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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第二部  鉄の勇者、大陸をゆく
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第37話 テンプレパイセンと暴力ジジイ

冒険者ギルドのドアを勢いよく開く。

西部劇に出てくる、あのバネでバインバインする扉だ。


バーンと開くと、バインバインってする。


そんなことを考えていたら、ドーンと背中にぶつかった。

巨大な壁のような背中だった。

「いってえええなあああ。てめええ」

見上げると、牛のような冒険者がいた。


実際、牛だった。ミノタウロスってやつです。

が、よく見れば人間だった。ただツノが生えている。異世界初獣人だ。

牛人というのか。ミノタウロスとは、何が違うのか。知能か? それとも別の何かだろうか?


「おい、あいつ、パイクロスさんに絡まれたぜ、死んだな」

ささやく声が聞こえた。ざわつくギルド内部。

名前を鑑定すると、パイクロス=モーロンとでた。この人で間違いない。


死んだ、ってのは俺?


ギルドの中は、結構広いホールになっていて、端の方にテーブルと椅子がいくつか置かれている。そこに暇そうな冒険者らしい人々がたむろしている。


「てめえ、無視すんのか、おら?」


パイクロスパイセンが俺の襟首を捻り上げて引っ張る。

久々のこの感覚。前世でもよくこのように絡まれました。


そういう時は、ローキック。

がきん! という鈍い音とともに、足を刈られて首から落ちるパイセン。


「てめえ!」と同時に椅子が床を擦る音。

流石に冒険者、反応が早い。仲間がやられたのを見て、数名が勢いよく立ち上がる。


さて、殺生なしで無力化できるか。冷静に考える。

スキルも封印する。素手でお相手つかまつる。


名前が出るってことは、パイセンは俺より弱い。


立ち上がった奴らも確認する。名前がはっきり出てんだね。はっきりわかんだね、弱いって。

ナイトメアとの特訓のおかげで、対人戦には自信ができた。


冒険者が殴りかかってくる。

ナイトメアの動きに比べれば、こいつらは、遅すぎる。


拳を振り上げて襲いかかる一人目に踏み込み、モーションの途中で軽いジャブで牽制。

2人目はしゃがんで足払い。

3人目はそのままバク転のモーションから、ムーンサルトで顎を狩る。

で、4人目に向き合うと、尻込みして後ずさった。


「おー、痛え。てめえは、殺す」


パイクロスパイセンが首をさすりながら、立ち上がる。


3メートル近い巨体が、俺に覆いかぶさるように臨戦態勢を取る。

「おい、てめえ、覚悟はできてるか」

威圧感を上げてくる。何らかのスキルを使うつもりのようだ。


つうか、無意味な戦いだから、力の差を見せたら、さっさと引き下がって欲しいんだけれども。

ちょっと俺も調子に乗りすぎたか。


しかし、ほこの納めようがないなあ。

叩きのめすか、叩きのめされないと。


そんなことを考えていると、

「ゴラアあ」

と強烈な大声が奥から聞こえた。


「パイクロスぅ! また貴様! 厄介ごとかあああああ」


凄まじい圧力! ああ、これはヤバい。


殺気が、闘気が、紫色の波模様のように見えるほどの濃密さ。


そんな錯覚を覚えるほどの威圧感で、ジジイが近寄ってきた。

シワの目立つ、白い口ひげを生やした、小柄なジジイだった。


「げ、おさ」

ゲオサ? なにそれ。


すると、一瞬でジジイが消えて、パイクロスパイセンにボディブローをぶち込んで、また消えた。


そして俺にボディブローをぶち込んで、こういった。


「貴様も同罪じゃ! この若造が」

さっき食べたステーキをぶちまけながら、俺は薄れ行く意識の中でこう思った。


なんてジジイだ。

と。


きらめく嘔吐。かつてステーキだったもの。


ああ、もったいない。


と。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目が覚めると、白衣を着ためがね美人がいた。

「あら、気がついたのね」

と、満面の笑顔。


「ギルド長がお呼びよ。一緒に行きましょう」

「ここは?」

「医務室よ。さっきのこと、覚えてる?」

ああ、覚えている。いきなり殴られた。


うなずくと、立てるわねと聞かれたので、唸りながら立ち上がった。


まだ腹部が痛む。

なんというパンチ力。


内臓を殴られたような、初めて味わった痛みだった。


めがね美人に促されて部屋を移動する。


背中から鑑定すると、シズカ=ナホケーと出た。

シズカちゃんね。仲良くなる暇はあるのだろうか。

そのなことをぼーっと考えているとシズカちゃんが大きなドアの前で止まる。


重そうな扉をノックして、中に通された。

さっきのジジイがいた。やはりこいつがギルド長。


道着に茶色のチャンチャンコのような羽織。

ハゲ頭、白い口ひげ。背が低い。

足は下駄。

雰囲気は和菓子屋の隠居いんきょ


細いつり目に白髪の長い眉毛が垂れる。


「起きたか。貴様、他所から来た冒険者か? ギルド証を見せてみい、ランクを下げてやるわ」

チビながら、有無を言わさぬ迫力。


何気に鑑定すると、人類、と出た。


名前が出ないということは、あかん、こいつ俺より強い。


俺は思い直す。喧嘩をしにきた訳ではない。いきなり殴られて少し腹立たしいが、ここは一つ大人になろう。


「ちょっと待ってくれ、あんたギルド長か。あんたに会いに来た。これを」

懐から手紙を取り出す。


船長が書いてくれた紹介状だ。


「この便箋は、オーシャンか。久しいな。やつの知り合いか」

ジジイが目を細める。


「ああ、さっきまで一緒にいた」

「ほう、ということは、お前、船で来たのか」

ジジイは俺を舐めるように見る。


めがね美人シズカちゃんが「じゃあ、私はこれで、またね」とウィンクした。

ウィンクがここの挨拶なのか? 

