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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第二部  鉄の勇者、大陸をゆく
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第39話 ジジイの長話

冒険者テストの夜、ギルド指定のホテルで眠った。歩くのもやっとなくらい、疲労困憊していた。

体はボコボコ、ジジイの言う通り、その日は、これまでに無いくらいぐっすり眠れた。


翌日、指定された時間にギルドへ向かった。まだ体の節々が痛い。

美人受付嬢が、ギルド長がお待ちですと、案内してくれた。

昨日のようにパイセンに絡まれることはなかった。


部屋に入ると、ジジイと見知らぬ美人が居た。


緑色のふわふわとした髪、緩やかなボディライン、白いレースのついたゆったりした服。優しそうな印象の表情。ほわっとした雰囲気の美人だ。


「来たか、ガーネ」

とジジイが声をかけてくる。


ガーネ? 

ああ、俺のことか。

一瞬、誰かと思った。偽名のことを忘れていた。

「初めまして」

ほわっとした笑顔で、美人が挨拶してくる。

「レイアよ、よろしくね」


で、誰?

「紹介しよう、この娘は、レイア。まあ、ワシの娘、では無いがまあ娘みたいな間柄じゃ。

 さてクロガネ、もといガーネ。貴様のこれまでの経緯をまず詳しく聞かせろ。

 実際、女神の神託は神聖教の専売特許。詳しいところは我々までは届かぬ。

 まずは、お主の話を聞いて、何が起こっているのか情報を共有したい」


「彼女は?」

ギルド長に話すのはさておき、彼女に聞かせても大丈夫か?


話の伝わり方によっては、俺の命が危険に晒される。

船長の紹介ということで、ギルド長には全て話すつもりでいるが・・・


「彼女はワシの身内も同然。貴様の護衛に彼女を考えておる。ワシは同行することができない。貴様の旅に事情を知るものが一人は必要じゃろう」

今、さらっと重要なことを2つ言った。


「ジジイは来れないのか」

まあ、そうだろうな。いつ魔族が攻めてくるか分からない。

攻め込まれたその時、ギルド長がいないということになれば、この街は大変なことになるだろう。


「で、彼女が同行してくれる、と」


俺がつぶやくと、ジジイがうなづく。

「レイアは、この街で冒険者をしている。クラスはB。回復術師だ。

経験豊富。かつ、攻撃主体の貴様に必要なパーティメンバー。

のみならず、ワシの最も信頼しているという理由から、この場に呼んだ」


経験豊富ねえ。見た所、二十歳前後。見た目より老けているのだろうか。


「貴様の処遇は、話を詳しく聞いた上で、ワシが責任を持ってあたる。世界の命運を左右する、というのは大げさじゃが、勇者にはそれ相応の責務がある。まずは、貴様の手配の理由など不可解なことが多い。

貴様の見てきたことを、これまでの経緯を話せ」


まあ、考えていても先に進まない。船長からの紹介ということで、俺はすでにジジイに命運を預けると決めている。

ジジイに裏切られることも少しは考えたが、どう転んでも乗り越えるしかない。今後どうなるか、俺には全くわからない。


「じゃあ、長い話になるが、これまでのことを聞いてくれ」


そうして俺は話し始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


話し終えたのは、昼過ぎになっていた。

途中、細かいところのやり取りはあったが、ここにつくまでの経緯は伝えた。

いくつか関係のなさそうなところ、都合悪そうなところは、端折って説明。


俺の前世の詳細とか、オートマタが最終兵器とか、それぞれの神具と言われるアイテムの詳細とか。


腕を組んで深く考え込むジジイ。

「女神様が、そこまで追い込まれているとは・・・まあ、そう考えるといくつかのスジが見えてくる」


ほう、わかるのかジジイ、早く話せ。

「結論を言う前に、レイアよ、話を聞いてどう思う?」

緑の髪をなびかせて、美人がこちらをじっと見る。


「にわかには信じがたい話ですが、彼の話が真実なら、女神様は無事ではないということ。まさに人類の危機ですね。いくつか気になる点を、もう一度、聞いてもいいですか?」


レイアが目を閉じると、長いまつ毛が目立つ。

「ああ、何でも聞いてくれ」


「本当にヘカトンケイルを倒したのですか?」


うーん、

「倒したのは、俺じゃあ無い。ドクロ★ライダーだ」

ドクロ☆ライダーだったかな? どっちでもいいや。


「ドクロライダー・・・。聞いたことも無いですね。伝説の巨人、ヘカトンケイルをほぼ1撃で倒すなんて、そんな戦力は聞いたことがないです。ヘカトンケイルは、オリハルコンボディで耐久力が桁外れに高いため、破壊できずに封印されたと女神の対話録に記されている神族です。国家戦力が対抗できるかどうかと言う化け物に、単騎で圧殺などと、にわかには信じられません」

