第22話 海の旅(晴天航路)
あぢーーー。
日差しは絶好調。気温は最高潮。
雲一つすらない空。海に飛び込んで涼もうとしても、日焼けに塩が染みて痛い。
薄い鉄で作った日よけ。だが、効果なし。暑い。暑すぎる。鎧など着てられない。
海。海。見渡す限り、海。
「おら、休んでんじゃねえぞ。魚くん」
「ヒッ、は、はい」
鎖に繋がれたツナミ君は、鋭意、動力源の最中。
水魔法とその泳ぎで、船を牽引してくれています。魔力節約できてありがたい。
即席で作った鉄の首輪と鎖でくくっている。裏切って逃げ出さないように、夜、俺が寝ているときは、ナイトメアが目を光らせてツナミくんを見張っている。
ツナミくんは魚顔に不満を滲ませながらも、諦めてお手伝いしてくれた。
ツナミくんを捕まえてその後5日。
船旅7日目。蒼天航路は晴天航路。
一番の敵は退屈です。
「にしても、何の変化もない」
もう、疲れた。
海、デカすぎる。海。
暇つぶしに、生前、テレビで見たサバイバル知識は役に立っている。
海水をくみ上げ、密閉して熱すると、水と塩に分離する。鉄でツボのような容器を作り、屋根の部分から外に水を流す通路を作って、日光に当てるだけ。
1日もすれば、水が溜まっている。塩も取れて嬉しい限り。
あと、海上では何気に食事が困る。
魚は釣れるようになったが、火が無い。
困っていると、ナイトメアが、着火できるという。
目からビームが出ました。初期装備だそうです。
ドクロライダーといい、目からビーム流行ってんのかね。
さておき。
途中、海の魔物がたまに出現。だが、返り討ち。そして食料に。
海にも色々な魔物がいる。
長い触手をこっそり伸ばして麻痺させようと狙ってくるクラゲ。
夜の闇に光を浮かべる巨大なチョウチンアンコウ。
海の上を走るうろこのあるパンダ。
海面から直角に水面を突き刺す海トカゲ。
集団で襲いかかるイワシ(肉食)。
ヒレが鋼鉄のように硬い船よりもでかいウミガメ。
etc.
とはいえ、ほとんどの時間は、穏やかな海。暇で暇で仕方がないので、魔将軍ツナミくんと遊ぶ。
ツナミ君に尋問した。
最初はツンだったが、ちょっと強めにお願いしたら、いろいろ教えてくれた。
まず。魔王軍は俺の居場所は把握していないとのこと。ツナミくんは手柄を独り占めしようと欲をかき、誰にも告げずに抜け出してきたらしい。
ツナミ君のスタンドプレイのおかげで助かったとも言える。
魚の痕跡を追い、俺を一人で倒し、他の魔将軍の鼻を明かそうと考えたという。
俺を見つけた方法については、ツナミ君は、イルカとお話しできるんだって。イルカに大鎧鮫探させて、片っ端から沈めていったらしい。うん、野蛮だね。
ツナミ君は色々、情報をくれた。魔王軍はそもそも烏合の衆らしく、力関係と損得で成り立っている。仁義や御恩と奉公のようなことは一切ないらしい。新しい魔王誕生すると、基本魔族は言うことを聞く。そこには力関係による服従のみがあり、尊敬とか、そんなものはないらしい。
なので、敬語とか、尊敬とかはなく、魔王が没落したらまたてんでバラバラに暮らすと言う。
これまで俺を追ってきたのは、第二の魔王の部下たち。
第一と第三の魔王とは連携をせず、それぞれ支配地域から出張るようなことはない。基本的に魔王がお互いを助け合うようなことは無いらしい。
第二魔王の部下は、12人の将軍が統括していて、それぞれ方面と役割がある。
ボーゲンは将軍だが、バーナと言った太っちょの方は将軍ではないらしい。
現在、ロックスが死んで11人になったが、すぐに補填されるとのこと。
人材は足りているようだ。
魔族の中で上位12人が将軍を名乗るが、番号は入ったもの順。
ロックスが欠番になったら、その後から繰り上がりで、ボーゲンは自動的に十番に昇格しているらしい。
ただ席次1番は絶対的に強いらしく、不動らしい。瞬殺のマグナリアと言う名前だそうだ。ツナミ君も戦闘自体は見たことがないが、相手は全て瞬殺らしい。
恐ろしいね。できたら戦いたくない。
魔王について。
第二の魔王は城に籠って、指示を飛ばすのと、遠距離での呪術が得意らしく、女神を常に呪っていると言う。
汚濁の魔王、汚辱の魔王、不潔の魔王と言う複数の異名を持つ第二魔王。名前はプーゲ=ンビリア。とにかく汚いらしい。
性格も、見た目も、そして能力も。
能力は腐敗。
全てを腐らせることができるため、誰も近寄りたがらないほど恐れられている。敬われてはいないがその命令は絶対のようで、太っちょのような荒くれ者も、しぶしぶ言うことは聞く。
腐らせる能力、ね。どうやって戦う? わからん。イメージが湧かん。
鉄も腐らせるのかね?
魔王の目的は、邪神の復活。魔族は人類とは価値観が違うらしく、破壊と殺戮が大好き。
心の底から大好きすぎて、敵がいないと死ぬほどらしい。
うさぎは寂しいと死ぬというが、魔族は敵がいないと死ぬ。なので、人類がいないと魔族同士で殺し合いを始めるが、そこまでは考えは及ばす、ひとまず人類を滅亡させることに躍起になっている。
邪神さえ復活すれば、人間は殺したい放題。夢のような世界が実現すると、魔族は誰もが信じているらしい。本能らしい。
遠くを見つめながら、水平線をぼんやり見つめていると、背後に気配を感じた。
振り返ると、水面にピエロが浮かんでいる。左右二つに別れた帽子。白塗りの顔、紫色のダボダボのシルクのような光沢のある服。少年のような背格好。
そして、死神の鎌。
「やあ、やっと見つけたよ、勇者君」
ピエロはうやうやしくお辞儀した。上目遣いでニヤついていた。
「うさぎは寂しいと死ぬ」というのは嘘だと、最近知った。




