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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第二部  鉄の勇者、大陸をゆく
63/214

第61話 父の怒り

第三の魔王が去り、しばらくして目が覚めた時、モーゼルは悔しそうな顔をした。


「何か覚えているか」と俺が聞くと、全員首を振った。


「いや、会場に着いた途端、眠らされた。何も覚えていない。異常な魔術の腕だ」


本当は眠らされたのではない。眠らされたと記憶させられたのだ。

だが、それは当人たちには見分けようもない。


「魔王と何か話したのか」

ローグが聞いてくる。


「・・・内容は、危険があるから誰にも話せない。相当な内容だったとだけ言う。時が来れば話す。今は聞かないで欲しい」

誰かに話せば、どこかで魔王軍に、魔神に秘密が漏れる可能性がある。


皆、不満げに首を振る。


酒場を後にして、隊へ戻ると、騒ぎが起こっていた。


フライドチンキが、慌てて駆け寄ってくる。

「ああ、やっと帰ってきた。モーゼルさん、あなたの息子さんが拐われたのよ」


その言葉を聞くや否や。


モーゼルの目がつり上がり、何も言う間も無く、空へ飛び上がった。


ドーンという地面を蹴る破壊音。


一瞬だけモーゼルの顔が見えた。

その時のモーゼルの顔は、いつも以上に鬼のようだった。


それは今まで見たこともないほどの速度で、あっという間に視界から消えた。


商隊から、モーゼルがいなくなった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


――俺は一月ひとつき以内に死ぬーー


モーゼルが言っていた言葉が思い浮かぶ。

道中何度も思い出しては、俺を悩ませる言葉だ。


飛び去っていったモーゼルは、おそらくガードナーに戻っているのだろう。


商隊では、フライドチンキが中心となり、この後どうするかが話し合われていた。

隼の魁はリーダーのローグが打ち合わせに参加している。


もともとモーゼルはこの街で離脱することになっていた。

表向きは。


第三の魔王との会談のためにここまで同席したのだから、この後は、別行動となる。

その後も、離れたところから、隊を見張り、危険があれば、遠方から助けに来る。

そういう予定だった。


モーゼルが隊を離脱する計画。その理由は、大きく2つある。

一つは、注目をそらすため。

二つは、こっそり影から補佐するため。


レブロンから先は、国境付近となり、盗賊が多く出没していた。


盗賊をおびき寄せ一網打尽にすることも、行きがけの駄賃として画策されていた。

モーゼルが離れたとなれば、必ず盗賊は食らいつく。それを逆に退治する。あわよくばの計画ゆえに、囮として商隊は存在した。もちろんモーゼルが近くから援護する、と言う流れだ。


だが、敵もさるもの。

モーゼルの息子を誘拐し、強制的にモーゼルを排除した。


日程的に、モーゼルを待つ余裕はない。列車の予約など、全体の日程はある程度の遅れは計算に入れているものの、1日2日単位で遅らせることはできない。

実際、すでに半日程度の遅れが出ていた。ここレブロンで遅れを回収し、明日の朝で時間を合わせることになっている。


俺が予想するに、今日一日待ち、明日になれば、モーゼル不在でも出立する。


ローグが戻ってきたとき、果たして、予想通りの答えが返ってきた。

「明日にはここを立つ」

モーゼルが戻らなくとも。


ローグはそう決定したことを俺たちに告げた。

俺は焦った。モーゼルが死ぬと言う自身の予言。


この騒動で、まさか、モーゼルは死ぬのか?