驚きを隠さず言う。


さらに、

「そこから古代のオートマタを取り出して、それが兵器とか。そんな危険なものを自由にさせるべきか。そこも気になります」

まあ、そうなるわな。でも、ナイトメアは俺の命を何度も救ってくれた大切な仲間だ。はいそうですねと言うわけにはいかない。


「ナイトメアは、確かに古代の兵器だが、今は俺の制御下にある。安全だ」

俺は言い切った。


初期化暴走とか、知らん。知らんかったことにする。


レイアが続ける。

「それに、魔族、それも魔将と戦い生き残り、しかも2将に勝ったなんて」

危険度Sクラス相手。普通ならば、召喚後10日程度で勝てるような相手ではない。

まあ、常識的な話だろう。


「さらには、あの海の災厄、エレキクラーケンを倒したなんて・・・にわかには信じがたく・・・」

うーん、あんまり疑われても。


カバンの中から、ドーンと、イカゲソとオリハルコンブロックを取り出す。

おっと、思ったよりでかい。


オリハルコンブロックが、ギルド長の豪華な机を押しつぶす。バキバキ。

ニュルンとした巨大なゲソが、レイアに当たる。

「きゃあ」

と可愛い悲鳴。


「貴様、クロガネ、こんなところで取り出すな! またお宝かああ!!」

ジジイが叫ぶ。


ガーネな、ガーネと呼べ、ジジイ。


ぐちゃぐちゃになった部屋。反省する。

「ああ、悪い」

ゲソとオリハルコンブロックをカバンにしまう。


「・・・」

沈黙するレイア。顔の滑りを拭う。

「レイアよ、昨日も言ったが、こんななりだが、こいつの実力はワシが保証する。まあ、確かに的がでかいほうがこいつには向いている。

エレキクラーケンは海の悪魔と言われる難敵。たまたま・・・・とはいえ、勝てたのは大金星よな。

あとで、部屋を片付けろよ、小僧」


たまたまを強調して言う。良い性格してるよ、ジジイ。

「で、ジジイ。さっきあんたが言ったスジ、ってのは?」

俺が聞くと、ジジイが難しそうな顔をする。


「昨日からずっとジジイと呼ぶのな。そろそろぶっ飛ばすぞ。

さておき、問題は神託じゃなあ。小僧、貴様を指名手配したのは女神様じゃ。正確には女神様の神託じゃ。考えられる可能性は、2つ。女神が何らかの呪法で敵のいいなりになっているか、神託自体を書き換えたか」

神託ってやつのイメージが湧かない。


「神託ってのは、そんなに重要なのか?」

当たり前じゃ、とジジイが言う。


「世界の方針は、神託が定めていると言っても過言ではない。魔王が台頭して以来、人類は神託頼りになっておると、ワシは密かに危惧しておったが、まさか、このような事態になるとは・・・今後、ますます混乱する可能性が高い。なんせ、神託は絶対じゃからのう」

これまで、100%頼ってきた情報が、突然信用できなくなるとどうなるか。


特に世界規模の情報がそのようなことになれば。

しかも、その情報は、遡って検証できない。

その結果は、火を見るより明らか。


「その神託ってスキルは、女神が勝手に話すだけか? 会話は?」


「神託は謎の多いスキルじゃ。神聖教の秘儀の一つ。正直なところ、その全容は不明じゃ。

漏れ伝わる話では、会話も一部可能と聞く。一般的に知られているのは、神聖教国の首都、そこの大聖堂の中に、神託の間と呼ばれる部屋がある。教皇は歴代、神託スキルを持つものが受け継ぎ、当代一人がこのスキルを持つ。

