第6話 ある日森の中、出会った
散策は、砂浜から半径500メートルくらいの範囲と決め、あまり森に深く立ち入らないようにした。
海岸が見えるところからは離れないと心がけ、森の方へ立ち入ると、あら不思議。
小屋発見。
こんな人里離れた死の大陸にあばら家を見つけましたとさ。
1部屋程度の小さな家ですわ!
よっしゃーーー! 生きる、生きれる、生きられる!
とはいえ、罠かもしれない。
いや、これは罠に違いない。クロガネホイホイ的なあれだ。
魔王め、卑劣な。
構え的には「月の型」。
右手だけで刀を天に構えて、左手で建物を探っていく。が、罠も何もない。
・・・。
何もない。屋根があるだけ。
寝床もない。埃まみれの床。
まあ、あるだけマシやないか。と気持ちを切り替え、
あ、そうだ。
女神の白いコンテナも役に立つかもしれない、そう思い海岸へ向かった。
海岸で白いコンテナを拾い、とぼとぼ家まで戻ると、熊と目が合った。
くま!
家に熊いますやん。でかい熊いますやん。
完全に気を抜いてた。やべえ、死ねる。と思ったら、熊が猛ダッシュ!!!!
猛烈な勢いでこちらへ走ってきた。あまりのことに体が硬直して動かない。
と思ったら、熊が見えない壁にぶつかった。おおおお、白いコンテナ光ってますわ!
俺の頭の方程式が勝利を確信した。女神コンテナ、バリア=寝床安全。間違いない。女神様ありがとう。これで勝ツル。
頭をぶつけた熊、2メートルくらいの体長のでかい熊が、ひっくり返っているところへダッシュ! コンテナを手放し、刀を振りかぶって、グサー。
渾身の力で、逆手に持った刀をグサー。良い切れ味! 喉元へ、グサー。
熊が足掻く予感。
即離れる。この間、0.5秒。
ちょっと浅くなったかなと思いつつ、コンテナまで戻る。
熊は立ち上がり、こちらへ突進。爪を振り下ろすがコンテナパワーで、弾かれてよろめく。
チャンスとばかり、今度は腹に突きを入れる。
ナイスグサー。
引き抜く刀、噴き出す血。
血塗れの熊が、手を振って応戦してくる。しかし、見えない障壁で弾かれて俺には届かない。
これ、一方的じゃない。余裕すぎる。
熊はやがて動かなくなった。こうして、俺は異世界での初戦闘を勝利で飾った。(トカゲ、魚、フナムシ除く)
さすが俺、やばい、強い、かっこいい。と、ちょっとだけ調子に乗って、反省。この熊が弱かっただけなのかもしれない。念の為鑑定しておこう。
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レンジベア
獣類 通称熱熊 食用可 危険度A
辺境に生息する肉食獣。
見た目普通の熊だが、常に電子レンジのような電磁波を出し、対象を見つけると電磁波を集中させて焼き殺す。まずは目をじっと見つめ、脳を沸騰させる。この攻撃に要する時間はおよそ2秒で、つまり2秒見つめ合えば、大抵の獲物は死ぬ。至近距離で遭遇して生き延びたケースは稀で、多くの目撃例は遠距離からである。普通の熊と見た目が似ているため危険度が増す傾向にある。
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説明文を読んでゾッとした。何これ、やべえやつじゃん!
女神バリアがレンジも防いでくれたのか!?
女神のバリアがなければ、俺は終わっていた。女神ありがとう。ありがとう女神。
バカにしてごめん。残念とか言ってごめん。
女神コンテナなかったら詰んでましたやん。
異世界ケモノ、ヤバイ。これは、気を引き締めてかからねば。
日本にいる時に、1日でこんだけ死にかけることなんてなかった。
熊を引きずって(身体強化サマサマ)、小屋に入ると、壁にもたれて、すぐさま眠ってしまった。コンテナを抱えるようにして爆睡した。
「思い起こせばこの頃、怖すぎてテンションが変になってました」(クロガネ談)