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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第二部  鉄の勇者、大陸をゆく
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第48話 C級冒険者 はやぶさのさきがけ

「この街もしばらく見納めと思うと、寂しいもんだな」

C級パーティ、隼の魁の面々は、旅立ちの前のささやかな祝賀会を営んでいた。


時間的には夜更け。

クロガネが焼き鳥屋で盛り上がっている頃である。


港町ナミートの名物、魚の丸焼き、海鮮蒸し、海藻のサラダ。そして大量の酒がテーブルに並んでいる。


「にしても、あのガーネとか言う新人。大丈夫かな」

リーダーであるローグが疑問を口にする。


彼らがギルド長から聞かされているのは、ガーネは南アルンザの貴族の子息で、B級の戦闘力を持つ元戦士。対魔王軍同盟を大陸間で実現するための特使である。という説明だった。


おそらく嘘だろうが。深く詮索するつもりはない。


元より豪商フライドチンキ隊の護衛は、2ヶ月前から決定していた予定である。

一人メンバーに加えることなど、別に問題ない。


フライドチンキの商隊は、100人規模の部隊と聞いている。護衛は20名。戦闘担当は15名ほど。他は、商売人とメイドなどの召使いである。あと大量の鳥。


種鳥だという。唐揚げ用の親鳥。

唐揚げのチェーン店で成功したフライドチンキらしい財産だ。


神樹武器、龍鞭アッシュナードも運ばれると聞いている。


商隊は大部隊。100人が104人に増えても知れている。

ギルド長の根回しで、ガーネの参加は有無を言わさず決定した。


「あの子、魔力見たけど、化け物よ」

とティアナが言った。


ティアナのスキルは、レア。

魔力鑑定という相手の魔力を見ることができる能力だった。


スキルにせよ、肉体戦闘にせよ、この世界の戦闘は魔力が全ての源と言っても過言ではない。

敵の魔力を測れるということは、継戦能力を測れることと等しい。


魔物の群れに出くわしても、彼我の戦力を比べて、冷静に対応できる。

魔力の異常を発見し、周囲の環境の異変にいち早く気づく。

そうした優位性を、このレアスキルは有していた。


ティアナはそのスキルを使いこなし、パーティの火力面を支えると共に、戦況を判断し、何度もパーティを危機から救ってきた。


そのティアナが言う。化け物と。


「へえ。モーゼルよりもか?」

エドガーが茶化すように言う。


貴族出身のエドガーは、ややプライドが高いところがある。

「30万。正確には30万2600。端数は切ってね」

「さ、ん、十?」


30万!?


その数字の異常さは、冒険者ならわかる。

一般男性の平均魔力は、100。

女性は150。


騎士でも千を超えるものは少ない。魔族なら1万越えはざらにおり、魔将軍は10万を超えるというが、30万という数字は人類の数字ではない。

怪物モーゼルですら、十数万だと言うのに。

「見間違いだろう?」


「震えを隠すのが精一杯だったわ。魔力を見ることができることを、久々に恨んだくらいよ。他の人はあんまり気づかないでしょうね。普通っぽいから」


魔力を測る装置がある。魔力計と言う装置だ。だが、よほど特殊なものを除いて10万以上の魔力を測る機械はない。それは体温計が50度までしか測れないようなもので、10万以上もの魔力を人が有しているはずがないと言う常識からだった。


