグナは閉じていた目を開く。


次の瞬間、モーゼルの左腕が吹き飛んだ。

「ぐ!」

「ほう!? 避けるか。この技を使って、命を免れたのは、貴様が初めてだ」


左腕から吹き出す血。頑丈な、鉄の武器でもかすり傷もつかないヤ人族の腕を引きちぎる謎の攻撃!


モーゼルは、咄嗟に左腕を拾い、傷口を付ける。

ヤ人族の生命力は凄まじい。少しの傷などすぐに塞いでしまう。流石に今回はちぎれた腕。すぐに完治とは行かないが、傷口を塞ぎ、動かないまでもなんとか腕をつなぎとめた。


血まみれになり、マグナを睨むモーゼル。


何をされたか、全くわからなかった。見えない。いや、瞳が光るのが見え、咄嗟に左手で防いだ。


そして、腕が弾け飛んだ。


流れる脂汗。


目を閉じたまま、両手を合掌するマグナ。だが、次の瞬間、両手を開くと、そこには細長い刀が握られていた。

「わが里より持ち帰った薄利の刃。七枚薄羽斬にて、果てよ」

ピンとした気迫。並の刀ではない。ヤ人族の里にあるからには、ヤ人族を斬れる刀に違いない。厄介な。

力が拮抗するものの戦いの場合、雌雄は武器により決まることが多い。

対してモーゼルは、アンバーフィストを取り出し、装着した。絶対に壊れない拳。至高五花の一。最強の武器を持って、挑む。


挑む・・・


モーゼルは挑むと言う言葉を長く忘れていた。

兄は強かった。そして今、さらに強くなっている。

瞬殺。その二つ名を決定づける、なんらかの強力なスキル。

薄眼を開けるようなあの目の開き方。

目が光ったことに関係がある。


あの目。何か秘密があるに違いない。


モーゼルが駆け出した。


本気を出したモーゼルの速度は、音速を超える。常人では耐えられない運動を、ヤ人族の強靭な体が支える。

踏み込みで発生する衝撃波。マグナの背後に回り込み、視線から外れる。常に背後を取る動きを続ける。


モーゼルが極めた拳法、大極龍拳は、数百年の歴史を持つ拳法で、開祖は陳蘇山。異世界人だと伝えられている。

蘇山は、魔物がはびこるこの世界の暴力に辟易し、脆弱な人が生き残るための手段として拳法を伝えた。

理を持って邪を制し、心を持って魔を制す。

その動きは、いわゆる北派の直線的な動きに似て、より短い距離で、より強く、より効果的に力を伝えることに重きを置いていた。

蘇山は異世界のスキルと魔力を取り込み、身体力を気力として物理化。その力を拳や脚に載せる技を編み出した。

全ての力を一点に集中。龍のごとき動きで相手を打ち破る。大極龍拳にはそうした意味が込められていた。

型から型への体運びは、繰り返すことで合理化し、高速化し、無意識に最適な動きへと昇華する。


モーゼルのえぐり取るような猫手が、マグナの背後から黒髪を掠める。

薄い刃を、さながら花びらの模様のごとく、身の回りに纏わせるマグナの華麗な刀技を、モーゼルは恐るべき速度で掻い潜りながら、大地を、虚空を、木々を、家々を砕きながら、マグナの影を追いかけた。


二人の超人的な戦いを見守るのは、ともに移動してきた斥候の冒険者のみ。彼は、唖然として、何もできずにいた。こんな刃と暴拳の中に飛び込むことなど、できない。


拳をぶつけながら、モーゼルが問う。

「住人をどうした! まさか」

「ああ、もちろん生きているものはいない。何を怒る? 当然だろう」

ことも無げにマグナが言う。


モーゼルのこめかみに怒りの血管が浮く。

マグナが問い返す。

「人間の味方など、いつまで続けるつもりだ。モーゼル」


刀の勢いがさらに険しくなり、モーゼルの頬を掠めた。

まるで豆腐でも切るごとく、あっさりと切り裂く。


マグナの剣さばきは、達人のソレだった。しかも、筋力はモーゼルと同等かそれ以上。


マグナが楽しそうに言った。

「最近は、剣を抜くことすら無かったからな。こうして、体を動かせるのも、同じヤ人族なればこそ。我らこそ最強。そもそも、他に与することが間違いであった」

攻防の中、遠くを見るような語り口で、マグナが言う。


モーゼルが、マグナへと告げる。

「俺も里へ行った。日記を読んだ」

マグナは、動きを止めない。

顎下からの斬撃をモーゼルは避け、距離をとった。


「ほう」とつぶやき、マグナが刀を下ろす。


「それでも貴様は人と共に暮らす。意味がわからんな」

マグナが小馬鹿にしたように言った。


だが話には興味があるようだ。離れたところからモーゼルを睨む。


「俺は、真実が知りたかった。だから・・・」

モーゼルは、続けた。


「里の討伐に加担した老兵を探し出した。そして、真実を聞いた」


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[良い点] 因縁の兄との対決! 果たしてここがモーゼルの死地となるのか!? そしてヤ人族壊滅の真相 次回が気になる
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