教えてもらった常識にはなかった。


「よこせ」

手紙を奪うように取り上げ、乱暴に封を切る。

粗雑なジジイだなあと思っていると

「貴様、読んでおらんだろうな」

すごむ。


「見ての通りだ。封してあんだろ」

ふん、とジジイが言い、手紙を渡してきた。

「読め」

「読むなと言われたが」

「もう良い。読め」


俺は手紙に目を通した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


よう。ゴンとゲン。

俺だ。何とか戻れたぜ。

そいつを頼む。名前をクロガネという。世界の希望だ。かくまってくれ。


そいつの目的地はオルベリオンだ。大司教ガリウスとの面会。

そこまでの護衛を頼む。腕の良いのを3人ほど。

それと、そいつに冒険者証をくれてやってくれ。名前は変えて欲しい。

ガーネで良いだろう。ありふれた名前だ。


払いは、貸しをチャラにしてやる。それで受けろ。


お前が同行してやれ、無理なら腕コキをつけろ。


頼んだ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ぶっきらぼうな文章に、またほろっとする。

「世界の希望、ねえ。貴様のような若造が、勇者というのか・・・このヒヨッコが。その赤い瞳はコンタクトか」

吐き捨てるようにゴンゲンが言う。


勇者と言い切った。この文章で船長の意図を汲んだらしい。


そして続けて、

「ガリウスってのは、女神派の次の首魁。前の教皇の右腕だった男だ。

その男に会う、世界の希望。

腕コキ。ねえ・・・。

さっきのは油断してたとはいえ、お前、そこそこ強いだろ。

一人でも大丈夫じゃねえのか」

とジジイが言う。


そして

「忙しくなる時に、人員は割けんなあ」とつぶやいた。


うーん、聞いていた話とちょっと違うなあ。


「おい爺さん。船長が、あんたを頼れと言った。だから、俺は手紙の中身も見てないし、その通りにする」

ゴンゲンのジジイが、いぶかしむような目で俺を見る。


「ギルドに着いた途端にトラブルか。牛野郎と早速喧嘩するったあ、血の気が多すぎるんじゃねえか」


そこは、素直に謝ろう。

「それについては謝る。いきなり絡まれたのと、調子に乗った。悪かった」

ふん。とジジイが鼻を鳴らす。


「まあ良いや。勇者ねえ。事情はわかるが、証拠がない。あとは、確証だ。なんか証拠を見せろ」

証拠? 何が証拠になるんだろうか。


うーん、と考えて、収納カバンを大きくして開いた。


ジジイ・ゴンゲンは、マジックアイテムだろうか、単眼鏡を取り出して右目にはめた。


「!!!!」

ゴンゲンが目を開く。

「そ、それは伝説の・・・」

「これがどうかしたか?」

その形状、その輝き、とか耄碌もうろくしたようにつぶやいている。

「そ、それは、無限収納? じ、実物があったとは」


ぶつぶつとぼやき始めた。

ジジイのリアクション芸は無視して、証拠を探す。


まあもらったものといえば、まずは知識の書か。

机の上に、本を置く。


「こ、これはああ。黙示録!!! 伝説のぉ」


泡を吹いて死にそうな顔で本を見ている。俺としてみれば、知っているのか雷電状態だ。