「・・・・」

黙り込む3人。


しばらくしてローグが言う。

「余計な詮索はしないほうが良さそうだな」


「もしかして神族かも知れないわね」

神族。気まぐれに神が人の姿で、下界に降りてくることがある。


神の力は大き過ぎるため、下界では全力を出せない。その制約下でさえ、溢れる魔力の弊害で、気づかぬうちに天災を引き起こしたりする。

それは、天候の異常であったり、獣が逃げたり、畑が育ちすぎたりと、様々な形で物語に残されている。


「ならば、なおさらだな。ティアナ、魔力のことは、ここだけの秘密だ。誰にも言うなよ」

ティアナは頷く。

「元よりそのつもりよ。長生きしたいしね」


エ=ルガイアにも「口は災いの元」に似たことわざがある。喋りすぎたうさぎは首なしうさぎ。と言う。

「でも気にならないって言うのも、嘘になるのよね。かりそめにもパーティメンバーになるわけでしょ?」

「まあ、ギルド長が腕が立つ、って言うなら間違いは無いんだろうな。スキルを偽装しろと、俺たちの前で言ってたくらいだし。あれは、逆に詮索するな、って言う意味だな」


「まあ、魔力30万が弱いわけは無い。か」


「それよりモーゼルが動くって言うのが驚きだ」

「そうね」


モーゼルは自他共に認める国防の要。それを今動かす意味は? それほど重要な任務ということ。


逆に、今を逃せばモーゼルは動けなくなる、という風にも取れる。まだ余裕があるうちに、何らかの策を講じたのか。

何れにせよ、C級パーティには知らされることのない事情である。


金持ちの引っ越しのお手伝いが、国家レベルの謀略に巻き込まれることになった。そうローグは感じていた。

運が良いのか悪いのか。この時点ではまだ判断がつかない。

「モーゼルが来るとなると、余計に危険度が上がりそうだがな」


「正直、分からん。護衛を全うするだけだ。ヤバくなれば最悪、逃げる」


「いっそ降りる選択は?」

ティアナが目を細めて言う。


「B級昇格は諦めるか?」


この任務を無事終えれば、B級に昇格できる。

長距離大人数護衛への参加が、B級昇格への条件。

昇級のために引き受けた依頼である。


長距離大人数護衛は、嫌われる任務であった。

それは、時間が長いこと、賞金のコスパが悪いこと、計画的な襲撃が発生すること、指揮命令系統が軍隊的で自由が効かない。などの理由から、受け手が居ない事態が生じやすく、これを回避するために昇級試験の一つとして組み込まれている。


それ故に、隼の魁メンバーは、この依頼を早くに決め、日程を調整してきた。


簡単に降りるわけにはいかない。

C級に昇格して2年。割と早い方である。

この固定メンバーになり2年とも言える。

バランスが良く、相性が良い3人は、B級でもやっていけると思っていた。


そろそろ増員も検討していたので、ガーネという奴が使えるようならば、スカウトしてみるのも良いかも知れない。

と、ローグは気の早い想像をしていた。


「ガーネってやつと、うまくやっていけそうか?」

ローグがエドガーに聞く。

エドガーは首を竦ませ、


「相手さん次第だよ。俺は礼儀は尽くすほうだ」

とキザな笑顔を見せた。


「魔力30万なら、戦闘は問題ないんだろうな」

ローグが言う。

「戦闘になるかしら」

ティアナが問う。


街道は彼らが普段赴く森や荒野に比べると比較的安全で、時折、盗賊や大型のモンスターが流れてくるだけ。

冒険者や騎士も多数往来するため、早急に対応されるため、危険は少ない。


一定距離ごとに配置されている街道沿いの詰め所には、国防軍や騎士団も常駐している。


ローグたちが普段取り組む依頼と比べると、かなり安全とは言える。


ただ、今回は隊の規模が大きいことと、神樹武器の輸送、富豪の引越しということで計画的に襲ってくる盗賊が予想されること、また魔王軍の活動が活性化していることなどから、ノーリスクと言い切れる類いの仕事ではなかった。


「モーゼルがいるし、何かあっても問題ないんじゃないの」

エドガーが軽く言う。


「モーゼルは途中までしか同行しない。別動だ」

ローグが言う。


「あ、そうなの?」


「そりゃそうだろ。親書を届けるんだぜ。動きの遅い商隊に合わせんだろう」


「モーゼルが3日でシルベリアに着いた話、あれホントかよ」

かつてモーゼルは、走って大陸を横断したらしい。

それも3日で。

「あ、それ俺も聞いたことあるわ」


ちなみに、予定では水都まで1ヶ月の旅である。20日かけて馬車で北上。

鉱山都市で商品を仕入れ、商業都市トレンで列車・大陸横断鉄道に乗り、そこから10日で水都へ着く。

「別働とはいえ、モーゼルは、レブロンまで特別に同行してくれるらしい。1週間は同行するようだ」


「どうしてレブロンまで?」


「知らねえよ。極秘任務だろうけど、知りたけりゃ本人に聞けよ」

あまり首を突っ込んではいけない事情もあるだろう。


「まあ、いいや。モーゼルがいる間は安全だ。さあ、今夜はすっきり飲んで、休もうぜ、さあ、ナミートに、乾杯だ!」

ローグが話を切り上げて、ジョッキを掲げる。


いよいよ出発。3人とも興奮しつつも、緊張もしていた。


明日からのガーネなる新人との旅はいかなるものか。


来るべき波乱を、まだ誰も知らない。


魔力の話補足。


魔力は水量と水圧のようなもの。クロガネの場合、ダムのように容量は大きいけども、蛇口はまだ小さい。モーゼルは量も大きい上、経験と種族特性により使う勢いがすごく、回復力も高い。そんな感じです。

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