スキル保有者が死ねば、次の誰かに受け継がれるスキルを系統スキルと呼ぶ。

神託もこの1つじゃ。

保有者の能力により、神託の長さや、会話の速度などが変わるとされるが、何せ門外不出のゴッドスキル。

これ以上の詳しいことは、教団幹部以外は誰も知らん。

そして女神との対話をまとめたものは女神対話録という本にまとめられ、抜粋は世界中に広められているのじゃ」


うーん、この世界の神様のルールが未だによくわからん。


色々な常識を習ったが、神と人との関係は「なんとなくそんなもん」程度に考えていた。

改めて考えてみれば、神があれこれ干渉してくる世界の住人ってのは、一体どう言う風に世界を見るのか。


神に頼りきりになるのだろうか。

悲劇が全て神のせいだと思うのだろうか。

残酷で、理不尽な世界で、神を恨まないのだろうか。


それとも、より精神が発達していて、生き死にも達観しているのだろうか。

誰のせいにもせず、依存せず、独立独歩で生きているのだろうか。


これまで接してきた少ない異世界人たちは、誰も彼も、しっかりとしていた。

あのスペッゾでも、神を恨むような素振りはなかった。


だが、神託は影響力を持つと言う。


この辺りは、しっかり確認しておく方が良いかもしれない。

神様との接し方というやつを。


「俺には、その神託ってやつの重要性がわからん。そこに、誰かが死ぬべき、と書いてあったら、そいつを殺すのか」


「いや、そう言う事ではない。女神様はまつりごとには口を出さない。女神様は神に関わる事、すなわち悪神邪神に関わることにのみ、人々を助けてくださる。すなわち、それがいにしえの盟約と言うものだ」


「いにしえの盟約?」


また新しい言葉が出てきた。


「ああ、太古。神々の時代。

神々は強く、他の生物はちっぽけな存在じゃった。

神々は戯れ、争い、そして幾度となく世界は荒れ、多くの生き物が滅亡した。

やがて多くの神は姿を消し、平和が訪れる。ヘカトンケイルが封印されたのはこの時代のことじゃ。

多くの善神は、生物の進化を望む。そのためには、死も絶望もあらゆる否定的な感情すら神は許されておる。


そうしたマイナスの感情は、命の多様性を生み、次の時代への糧となり、新たな生物を生む土壌になると常に思っておられる。

神は、あらゆる生物の営みには余計な手も口も出さない。

これが善なる神の不文律なのじゃ。


一方悪神は、己が全て。己が神として振る舞うためだけに、積極的に生物を滅亡させようと企てる。

悪神の営みは、死とかそう言う個々の生き物の問題ではなく、まあ、そうさな、今風に言えば、環境破壊、ってやつだ。それも人が工場を作って自然を壊す、と言うレベルの、生易しいもんじゃない。星全体の空気を無くす、隕石をぶつける、流行病はやりやまい蔓延はびこらせ生き物を根絶やしにする。そう言ったスケールのでかい破壊工作を仕掛けてくる。

それに対抗できるのは、星の生き物では無理じゃ。善なる神は、そのお力を持って、これを防いでくれておる。

その線引きを、古来より不文律として、いにしえの盟約と呼ぶ。

人は神に求めない。神は個人を助けない。

これが古の盟約の内容じゃ」


神がより人に近いがゆえにできた、暗黙の了解というやつか。


「しかし、お前も知るとおり、神々の争いは、眷属で決まる。

このことは、この世界の長い歴史であり、お主が女神様より賜った言葉通りじゃ。

悪神が栄えるとき、女神は人類を眷属とし、使役する。

そうせねば、世界が悪神に乗っ取られ、後には何も残らん。

かつて、悪神に塗りつぶされた世界の末路が、神話に描かれておる。

それがどれほどの真実かはわからんが、悪神の戯れで生み出される命が、ただ蹂躙され、余興のためだけにすり潰される世界。

命の価値は、悪神の手慰み以上には無く、阿鼻叫喚のみが、人々の口から出る、地獄という言葉も生ぬるい、虐殺の世界じゃ。

そこには、救いもなく、慈悲もない。

少なくとも悪神が倒されるまでは延々と続く」


ジジイの話は長い。

古の盟約ねえ。


つまり、個人的に応援してもらっている俺は例外ってことか?