俺にできることは何か。

俺は必死で考えた。


まず、居場所だ。


モーゼルの息子、リートの居場所。

俺には手段がある。


知識の書だ。

「リート=ビッグズ。居場所」


村はずれに移動した俺は、知識の書を取り出し、そう呟いた。

海で俺自身の居場所が表示されたように、リートの居場所が表示されることを期待して。


俺は本を願いを込めて開いた。

開かれたページには、地図が表示されていた。


光の点が、移動している。


よし! 表示された。


場所はガードナーから西に向かってまっしぐらに進んでいる。


一度本を閉じ、再度、声に出す。


「リート=ビッグス。距離。クロガネ=テツオ」

そしてまた本を開く。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

リート=ビッグズまでの距離 240キロ

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


さらに、調べる。

「リート=ビッグズ」


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

リート=ビッグズ

通称 リート 危険度A 戦闘力S

歩く最終兵器・モーゼル=ビッグズの息子。5歳という若さながら、流石にヤ人族の末裔だけあり、すでに戦闘力が突出している。怒ると見境なく物を破壊するため、母親がそばにいないと、災害のような存在となる。

現在は魔道具により眠らされ、袋に詰められ運ばれている。

スキル 気功 頑丈 種族スキル 内燃

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


ほっと胸をなで下ろす。まだ無事なようだ。

眠らされているということは、殺されてはいない。


ここから240キロ。本気を出せば、2、3時間で追いつくか。

モーゼルと合流する余裕はない。俺が助けに行くことが最適解だろう。


俺はローグに声をかけ、モーゼルの息子を助けに行くことを告げた。

「一人で大丈夫だ。明日には予定通り出立してくれ。必ず追いつく」

言い終わるかどうかで、俺はもう、街を飛び出していた。


もはや、スキルを隠している余裕などない。

見られても構わない。誤魔化す。


街道は、レブロンの街から数キロ離れている。街道に戻るのは無駄に思えた。直線距離を進む。


草原は、見た目以上に、足場が悪い。石がゴロゴロしていて、所々、泥、穴、糞もある。

4本足では、足を取られる。8本足の馬。


ムカデのような動きで、高速で動ける馬をイメージして、走りながら鉄を錬成し、それに乗り込む。


モーゼルと特訓した時よりも、足を細く、蹄を広く、バネの本数を増やし、サスペンションを効かせる。


速度をどんどん増して、体感速度は100キロを超えている。足が多いから、つまづくようなことは無い。

必ず3本以上足が地面に接し、体制が崩さないようにコントロールする。


途中、ゴブリンや狼が近寄るそぶりを見せたが、こちらの速さに追いつくこともできない。数匹のウサギやゴブリンを轢いた。


俺はもう、必死。


一刻も早く、リートを救い出す。


犯人がいつリートに危害を加えるか分からない。

人の親として、子供を誘拐する鬼畜は許せない。俺は久々に怒っている。


犯人はおそらく人間だろうが、抵抗でもされたら、俺は初めて人を殺めるかもしれない。

容赦できる自信がない。


走りながら、知識の本を取り出し、リートの現在地を確認する。


残りの距離は184キロ。気持ちが焦る。


方向もややずれていることを確認し、修正。


直線方向に、岩山がそびえている。

迂回するか。それとも突っ切るか。


突っ切る選択。

直線を行く。


岩山の裾野は、杉に似た植物で森ができていた。草原から、森へ突っ込む。木を避けるのが面倒だ。エレキクラーケンと戦った時の要領で、ワイヤーを飛ばし、縮め、空に飛び出す。ワイヤーを打ち出し、空中で姿勢を制御。