あとは、神の鉄とかはクロちゃんが食べた。ので、クロちゃんを取り出して机に置く。

大人しくしているように。

「ここここれはあああ。ゴッドアイアンスライムじゃとおおおお。ライブメタルの最高位クラスぅううう」


あとは、あ、あれね。初級魔法の本。

「こ、古代、神聖文字・・・・しかも女神のイラスト入りィいいぃい?」


証拠と認めているのか、ただ驚いているだけなのか、全く読めん。

あ、あとポーションあるわ。瓶をおく。

「エリクサーじゃとおおおおおおお。伝説の薬ぃうりーイイイイイイイ」

何だよ、今度はディオかよ。ギャグみたいなリアクションになっている。


あ、コンテナも置く。微妙に光っている。

聖櫃アーク! こ、これはアーク!?」

あ、あと、これか。


「これ、この服、ゴッドキトンね」

「のーーーーーー! 神衣おおおおお!?」

とそのまま土下座した。

あ、やっぱりあれか、手紙があったわ。


手紙を渡すと、ゴンゲンが叫んだ。

「勇者様。世界を救ってくだされーー」

と、さっきまでの態度は何処へやら、いきなり土下座した。

「うおおおおお」


ゴンゲンは泣いていた。そして落ち着くまで10分ほどかかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そそくさと品物をカバンにしまう俺。

恥ずかしそうに咳払いするゴンゲン。


鑑定の機能付きと思われる単眼鏡を取り外し、

「おほん。さっきは取り乱してすまん。証拠は十分じゃ。貴様を勇者と認めるのはやぶさかではない。じゃが、勇者と言っても甘やかすようなことはせんから、覚悟をしておけ!」


と、顔を真っ赤にして言った。


「それにしても、あまりのお宝に我を忘れてしもたわい。伝説のアイテムが次から次へと・・・。

証拠が十分である以上、喜んで手伝おう。

じゃが、情勢は、知っての通り。

第一魔王の影の軍団がいつ襲ってくるか分からん状態。

それに、貴様はすでに手配されておる、これが手配書じゃ」


まあ、そうだね、知ってる。だから頼ってんだよ。


ジジイが渡してきた紙には、偽勇者・テツオクロガネ と大きな文字で書かれていた。


黒目黒髪、身長などの特徴が書いてある。真ん中に顔が貼られるところは、下手くそな落書き。とんがった黒髪、真っ赤な充血した眼球に黒い瞳、大きな口に尖った牙。

誰だよこれ。


「で、貴様のこれからじゃが、まず、貴様に冒険者の証を与えよう」

あっさり冒険者証ゲット。やったぜ。


「冒険者ランクは、F〜Sまでの7段階。

普通はテストをして、Fランクから実力に応じたランクを決めるんじゃが、今回は特別。

先にランクはわしが決めた」

独断ジジイ。


「まあ低すぎても困るし、高すぎても目立つ。Dランクが妥当じゃ。F、Eはまだ駆け出し、Dならば国境を越える比較的安全な任務も多い。とはいえ、適度な実力がないと怪しまれる。ついて来い」

とゴンゲンが嬉しそうに言う。


俺をじっと見て、

「わしが自らお前をテストしてやる。Dランクにふさわしいかどうかな。」


ジジイがニヤリと笑った。


これだから戦闘マニアはやだね。


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