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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第一部  鉄の勇者のサバイバル
33/214

第32話 海で追いかけっこ

甲板を切り裂き、鉄のワイヤーでパルス装置を引き上げる。下からはナイトメアが突き上げるように支える。

5トンの鉄を操作して、3トンの重さのパルスボックスを持ち上げる。

操鉄術は便利だ。エレキクラーケンの戦いで俺は20トンの鉄を操れるようになっている。船上生活だったため、海水中の鉄をちまちま集めたが、1トン程度にしかなっていない。

ライアンが目を丸くしている。


俺たちが乗ってきた小舟は今、鉄のステージになっているが、それを瞬時に錬成し、スクリュー付きのボートへと変える。

高速化を獲得したスクリューは以前とは比べものにならない速度で回転する。


小舟の船体がウィリーするように急発進する。


海神の注意を引くために渾身の勢いで礫を発射する。バリバリと音が聞こえそうな勢いで発射した。

エレキクラーケンを引きちぎった威力の高速礫をこれでもかと海神の巨体にぶつけるが、鈍い光に阻まれて、傷一つつけられない。


エグい硬い。

これ、負けイベ確定!


海神は俺に一切関心を示さず、無視。

ボートで海神の周囲を取り巻きながら、礫で攻撃は続ける。しかしこれでは、なんの効果もなさそうだ。


ワイヤーを海神の顔に打ち込み、顔面に飛び出す。


目が一瞬あうが俺のことは無視。

腹が立つ。目の前で、礫を大量に発射。目に当てたら嫌がるかと思ったが、またしても光に防がれた。


船長達が、甲板からこちらを見ているのがわかる。危ないから、逃げておいてほしい。


色々試行錯誤して、海神の注意を引こうとするが、ヒゲを揺らして、面倒臭そうに俺を追い払おうとする程度。全く相手にしてくれない。


ボートに戻る。なんて強さだ。


意味があるかは不明だが、一応鑑定。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

リヴァイアサン

神族。魚類。 危険度 SSSSS

異世界から呼び寄せられた厄災の1。神は時に試練を与え、昇華アウフヘーベンを強要する。かつて地球の港を滅ぼし尽くした海の暴虐者。知能レベルは低い。

ただ普通に泳いでいるだけで災害となるある意味不幸な存在。

神の創造物ゆえに超越した力を持つ。不死ではないが、不老ではある。

意外とさみしがりや。

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


・・・・。意外と寂しがり屋・・・。ひらがな表記なところは意味があるのだろうか。

不死ではない、ねえ。どうやって倒すのよ、これ。まあ、今は戦う必要は無い。

船が無事ならそれで良い。


「ナイトメア、パルスを起動しろ!」

バリバリバリと音をたて、ナイトメアが発電する。

腕と胸の一部が筋状に開き、青く発光する。見る間に電気が体表を流れ、パチパチと弾ける。

エレキクラーケン戦で獲得した新機能。エレクトリカルボディ。帯電して攻撃する技である。


長い髪が静電気で逆立つ。電気を指先に集めてコードを繋ぐ。

パルス装置がブーンと唸りを上げて起動する。

「マスター、電力は十分です」

いくぞ、パルス発射。

装置の横についているボタンを押す。

ギュオ、ギューオ、ギュオーーーンと唸る。


ギュオーーーンと海神が吠えた。そして、ぎょろりとこちらを睨む。キタキタキタ。

さらに船をスピードアップ!


あまりの巨体に遠近感がおかしくなる。荒波を立てながら巨大なウミヘビが押し寄せてくる。やはりこの装置がお目当のようだ。


仲間だと思っているのだろうか。仮にそうだとしたら、ちょっと可哀想な気もするが・・・。

まあ、俺が同情できるような小さな存在でもなかろうに。


そんな調子で、逃げまくる。全力で逃げているのですぐに魔力がつきそうになるが、いつものフナムシ補給を怠らない。フナムシもいつの間にか少なくなってきた。


とにかく、3時間くらい無心で逃げまくった。


夕闇はとうに過ぎ、月明かりの照らす海面。

離れすぎず、近づきすぎず。途中何度も集中力が途切れ、くじけそうになったが、目を瞬きながらなんとか逃げまくった。


3時間ほどで、夜の闇の中、月明かりに照らされる小さな島を見つけた。サンゴ礁の、本当に小さな島だった。

「ナイトメア、あそこで装置を置くぞ」

砂浜にボートを乗り上げ、装置を放置。


ボートを変形させ、すぐさま、島を通り越して、ボートに戻して退散。

装置は、電力の余韻で、徐々に音を小さくしながらも、稼働を続ける。


リヴァイアサンの巨体が島に乗り上げ、津波が島を飲み込む。

数百メートルもあろうという巨体が島を巻き取り、海神は吠えた。

ギュオーーーーン。


遠ざかる海神を見ながらホッと息をつく。こちらを追いかけてくる様子はない。

必死だったために、サジタリウス号の方向を見失ってしまった。


帰ることを考えていなかった・・・・


このまま、またひとりぼっちの航海か。

いや、ナイトメアとピノコがいるから、大丈夫だもん。

全然さみしくないもん。

でも、みんなでワイワイ、楽しかったなあ。あの船・・・。


落ち込んでいると、発電をやめたナイトメアが言った。

「マスター、心配無用です。方角はあちらです」


「え?」

「太陽の角度と星の位置、時間経過を観察。船の軌道も全て記録しています。サジタリウス号の動力音も記憶しています。5キロまで近づけば、捜索可能」


なんと心強い。

「それにしても海神がまた追いかけてくる、なんてこと無いよな・・・」

「それはわかりません」


ナイトメアの率直なご意見。

「おそらく200キロ近く距離を取ったはずです。マスター、特定のクジラは800キロの距離で会話するという説があります。200キロといえど、相手は生態不明な海神。不可能では無いと判断します」