薄く、鉄板を、限りなく薄く伸ばし、強化。パラグライダーのように空を滑空する。


凧の逆バージョンをイメージして、地面にワイヤーを飛ばして縮め、機体を制御して、推進を増す。

初めてのアクションにしては、割と順調に進む。


このままの勢いで岩山を超えられる、そう思った時、横から、巨大な鳥が突っ込んできた。

この辺りの危険生物。ローという鳥だ。巨大な嘴が、鉄の翼を咥えにくる。翼を畳み、口の中に鉄の棘を大量に食らわせる。


爆発する怪鳥。内部から爆ぜる。

雑魚に構っている暇はない。

重力に従い、落ちる。鉄を変形させて、再度、8本足の馬に。地面着地の衝撃を吸収し、そのまま走る。

そびえ立つ岩山。薄茶色の山肌。人の背丈を越える岩がゴロゴロした崖。


ワイヤーとバネを駆使して、登る。後ろを振り返ると、相当な高さまで登ってきた。

尾根を越えると、急な斜面。背丈の低い樹木が所々生えた岩山。


再度、翼を作り、パラグライダーの要領で、なだらかに下っていく。

知識の書を再度確認。残りの距離は124キロ。


着地。平原を再び走る。


気が焦る。うおおお、と吠える。

巨大な牛の群れ。5メートルほどもある象のような牛が数十匹群れている。


構わず突っ切ろうと思ったが、無駄な殺生は避ける。ワイヤーで、空へ飛び出し、牛を飛び越えて進む。

またなだらかな草原が見渡す限り続く。途中、広い川があった。ボートに変形して、サクッと乗り越える。伊達に大洋を渡った訳ではない。この程度の川、障害にもならない。


休むことなく走り続けて、いよいよ距離が近づいてきた。

突撃するわけにはいかない。相手もいざとなれば、子供を人質に取るだろう。今は、相手も油断しているはず。

1キロ圏内に近づいた頃合いで、カバンからナイトメアを呼び出す。


「聞いていたろ、ナイトメア」

「イエス、マスター。すでに会話が聞こえています」

ナイトメアの聴力は、人智を越えるレベルだ。半径1キロのひそひそ声を聞き分ける。風吹く荒野で懸念したが、しっかり聞こえていたようだ。


「内容をまとめてくれ」

「モーゼルは間抜け、子供を置いてきたら、即撤収。向かう先は、別の盗賊のアジト」

「別の盗賊? そういうことか」


モーゼルを護衛から引き離すため、子供を攫うまでは良いが、その後は、爆弾を抱えるようなことになる。

ではどうするか。ライバルに押し付ければ良い。ライバルが、子供に危害を加えればそれで良し。救い出されてもそれで良し、ライバルがモーゼルに排除されてもそれで良し。

目的は、時間稼ぎ。モーゼルの排除。


俺が短時間で、追いつくことは、奴らにとっては想定外のシナリオのはず。別の盗賊団のアジトへ連れ込まれる前に、助け出すチャンスはあるはずだ。

「あたちの出番でつ!」

カバンから、ピノコが飛び出してきた。


なんか、黒いバンダナ。右目に眼帯。どこの特殊部隊コスプレだよ。

「クロタン、いくでつよ! みんなはココでマツでつ」


クロちゃんの背中に乗り、ピノコが草むらに飛び込む。カサカサと草むらが動いていく。

ナイトメアに様子を聞く。


「どうだ」

ナイトメアに聞く。

音だけで、状況が把握できているはずだ。


ナイトメアが無表情に答えた。

「間も無く、接敵。鱗粉を蒔きました。今、全員、倒れました。もう大丈夫です」


すぐさま、移動し、目的を捕捉。

細い道に、馬2頭、男が2人、倒れ込んでいる。

男達は2人とも、汚い、中年近い男だった。汗とションベンの匂いがする。


道端に袋が投げ出されいる。

駆けつけ、袋を開ける。子供が眠っている。


脈を測る。傷がないか確かめる。どこにも問題はなさそうだ。

袋の中に、黒い石が入っていた。鑑定。


――眠りの魔導石


調べる。


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眠りの魔導石

眠りの効果を付与された魔石。起動の呪文後、次に触ったものを眠らせる。解除の呪文で効果を取り除くことが可能。魔力が続く限り効果が永続する。効果は表面の文字が見えている限り。魔力が切れた際は魔力を注入すれば再度効果が復活する。強い力で物理的に破壊可能。

