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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第一部  鉄の勇者のサバイバル
29/214

第28話 船上の日々

翌日。釣り係を務めながら、ごくごく自然に情報収集に努めた。

特に名前を見て鑑定することを繰り返した。自身が、一般的にどのくらい強いのかを知っておく必要があると思ったからだ。

船長のスペックはこんな感じだった。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

マクガイザー=ジス=オーシャン

通称 船長 危険度G 戦闘力A

頼れる海の男。それがマクガイザー。海を愛し、海に愛された男。情に厚く、仲間を大切にする生まれながらの親分肌。顔は怖いが、面倒見が良い。

長年、荒れた危険な海を生き抜いてきただけあって、人類ではかなりの強さに入る。

スキル 海渡り 海流操作

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


ふむ。あのデブ魔族より弱いくらいなのか。前から気になっていたが、危険度と戦闘力はどう違うのだろうか。魔物は危険度しか出ないが。


良い機会だからと調べてみた。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

危険度

最低をG、その後FEDCBAまで順に強さが上がり、S、そして最高をZとして、各5段階で分類される。D以下は細かく分類されることは稀。値は、世界的な平均値をアカシックレコードが判断しているとされ、Cが中央値である。危険度は敵性生物に用いられ、人間の場合、敵対性、性格、感情を考慮して危険度を表記する。また力だけでなく、毒性や、特殊な魔法効果なども加味されるので、見た目と危険度は比例しない場合が多い。

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

戦闘力

最低をG、その後FEDCBAまで順に強さが上がり、S、そして最高をZとして、各5段階で分類される。値は、世界的な平均値をアカシックレコードが判断しているとされ、Cが中央値である。対人戦の場合、危険度ではなく戦闘力が強さを表す。危険度が低くても相対的な戦闘力が高ければ、格上に当たる。モンスターの危険度と戦闘値は、近い値を取る。

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


うむ、よくわからんが、友好的なら危険度は下がる、という理解ね。

戦闘力は絶対値、危険度は個人間の関係に依存する相対値。そんな理解で良いのだろうか。


対人戦の場合は、戦闘力が強さということか。それならば、キャプテンはかなり強い部類に入ると言えるだろう。


これまで出会えた船員は15人くらいで、他の船員もこっそり鑑定してみたら、キャプテンが戦闘力は一番強かった。船長の次は、マークという船員と、ポポノイという獣人が同じくらいでBBB。他はCがほとんどで、スペッゾはEだった。


スペッゾは見習い船員で、どうもチーズ牛丼が好きそうな顔をしていた。ほのぼのとした顔で、ぼーっとしている。

いつも誰かに怒鳴られているようで、鈍臭い。


午前中、適当に釣りを終えたので、午後からどうしようと考えたが、久々の広い空間なので、鍛えてみてはどうかと思った。

甲板はグランドほどあり、走り回れるくらいには広い。サッカーは無理だが、フットサルならできる。


よくよく考えれば、スキルを上げる事ばかり考えてきたが、戦闘の方はセンス任せで、デタラメ、相手もいなかったが、今となれば、ナイトメアがいる。船で体が鈍ってしまうのも困るので、戦闘訓練をしよう。

「おい、ナイトメア」

「はい、マスター」

ちなみにナイトメアは常に横に控えて、微動だにせず立っている。


「訓練をしたい。相手をしてくれ」

「了解しました。トレーニングモードに移行します。マスターの戦力を測定した結果。レベル3からのスタートになります。レベルは最大で「極」モードまで用意されていますので、お時間のあるときに挑戦してください。なお、レベル3をクリアすると次のレベル4が解放されます。では」

と、いうと、硬い甲板を踏みぬいていきなり襲いかかってきた。


「ちょ、ま」


すかさず避けるも、危険な蹴りが頬をかすめる。


「マスターは自由に武器をお使いください」

攻撃の手を緩めず、素手のナイトメアが言う。


なめやがって。


あくまで訓練。操鉄術は使わない。体術と剣術を鍛えるのだ。

クロちゃん刀を鞄から取り出し、ナイトメアの攻撃をいなす。


しかしながら、ナイトメアの変則的な体術に翻弄される。しゃがんだと思ったら、膝が逆方向に曲がって蹴り上げ、そのままバク転のような水車蹴り、そしてかがんだ姿勢からの横薙ぎ水面蹴り、空中に飛び出しての手刀が、クロちゃん刀をつまんで体勢を変える。


