第49話 旅立ちの朝。情報整理
いつの間にか眠れていた。クロちゃんのおかげだ。
カーテン越しに日差しが差し込んでくる。
この世界は、時計が少ない。広場やホテルのフロントにしか時計が置いていない。
時間ははっきりとは分からない。
こんな時は知識の書。
現在時刻と唱えると、8時15分と言う表示があった。
こちらの世界は実は、24時間表記ではない。16時間が1日だと言う。
そもそもの秒や分の単位が違う。
ややこしいのだが、およそ1日は25時間。
それを16等分したのがこちらの時間尺度らしい。
そこで、知識の書に現在時刻、地球時間表示というと、24時間表示に変更してくれる。1日を24分割して、太陽が一番高い時間を正午12時。
その感覚で、現在は地球時間で言う8時15分とのこと。
集合は正午なので、あと4時間ほど時間がある。
そういえば、いろいろ忙しくて、知識の書を見ていなかったと気づいた。
情報収拾は命に関わる重大事である。
と言いつつ、つい忘れてしまう。
時間もあるし、ここまでの情報をいろいろ調べておこう。
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ゴンゲン
ゴンゲン=オ=ゴールハード
双子族 通称ギルド長 危険度B 戦闘力SS
ナミートの街のギルド長を40年以上続ける生ける伝説。数々の冒険者を育ててきた名伯楽。種族特性で合体した時ゴンゲンとなるが、分離してゴン、ゲンと言う本来の状態に戻ることも可能。気難しいが、面倒見が良い。太極龍拳師範。
嫌いなもの 嘘つき 魚の小骨
スキル 身体強化 種族特性 分離合体
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あのジジイ、双子なのか?・・・。双子族?というのはなんだ。
ああ、そういえば、オーシャン船長からの手紙にゴンとゲンって書いてあったな。
誤字か、あだ名かと思ったら、そう言う意味か。
戦闘力SS って 魔将軍より強い。
しかも、スキル、本当に身体強化のみ。
他にもたぶん、表示されてないだけで、気配察知とかいっぱい隠しスキルがありそうだ。
種族特性ってのが意味不明。分離合体? どんなスキルだよ。
次。モーゼル。
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モーゼル
モーゼル=ビッグズ
ヤ人族 危険度A 戦闘力SSS
ガードナーに属する国家戦力級冒険者。ヤ人族固有の戦闘力と、太極龍拳の合理を組み合わせその破壊力は山を砕き、海を割る。ヤ人族最後の生き残りの一人。
育ての親からの愛を受け、ガードナーを愛し、忠誠を誓う。口下手で冗談が通じないタイプのため、怒らせると危険。
スキル 身体強化極 種族特性 内燃
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何気にゴンゲンとキャラが被るが、モーゼルの方が強い。危険度Aって、どういう意味よ。歩く爆弾的な意味か?
改めて、怒らせないようにしよう。
さらに、知ってるようで見知らぬスキル。
身体強化「極」ってなんだよ。ヤ人族って本人も言っていたが、調べてみよう。
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身体強化極
通常の身体強化ではたどり着けない極地へ持ち主を誘うオリジナルスキル。その鍛え上げられた身体は、いかなる武具も通さない。歩けば大地を割り、叫べば千里を薙ぐ。
拳に込めた渾身の力は、重さを持つ気力となり、放てば城塞をも砕く。
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煽り文かと思うような文面。
言葉も出ない。
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ヤ人族
神により神兵として生み出され、のちに捨てられた亜神の一族。
魔核を持たないため厳密には人族に属する種族だが、その戦闘力の高さから長きに渡り迫害され、大ルパンザ諸島でひっそり暮らしていた。
先の大戦で魔族側に与するが、そのあまりの強さにより魔族からも裏切られ、種族ごと葬り去られた。
一部、逃げ出した者もいたが、最終的に数名を残し絶滅した。
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重い。重い話だ。
酒場での話は、てっきり誇張した話と思っていたが、真実だったようだ。
強いが故に疎まれ、疎外される。
俺も、いつか強くなり、人々から恨まれるようなことになるのだろうか。
他人事とも思えず、身を引き締める。
増長せず、人に優しく。
自重自重と。
さて、気を取り直して、次は、レイアを調べよう。
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レイア
レイア=カトレーゼ
森巫族 危険度E(S) 戦闘力D(SSS)
力を封じられた森巫族の姫。本来ある魔力があまりに大きすぎるため、災厄を呼び出してしまうことを恐れ、血印の呪紋にて力を封じている。
現在は、ガードナーの街で冒険者として活躍。本来の力とは異なる回復魔術を修め、人の役に立つことを目標に日々努力を重ねている。
スキル (森羅召喚) 種族特性 (召喚術)
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またでた。隠し設定。
カッコとか初めて見る表記。これは封印されてると言うことか?