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


問題なく起こせそうだ。

さて、起こす前に、こいつらのことも調べておこう。


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コソ

通称 コソ 危険度B 戦闘力D

ガードナーのスラム出身の元難民。盗賊ヤケクソ団団員。そのほか特記事項なし。

スキル 隠密 

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ドロ

通称 ドロ 危険度A 戦闘力C

ガードナーのスラム出身の元難民。盗賊ヤケクソ団団員。そのほか特記事項なし。

スキル 信用

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


圧倒的なモブ感。何この手抜き。

鉄のワイヤーをぐるぐる巻きにして、練成で固める。器具を使っても簡単には外れないレベルでガチガチに鉄で拘束する。

隠密はさておき、信用ってなんぞ。


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信用

コモンスキル。人に信じてもらいやすくなる。

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


なるほどね。そのスキルで騙くらかしたのかな。ていうか、こいつらの戦闘力で、もしリートが目覚めていたら、返り討ちにされてリートに殺されていたんじゃないのか。


なんにせよ、リートが無事で良かった。間に合ってよかった。


いつの間にやら、日が沈もうとしていた。

第三の魔王と話し、昼過ぎ頃にレブロンを飛び出したと思ったが、思ったより魔王とのやりとりの時間がかかっていたのか。


むう。それとも。記憶を消されたのか?

本当に寒気がするスキルだ。考えても仕方がないが、気が狂いそうになる能力だ。


疑い出せば気になって仕方がない。全てが信用できなくなるだろう。


ひとまず、リートを起こす。魔導石に向けて操鉄術で作った巨大ハンマーを叩き下ろす。鈍い音がして砕け散る。

するとすぐさま、リートがうーんとあくびをした。

「あれ、ここどこ?」


目をこすりながら周囲を見渡す。

「あ、パパのお友達」

「よお。起きたか。体はどうもないか?」


「え、何? ここどこ?」

「こいつら、悪いやつに連れ去られたんだよ。坊主。もう大丈夫だから。俺がモーゼルのところまで連れて行ってやるから、頑張れ」

手を差し出して、立ち上がらせる。


さて、こいつらもどうするか。


鉄を変形させて荷馬車を作る。

「ピノコ、馬だけ起こせるか?」

「大丈夫でつ! えい」


ピノコはトコトコ歩いていき、馬の鼻先で手を振ると、ヒヒンと馬が震えて立ち上がった。

「いつの間に、こんな力を」

「えへえ。これでつよ」

ピノコが何か透明のビニール袋みたいなものを持っている。何それ。


「ネムリクラゲでつ。海でお兄たんが釣ったんでつよ。覚えてないレスか」

覚えてない。


食えば食うほど強くなる、人食いきのこ・・・。

行動阻害が豊富にそろう、デバフのスペシャリスト。


なんかそんなキャッチフレーズが頭に浮かんだ。


「ナイトメア、馬を馬車に繋いでくれ」

ナイトメアが素早く動き、馬の手綱を引く。

男たちを荷馬車に詰め込み、リートを席に座らせると、ぽっくりぽっくりと馬が歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ガードナーの街へ戻った頃、すでに夜中を回っていた。

リートが載っているので、そんなに飛ばせない。安全第一。

かっぽかっぽと、馬車でガードナーで近づくと、衛兵が飛んできて、槍で取り囲まれた。


大声で、事情を叫び、通すように言うと、話が通じたようで、門を通してくれた。

衛兵たちは大慌てで、連絡を取り合っていた。

街へ入り、モーゼルの家へ向かっていると、空からモーゼルが文字通り飛んできた。


「貴様、どう言うつもりだ!」


鬼気迫るモーゼルに「しー!」と言い、口に人差し指を当てて黙れと促す。このジェスチャーは伝わるのだろうか。

「寝てる、リートは寝てる。起きるだろう」


「うおおおお」モーゼルが泣きながら、リートに抱きつく。まさに鬼の目に涙というやつか。

向こうから女性が走ってきた。


母親、ジェニファーだ。エプロン姿の彼女が髪を振り乱して走ってくる。

「リート、リート、ごめんねごめんね」


リートを抱きかかえるモーゼルに、タックルするように抱きつく。

「私が目を離したから、ごめんね、ごめんね」



馬車は、そのまま二人を乗せて、モーゼルの家までたどり着いた。

道すがら事情は話した。


モーゼルは髪を逆立てながら、歯を食いしばっていた。


すっごく話にくい。俺が怒られている気持ちになる。


「リートには追跡の呪文がかかっている。それが機能していない。消去の呪文で消されたようだ。つまり」

つまり?