ふっふっと呼吸を整えながら、ナイトメアの体軸を狙うが、回転されて避けられる。

こいつ、めちゃくちゃ強い。


的が小さいから、モンスターよりも当てづらいのに加えて、レベル3というのにめちゃくちゃ動きが早い。

ナイトメアの槍のような蹴りがみぞおちに突き刺さる。

よだれを振りまいて吹き飛んだ。


あまりの蹴りの威力に甲板が割れる。吹き飛んだ俺の体が船のへりにめり込んだ。


「こら!!! てめえら、どこで喧嘩してんだ! うお、甲板がめちゃくちゃじゃねえか!!!」

キャプテンが慌てて駆け寄ってきた。


いけね、やりすぎた。


呻きながら立ち上がり、謝る。

「手加減してできないなら、海でやれ!」


キャプテンはぶつくさ言いながら、戻っていく。戻りぎわに、スペッゾに「直しとけ」と命じた。

「クロガネさん、頼みますよー。また仕事増えたじゃないですかー」

スペッゾが泣きそうな顔でぼやいた。


流石に悪いと思ったので、お手伝い。

めくれたところを剥がして、予備の木材で補修。釘と鉄板で補強して応急措置を施した。修理にもスキルを使わなかったので、意外と時間がかかった。


まだ全然訓練していない。

海でやれってか。海ね、海。


多少スキルを見せることになるが、舞台を作りましょうかね。

「来い、ナイトメア」


俺は、曳航されている自分の鉄のボートへ乗り込んだ。

これを薄く広げて硬化で強度を増して、周りに鉄の風船を付けて海に浮かせれば、四方10メートルほどの舞台にできる。


船にロープで曳かれているので、多少は揺れるが、十分戦える。

俺とナイトメアなら、海に落ちても大丈夫だろう。


さあ、続きを始めるか。


ナイトメアの長い黒髪が、ブワッと爆発したようになって、視界から消える。

右か。肘で手刀を受けるが、吹き飛ばされる。


「マスター、もっと正中を意識してください。およそ3度左に傾く傾向があります」

刀を正眼に構え直して、ナイトメアに正中を合わせる。切っ先を軽く振りながら、タイミングを合わす。

ナイトメアの右足の蹴り、フェイントからの左足の蹴り。


それぞれを対処した後、上段からのかかと落とし。

「いなした後の戻しが遅いですよ、マスター」


かかと落としと同時に、下からの金的への蹴り上げ。まるでワニが口を閉じるような動きに対処できない。

仰け反って後ろへ倒れ込む。


かかと落としは避けたが、蹴り上げが顎を掠める。

「グフっ」脳が痺れた。


その後、攻防を続けていると、一定の規則に気づいてきた。攻撃が3連までで必ず止まる。つまり。

「おりゃ!」

3連の後に隙がある、ということだ!!


俺の渾身の横薙ぎをわき腹に受けて吹き飛ぶナイトメア。

クロちゃん刀で渾身の斬撃にも関わらず、一切傷を与えられていない。どういう構造してるんだ、こいつは。


「お見事ですマスター。ではレベル4に昇格します」

レベル4になると、3連の攻撃ではなくなった。違う動きに変わる。そういう設定のようだ。


その後、1時間くらい訓練を続けた。

動きに慣れたと思えば、レベルが上がり、なんとか初日でレベル6まで対応できた。

レベル6の動きは凄まじく、至近距離では目で追えない。

ついていくのがやっとで、俺は次第に疲労を重ねていた。


ドンという音がして、音の方を向くと

「俺も混ぜろや、コラ」と言いながら、男が立っていた。


マーク、だったか。


マークは、筋骨隆々のセーラー服姿で、どことなくほうれん草が好きなあいつに似ている。


首を鳴らしながら「最近体が鈍ってたんだよ」


腕をぐるぐる回しながら、アッピールしてくる戦闘力BBBのマークさん。アピール通り越して、アッピールね。

俺はヘトヘトだったから、返事ができないでいると、ナイトメアが返事をした。


「現在のマスターの相手としてふさわしいと判断。許可します」

ええええええ。

勝手に決めやがった。


「へへ、楽しもうぜ」

ぐ、こうなりゃ自棄やけだ。


相手は素手、クロちゃん刀は収納に仕舞う。スキルなしで勝てるのか。


マークは振りかぶってパンチを打ってくる。テレフォンパンチ、と思ったら、振りかぶった方とは逆から殴られた。

なんだこれは。


殴りかかるモーションにガードを固める。が、殴られたと思っても衝撃がない。その後、遅れて頬を思いっきり殴られた。ガードを通り越して。

「俺は、喧嘩が好きでね。もちろん、俺が一方的にボコる喧嘩に限るが」

笑いながらマークがパンチを放ってくる。


「お遊びだからなあ。手加減はしてやんよ」

手が動いていないのに、今度は鼻を正面から殴られた。


思い出せ、こいつの能力は。なんだ。


何人か調べた時に、こいつはいたはず。

さっき奇跡の書で見たはずだ。


そう、確か、ミラージュ。スキルはミラージュとか書いていた。


ミラージュ。蜃気楼。幻影か? 殴っていないように見えて、殴っている? 視覚が騙されているのか?

「はは、俺のスキルが気になるか? ほらよ!」


またマークが振りかぶるが、そのまま殴られた。タイミングが合わない。

しかし、一つ気づいた。


影だ。


腕は動いていないのに影が伸びていた。一瞬だったが、見間違いではない。

と、なると。

奴の上半身は見ない。足もとを見る。


影が視界に入る位置をキープする。奴の右ストレートが伸びてくる。

大体の感覚で避ける。


「!! なんだよ、もうバレたか」

へへと笑うマーク。

「でも、ここからだぜ」


マークの攻撃に合わせて、ガードを入れていく。タイミングが合い出した。

ここだ!

「ぶへええ」


絶妙のタイミングでカウンターが入った。奴のケツアゴに拳を突き刺す。


吹き飛ぶマーク。


しかし、なかなかタフな奴だ。笑いながら立ち上がった。少しよろけている。

「よっやるなあ、坊主。気に入ったぜ、はははは。スキルなしでやられるとはな、大したもんだぜ、今日はここまでにしてやるよ」


豪快に笑って、俺の肩を組んできた。


「でも舐めるなよ、今日のは挨拶程度だからな。俺のスキルも本気はこんなもんじゃねえぞ、また勝負すっぞ、ははは」


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