「そうじゃな、貴様は例外、ということになる。

なぜなら、女神が自ら呼び寄せ、自らの力を与えた存在」


てことは、自分で呼んだ勇者が反逆したとなれば、女神の信用も地に落ちるのではないのか。


そう問いかけると、

「そこじゃ。

事実、お主は反逆者扱いにされておる。

もちろん、これを怪訝に思うものも神聖教国内外にはおるじゃろう。あまりのてのひら返しに、整合性が取れん。

しかし、そこで女神への疑心が生まれて得をするのは、悪神側。

つまり、非常に有効な策とも言える。内部分裂が生まれればよし。貴様を抹殺できればさらに良し。勇者の行動を阻害でき、なおかつ不信感も植えつけられる。これ以上の策はなかなか無かろうな」

他には?


「そしてそれと呼応するのが強制勇者召喚じゃ」

その話も一部は聞いた。


「なんでも、どっかの国が勇者を呼んだらしいな。ちらりと船長から聞いた」


「うむ。こちらは、情報がより正確じゃ。5カ国連合の共同事業じゃからのう。

逐次、報告が届いておった。資料もある。

今から10日ほど前、異世界から呼び寄せた勇者が、何者かの手引きにより逃走。

その際、一国スキゾニアの首都を消失させ、国家機能を停止させた。

臨時政府が現在も国をなんとか立て直そうとしているが、周囲の国々は、この期に乗じて、隠密裏に領土を切り取っている。

表向きは、スキゾニアへの支援じゃが、その実は、あからさまな内政干渉。

もうスキゾニアは滅んだも同然じゃ。

その勇者の名前は、カイト。

サカキバラカイト。

おそらく貴様と同郷じゃろう」


榊原ねえ。日本人だろうなあ。


国を吹っ飛ばす能力・・・えげつない。

「そいつの能力は分かっているのか?」

ジジイ・ゴンゲンが首を振る。


「いいや、不明じゃ。スキル名は伝わっておるが意味不明。原子崩壊というらしい。おそらく強力なオリジナルじゃろうな。巨大な爆発を巻き起こすという。遠くの村の者が見たのは、巨大なキノコ型の黒い雲だという」


おいおい。原子崩壊、キノコ雲って・・・核爆弾じゃねえか。


「俺はその能力に心当たりがある。俺の思っている通りのスキルなら、そいつはあまりに危険。誰も勝てないし、近づけない」

「そうか、異世界の知識なら理解かるのか。あとでそのことは説明してもらう。話を進めよう」

俺は頷く。

「詳しい話はさておき、忠告しておく。その能力は、爆発した後に強烈な毒を残す。爆心地には誰も近寄らないように言っておけよ。二次被害が出る」


俺の言葉にゴンゲンが深刻な顔で頷いた。


「わかった、その話は王にも通しておく。

話を戻すが、この勇者じゃが、スキゾニアを離れた後の足取りは不明。じゃが、ここに来て、帝国が声明文を出した。真なる女神の勇者は我々に力を貸した。人類は帝国をして統一統治されるべきである。という、まあ、宣戦布告じゃな」


帝国? ああ、常識として習ったな。

北ルパンザのほぼ全域を支配する巨大帝国で、アルメニアと敵対している専制国家。

それが、この時期に宣戦布告? 


頭おかしいんじゃねえか?


「世界が滅ぶかどうかって時に、人類同士でやりあっている場合か?」


「どうも帝国は悪神と密約を取り交わしているという情報がある」

なるほどね。しかし相手は悪神。人との約束など守られるとは思えない。


「で、その女神の勇者ってのが」

「お主がここに居る以上、十中八九、カイトじゃろうな」

原子力勇者と人類の敵ねえ。ちょっと聞きかじっただけでも厄介な組み合わせだ。


「以上の情報から、まずは早急にオルベリオンへ赴いて、女神の神託を正常化、最悪は、その無効性を伝え、情報網の回復に務めること。これが最優先。

 続いて、勇者カイトとの戦いに備えつつ、魔王軍を撃退するための連合を各国に呼びかける。というのがお主の役割じゃ」


おい待て待て。


「水都まで行くのは良し。だが、その後の各国に呼びかけるってのは、現状、無理に思えるが」


「大丈夫じゃ、ガリウスを通じて女神様の動向を把握できれば、人類の団結は容易たやすい。

最大の問題点は、情報戦を情報戦と気づいている者が少なすぎる、という点に尽きる。まずはこの状況を打破し、態勢を立て直すのじゃ」

ふむふむ。


で、ジジイはどう動く?