元の戦闘力SSS?
召喚術? 姫? 勘弁してくれ。
これは、波乱の予感しかしない・・・。
また新しい単語が出てきた。森巫族。なんて読むんだろうか。モリミ族?
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森巫族
砂漠の外れ、レイウッドの森に長く暮らしてきた種族。大樹と共に生き、聖霊・精霊を呼び出す独自の能力を持つ。種族はほぼ全員召喚術のスキルを有し、大小様々な精霊の力を借りて安全な暮らしを営んできた。
およそ10年前、11歳のレイア姫が神獣を召喚したことにより、大樹が倒壊し、村が砂漠に沈んだ。
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・・・。
なんか、また、大変なこと背負いこんでる。若いのに、大変だっただろうな。レイアちゃん。
公園でのあの寂しそうな顔は、こうした歴史が背景にあるのだろうか。
なんだか罪悪感。人の心を覗いたような、ほんのりとした罪悪感がある。
まあ、知らなかったことにしよう。相手が話してくるまで、俺は何も、知らない!
あと、知り合ったのは・・
タツヤ。ヤマモトタツヤ。
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タツヤ=ヤマモト
地球人 危険度E 戦闘力C
6ヶ月前にエ=ルガイアに迷い込んだ異世界人。
ガードナーの街で冒険者Cクラスとして生活している。
人懐っこい性格で、明るく前向き。いつか地球に戻りたいと思っており、そのために力をつけて、世界中を回るのが目的。
スキル 隠形、不意打ち
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スキル隠形ねえ。生き残るには、良いスキルだ。隠形はなんとなく分かるが、不意打ちってのは、なんだ?
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不意打ち
アッパースキル。相手に認識されていない状態からの攻撃に倍率補正がかかるスキル。
レベル1で2倍。その後レベルに応じて倍率が上がる。
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隠形との組み合わせがエグい。
隠れて、不意打ちで、とか・・・。対人レベルなら無敵じゃないか?
モーゼルクラスには通用するとは思えないが・・・。
あと異世界人特性として、スキルが後から追加されるとすると、成長の可能性はかなりデカい。格上を暗殺してスキルレベルも上げやすいだろうし、安全性が高いことは、成長に有利に働く。
敵には回したくないタイプだ。
本人の性格が軽いから、敵対するようなことは無さそうだが・・・。
あと調べていないのは。C級パーティの面々だな。名前忘れた。
はやぶさで調べよう。確かパーティ名は「はやぶさのさきがけ」だったな。
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隼の魁
リーダー、ローグ・リターナコールを中心に結成されたメンバー。ティアナ・ブランドンとエドガー・アランガロンの3人組。結成2年。
主に、魔物退治を専門に活動している。リーダーのローグが斥候役で敵を釣り寄せ、エドガーの狙撃、ティアナの阻害で動きを止めたところに、ティアナの攻撃魔法によるトドメを刺す戦法が得意。ナミートギルド内ランク、PTポイント289点で24位。
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また、新しい言葉だ。PTポイント?
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PTポイント
パーティポイントの略語。パーティで依頼を達成するごとに付与される。依頼のランクが高いほど得られるポイントも高くなる。
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ポイントでのランク付けもあるのか。24位ねえ。高い方だろうと予測できる。まあ、その辺はどうでも良い。それぞれのメンバーを調べる。
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ローグ・リターナコール
通称 ローグ 危険度C 戦闘力B
スカウト担当の冒険者。隼の魁のリーダー。
冷静沈着、大胆不敵だが、女性の頼みは断れないフェミニスト。冒険者になった目的は素敵な奥さん探し。ティアナのことが良いなと思っているが、パーティの雰囲気を壊したくないので、告白せずにいる。
スキル 気配察知
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ティアナ・ブランドン
通称 ティアナ 危険度B 戦闘力B
魔術担当の冒険者。隼の魁のメンバー。
パーティの紅一点。4属性の魔術を使いこなす中級魔導師。男勝りの性格でサバサバしているが、容姿は淡麗。そのため、周りの冒険者によく言い寄られるが、ローグが邪魔に入る。メンバーのことは恋愛対象外。
スキル 魔力鑑定
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エドガー・アランガロン
通称 エドガー 危険度D 戦闘力B
魔銃使い、狙撃担当の冒険者。隼の魁のメンバー。
貴族の三男坊として生まれ、学問が嫌いだったため、冒険者として生きることを決意した男。礼儀知らずが嫌い。庶民の食べ物は口に合わないと常々思っているが、口には出さない程度には世間を知っている。趣味はナンパ。メンバーは恋愛対象外。
スキル オーバードライブ
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バランスの良いメンツだ。戦力が均等。役割も明確。特に何の問題もなさそうだ。
パーティランクこそCだが、戦闘力は全員B。連携によってはAクラスの相手単体なら渡り合えるのではないだろうか。
パーティ内の恋愛模様も少し垣間見れて、興味深いと思うが、ローグに勘違いされないように振る舞う必要がありそうだ。
変にヤキモチを焼かれても困る。
まあ、これで一通り関係するメンツのことは調べた。あとは旅の道中でおいおい情報を追加しよう。
時計を見るとまだ9時前。
まだ昼までには時間があるな。物資でも仕入れに行こうか。あ、あと、モーゼルのせいで、オリハルコンを売るのを忘れていた。それにそもそも、俺、ガーダーで通すんだったな。ってことは、武器、防具を仕入れなければならない。それとも自分で作った方が早い?