「内通者がいるはずだ」


「そうか。モーゼルの兄貴はVIPだろうから、息子を連れ出すのは難しいと思ったが、内通者か」

「びっぷ? どういう意味だ」

VIPは通じないらしい。


「重要人物、ということだ。普通、国の最大戦力とかいう個人の弱点を敵に晒すようなことはしない。もし息子を人質に、国を裏切れと迫られたらどうする」

「・・・」


モーゼルは答えられなかった。が、なんとか声を出した。

「そうならないよう、警備は重点的に行われている。それに、今回は運が悪い。ジェニファーも目を離した」

俺は否定する。


「いや、運ではないな。根が深い問題だと思うぞ。背景を探った方が良い」

「ふむ」

モーゼルが荷台の盗賊を振り返った。

「こいつらには、生まれたことを後悔させてやる」



リートを家に運び、奥さんを残して、憲兵の詰所へ場所を移した。

憲兵は、いわば警察のような組織で、ガードナーの治安と、犯罪防止を主な任務とする騎士集団である。

本部は王城の中にあり、近衛の本部と隣接している。近衛は城の中の防衛、憲兵は町の治安と秩序維持を担う。


憲兵の本部に入る。

モーゼルが犯人二人を両脇に抱え、室内に入ると、夜中というのにどよめきが起こった。

すぐさま、羽のついた兜をかぶった、偉そうな兵士が現れ、モーゼルを迎えた。

「も、モーゼル殿、これは、いかに!?」


「シュサカ。今回の落ち度、どう繕う。王都で俺の息子が拐われた。このガーネがいなければ、息子は殺されていたかもしれん。その時は、俺はお前らを殺していただろう」

シュサカと言われた羽根つき兜の男が、どうやら責任者のようだ。モーゼル激怒り。


この国の要人警護については、先ほど聞いた。


まず、犯罪歴やテロ組織、魔族に関連するものの街への侵入を防ぐ防犯装置、例の青いランプのあれが、街への不法侵入を防ぐはずである。それをすり抜けて「ヤケクソ団」なる指定組織が入り込んだこと。


続いて、モーゼルの家の情報や、家族構成などが知られていたこと。


さらに、子供を入れた袋が、検問をすり抜けて街の外へ抜け出たこと。


さらにさらに、追跡の魔法が消されたこと。追跡の魔法は消されないように対策を施されている。簡単には消すことはできない。要は暗号で保護されているようなものだ。

これを消すためには、何者かが、消すための方策を盗賊に伝えないと不可能だ。


これらの事実が意味するところは、一つ。


内通者がいること、情報を盗賊に提供している何者かがいるということ。

それもその内通者は一般市民ではなく、憲兵の中にいるに違いないことだった。


シュサカと呼ばれた男は、困惑した顔で、モーゼルと俺を会議室へと通した。

入り口で騒がれるのを嫌がったのだろう。


「モーゼル殿。此度の落ち度、まずはお詫び申し上げる。

 しかしながら、内通者とは、いかに」

やや時代掛かった風の喋り方で、まるで奉行のような印象だった。


「俺が尋問する。こいつらの命は貰い受ける」


有無を言わせぬ迫力で、モーゼルが言う。こいつらとは、無論、盗賊の2人。まだぐっすり眠っている。


かわいそうに。モーゼルに尋問されるなら、ライオンの檻に入れられる方がまだマシだ。


「尋問室を借りる。お前らは手出し無用。回復師を数人よべ。報告のために何人かは同席させろ」

モーゼルは吐き捨てるように言って、男たちを抱え上げた。


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