「わしは、ひとまず、今日の話を国王に上げる。なあに心配するな。国王とは知らん仲ではない。わしが必要な報告のみあげて、貴様の身を危険に晒すようなことはせん。

ここはオルベリオンからは遠い。その分、影響も低い。すぐさま貴様を捕まえようとするほど、ゴリゴリの神聖教徒もおらん。まずは心を落ち着けて準備に専念するのじゃ」


「・・・分かった」


まあ、なるようにしかならない、というのが正直な心境である。


あ、一つ忘れてた。


「第三の魔王のことだ」

レブロンの街で待つ。そう言っていた。


「第三の魔王のう・・・。

ほとんど誰も見たこともない。子供の魔王。

一方、その部下のピエロは良く知られておる。いろんなところで、厄介ごとを起こしておるからのう。

神出鬼没。

魔王軍の中で、一番、厄介なのは実はこのピエロじゃろうな。王宮に忍び込んで、暗殺でもされたら、防ぎようがない。今の所、結界で防げていると聞くが、本当かどうか」


「ジジイ、ピエロにあったことあるのか?」

首を振る。


「残念ながら、ない。あったら、速攻でしばき倒してるわい」

頼もしいな、ジジイ。もしかしたら殴るくらいはできるかもな。


そんなジジイの意見を聞きたい。


「魔王に会ったほうが良いと思うか?」

「そうさなあ・・・」


一瞬ためらった後、

「ワシなら会うが、小僧、貴様にはやめておけと言う。

 お前の体は一つ。

魔王と会って何かあれば、大事おおごとだ。

もっと力をつけてから、対峙すべき。てのが理由だな。

 だが、情報も欲しい。悩ましいところだ。

 と、言っても、小僧、貴様は会いに行くんだろ」


付き合いは短いが、よくご存知で。


「まあ、ピエロが俺を殺そうと思えば、ボートの上で、俺は真っ二つだった。

 勘ではあるが、危険はないと思う。

何の用かは知らんが、な」


「まあ、そうだろうな。

とはいえ、魔王と会える機会は貴重だ。

奴らは普段は表に出てこない。

 話を聞いて、危険なら全力で逃げる。

これが最善なような気もする。

脱出手段は用意してやる」


「で、レブロンってのは?」


「レブロンは、ここと鉱山都市のちょうど真ん中くらいのところだな。

水の都へは、ここから北上して、東湾岸街道を行け。

レブロンを通り、鉱山都市マインに寄り、商業都市トレンで、鉄道に乗るが良かろう」


ジジイが地図を広げて、見せてくれた。


挿絵(By みてみん)


「じゃあ、早速、旅立つか」

と俺が言うと、ジジイが飛び上がって頭を殴ってくる。


「3日待てと言ったじゃろうが! 準備もある。今日は、レイアに街の案内と、お前の訓練を任せる」

「訓練?」


なんというか、回復担当のBランク。


俺の訓練役が務まるのだろうか。

ジジイ、俺のことSランクと言ってたよな?


「なんじゃ、その顔は。お主、レイアを舐めとるな。貴様には明らかな弱点がある。レイアにみっちり教えてもらうんじゃな」

ふふんと鼻を鳴らし、ジジイが言う。


「じゃあ、早速行きましょうか」

レイアが微笑み、外へ出ようとする。


「ジジイ、あんたは別行動か?」

と、ギルド長ゴンゲンに聞くと、

さも当たり前の顔で

「ああ、さっき言った通り、わしは今から王宮へ行ってお前の報告をしてくる。心配するな。何度も言うが、悪いようにはせん。

レイアにしっかりと鍛えてもらえよ。ガハハ」と言った。


「あそうじゃ、これを渡すのを忘れておった。ほら、貴様のギルドカードじゃ。名前偽装の効果を付与しとるから、本名がバレることはまず無いじゃろう」


ジジイが名刺サイズのカードを渡してきた。金属プレートのようだ。

触ると、薄く輝いて、魔力が少し吸われたような気がした。

「持ち主の魔力に反応して情報が記録される。文字が浮き出たじゃろう。見てみろ」


ガーネ・ツテーオ 18歳 ランクD


と書いてある。それ以外の文字はない。


「専用の機械で読めばこれまでのクエストの履歴も表示できるが、一応、他の適当な冒険者の履歴をコピーしといた。ゴブリン退治を中心にしてあるから、検問や他のギルドで聞かれたら、細かいことは忘れたで通せ、いいな」


「ああ、じゃあな、ジジイ」


俺とレイアは部屋を後にした。


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