「・・・」


まあ、いいや、とにかく帰ろう。海神は知能がそんなに良く無いっていうし、あそこでしばらく戯れてることを祈ろう。


―――――――――――――――――――――――――――――


およそ5時間かけて海を戻ってきた。ナイトメアの指示に従い、ほぼまっすぐ進んできた。海神に追われていた行き道ほどの速度は出さなかったが、まあ順調に進んできた。

おそらく時間的には真夜中。

遠くに巨大な船の船影を見つけた時は、心底ホッとした。真っ暗の海に浮かぶ船。船窓から漏れる灯がやけに目立っている。

沈んでいないことと、戻れたことに安堵した。

近づいていくと、甲板にみんな集まって、手に松明やら照明を持ち、こちらに大げさな手振りで手を振ってくれていたのが夜目にも分かった。顔は見えなかったが、みんな大声で俺の名を呼んでくれていた。

救うことができて本当に良かった。少し涙が出たが、恥ずかしいから目頭を押さえてごまかした。


甲板から縄ばしごが投げ下ろされて、それを登ると、甲板に着くや否や、笑顔の船長に肩をバシバシ叩かれた。他の船員も取り囲んできて「良かった」「クロガネ」「助かった」とか、俺に触ろうと手を伸ばしてくる。

「お前ら! 今日は祝宴だ! 俺たちゃ生還者だ! 海運王以来、海神に遭って生きてるなんざ、海の男の最高の勲章よ! 残りの酒全部飲んで、今日は祝うぞ!!」

ガハハハと笑った。


皆、チリジリになって宴の準備に向かう。船長がついて来いというから、操舵室に向かう。

操舵室の一番後ろの扉に船長が入っていく。そこは船長室だった。

大きな机と、大きなベッド。あとはタンスが一つ。

船長は机に座ると、俺に椅子をあてがった。

「まあ、座れ」

船長は深く頭を下げた。

「クロガネ、この通りだ。ありがとうな。お前のおかげでなんとか皆生き延びた」

あのふざけた船長が真面目に言った。

「お前は命の恩人だ」

力強い右腕を差し出してくる。おお、握手ねと思って手を出すと、また上から拳で叩き落とされた。

「いてえ」

「ガハハ。海の男はこうやって挨拶するんだよ。叩き落とされねえように耐えるのが海の男ってもんだ。ほらやってみろ」

船長が右腕を出してくるから、上から叩きつけた。船長は食いしばった顔で、俺を見ながら、腕に力を込めて拳を受け止めた。俺の拳をはじき返してニヤリとした。

「さて、クロガネよ、船長として一応聞く、海神はどうなった?」

船長の質問に、これであったことを説明した。3時間ほど逃げて、島に装置を置いて、5時間かけて帰ってきたことを。

俺が最後に問いかける。

「大丈夫と思うか?」

「ああ、十分だ。海神は気まぐれで、忘れやすいからな」

船長は力強くうなずいた。

船長も祈るような気持ちで言っているのだろう。本当は確信など無いに違いない。だが、リーダーたるもの不安な顔を出さないのがリーダーたる使命だ。

「まあ、次に来たらさっさと逃げるさ」ガハハと笑う。

「なぜ、接近を許した?」

俺が聞くと船長はバツが悪そうに答える。

「まあ、見張り役が気を抜いてたってのが理由だな」

あんなデカいの見逃すか?

まあ、そんなことをする奴は

「スペッゾか」

と俺がいうと、船長は首を振って、

「まあ、見張りってのはあいつのことだがな。あいつだけの責任ってわけじゃねえ。まあ、俺が言うと庇うことになるからな」

まあ、これは災難だ。

「海神に遭遇するってことが、そもそも誰が悪いわけじゃあねえ。それに、仮に早めに気づいたところで、なす術はあんまり無い」

船長はそう言ってガハハと笑い、

「まあ、無事切り抜けられたんだ。済んだことより、これからだな」

「くどいようだが、また襲われることは無い、でいいんだな」

「まあ、世の中に絶対は無い。次に来たら、またお前に頼むつもりだ、ガハハ」

船長は悪びれることなく言った。

「とはいえ、パルスが海神の鳴き声と同じたあ、こりゃ、大ニュースだわな」

「? そうなのか」

「海神との事故ってのは5年に1度くらいだ。そんなに頻繁に起こってない。だが、本当はもっと沈められてるとしたらどうよ。パルス打ったら寄ってくるってのは、そりゃあ海運事業者にとっては命に関わる貴重な情報だ。

 俺だって海神もパルスで追い払えると思ってたからな。逆効果となると、いろんな所に支障が出る。例えば、保険の金額とか、海神用のパルスを急いで開発する必要があるとか、そもそも海神と会うのだって一苦労なのに、まあ、いま考える事じゃあねえが、そりゃ、地味に影響力はでけえ」

「で、対策は?」

「索敵範囲を広げて、海神の接近をより早く検知して逃げるしかねえな」

「逃げ切れるのか? この巨船で?」

「まあ、いろんな装備を試すしかねえわな」

ガハハ。

「まあ、なんとかならあな。この話はこのくらいにしとこうぜ、なんにせよ頼りにしてるぜ。あと2週間も逃げ切れば、陸に着く。あと3日もすれば、アルメニア大陸の海域だ。この辺りから、漁船やら見張りやら船も増えるはずだ。

まあ気をぬかずに最後まで頼むわ、勇者・・さんよ」

目を逸らす。

「なあ」

ぐいっと近寄ってくる船長。


勇者ってもうバレてるとは思うけど、どう接すれば良いのやら。


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