まあ、どちらにせよ換金は必要ってわけで、ギルドへ向かった。
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買取カウンターは、クエスト受付カウンターではなく、奥まったところにある。
鉄格子で守られたカウンターで、中を覗くと、いろいろな魔物の素材がゴロゴロ並んでいる。
中年のメガネの髭面おっさんが新聞を読んでいた。この時間に売りつけに来る冒険者は少ないと見える。
「悪いが、買取を頼む」
俺が声をかけると、おっさんが不機嫌そうな顔で、
「あ? 誰だお前、見たことない顔だな」と言う。
俺はギルドカードを見せ、新人だと言った。
「おお、お前が噂の。ギルド長から話は聞いてる」
ギルドカードの名前を見たおっさんが嬉しそうに言う。
噂?一体どんな?
「なんて聞いてる?」
「なんでも珍しいものを持ってるから、売りに来たら色をつけてやれ、って言われてる」
珍しいもんねえ。
「オリハルコンを売りたいんだが」
「ハッ。まじか。なめんなよ若造。オリハルコンを売るだって? オリハルコンなんざ、どこで手に入れるんだよ? ありゃあ、死の大陸の奥地でやっとこれっぽっちのカケラが出るもんだ。なんだ、お前、死の大陸の奥地まで行って掘ってきたってのか? それとも冒険者の遺品でも漁って手に入れたのか? 真鍮と間違えてるんじゃねえのか? どっかのダンジョンで手に入れたか? ハハ、冗談も明後日に言いやがれ」
ギルド長から話を聞いてる割りに、ごちゃごちゃうるせえな。
オリハルコンのカケラを、ドンとカウンターに置く。
「まだまだ、山ほどある。どのくらい買えるか、言え。他にも素材はあるが。売るのはオリハルコンだけにしとく」
いつか素材が必要になるかもしれない。カバンはほぼ無限に入る。家を買うでもなし。金は使える程度あれば良い。
今は、手頃な武器防具が買えればまあ、それで良いだろう。
「こ、これは!」
おっさんが顔の色を変えて、オリハルコンのカケラに飛びついた。鉄格子に顔面がぶち当たるほどの勢いで、手を伸ばしてくる。
金色の輝きが、角度により虹色に反射する。
オリハルコンを奪うように引き寄せ、机の引き出しから黒い石を取り出し、カケラをこする。試金石ならぬ、試オリハルコン石だろうか。
「ホ、本物・・・、しかも、この光沢。ヒヒイロカネとの合金か・・・、なんだこの素材は」
追加で、どんと、より大きなカケラを取り出して、おっさんの目の前に置く。
「あわわ」
おっさんの顔から血の気が引いた。
「ま、待て、今のギルドの現金では、買える量は限られている。あるだけ買い取りたい! 手形で頼む!」
あるだけ買い取るだと!?
まあ、まだまだビル建てられるくらいあるし。
「そうか、じゃあ、これくらいでどうだ?」
俺はそう言って、ギルドの通路に、風呂桶くらいの塊を出した。
ドン! 重さにして2トンくらいだろうか。容積的に10トンくらいあるのか。
出しておきながら、正確な重さは不明。
「げえええ。なんじゃこりゃあ」
買い取りのおっさんの声が響く。
おいおい、注目集めるなよ。
「こ、これで全部か? こ、これだけの。これだけのオリハルコンが・・」
どう答えるべきか。
なんか今、目立ってない?
「さあな、じゃあ預けるが、取り急ぎ、現金が必要だ。いくら貰える? あとは手形で良いぜ」
「に、二千万ゴルド。これが今払える現金だ。これだけの、これほどまでのオリハルコン、値段が読めん。おそらく50億ゴルドはくだらん・・・」
あ、これまた、あかんやつや。やりすぎてもうた。
俺はあくまでも冷静を装い、平然な顔で言った。
声はうわずっていた。
「あ、ああ、問題ないぜえ↑ ご、ご十オークね。手形は、ゴンゲンのジジイからあとでもらうぜえ↑ ハハハハハ」
俺は、2千万ゴルドを掴むように受け取り、ギルドを逃げるように後にした。




