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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第一部  鉄の勇者のサバイバル
22/214

第21話 小粋なカジキとツナミ魚人

現在の位置については、知識の書で把握できた。現在地、というと、地図に×印が表示される。これと現在時刻の組み合わせは、まさにスマホ並み。

電波も電源も不要と考えれば、こちらの方が優れていると言える。


魔王軍の追っ手については、この魚の中にいる限りは安全だろう。まさか、この魚を追いかけて魔王軍がやってくるなんてことは、無いはず。


なんて考えていたら、グラグラと胃の中が揺れた。

本を睨んでいると、魚が急浮上を始めたようだ。

深海からどんどん海面へと向かっている!


これは脱出のチャンス!


と思っていると、魚が大暴れし始めて、俺たちが乗っているボートも上へ下への揺れを味わった。


しばらくすると揺れが収まったが、今度はゆっくりと沈み始めた。

海面10メーターあたりまで近づいていたが、次第に沈み始めている。


胃の様子もおかしい。これまで激しかった顫動がなくなり、だらりと弛緩しているような感じがする。もしかして何かに襲われて、死んだんじゃねえ?

逃げるなら、今しかないと思い、鉄の風船を解除。船から周囲を見渡す。

余分な鉄は収納カバンへ。


船を胃壁に近づけ、鉄をドリルにして胃に穴を開ける。そしてペンチを開くようにして傷に通り道を作った。


吹き出す血にまみれながら、肉をかき分ける。最後の硬い皮を突き破ると、海水が流れ込んできた。


勢いに負けないよう、鉄の棘を魚の肉に食い込ませ、何とか這うようにして海中へ出た。幻想的なブルー。日差しが海面から青色の世界を照らしてくる。外は晴れているようだ。

血まみれの大鎧鮫が、海中に沈んでいく。魚のまわりは真っ赤で、影しか見えない。

鉄の鎖でナイトメアとピノコをつなぎ、海面へ向かう。


外は真昼の大海原、太陽が照りつけている。

海面にボートを作り、何とか乗り込んだ。


ふう。と一息ついたら、今度は、ボートのすぐ横に水柱が立った。


5メートルほど吹き上がる水柱。続けて、2つ3つと水柱が立つ。

水しぶきが飛んでくる。何だこれは、攻撃か?


空中に気配を感じて目を向ける。


何とカジキマグロが空を飛んでいた。巨大なトビウオ? にツノが生えたような生き物。そしてその上に、人影。


やばい、と思った次の瞬間、鉄の船が二分された。


ジェット水流でのウォーターカッターだった。これも魔法か。


カジキマグロは水面へ着水して白波をあげる。すかさず鑑定。同時に船を接着。水を排出。


「よく気づいたな」


マグロの上の人影、マグロライダーが言った。

魔族だった。半魚人タイプの魔族。追っ手だろう。大鎧鮫の胃袋に居れば安全と思っていたが、海軍か水軍もあるようだ。舐めてたぜ。


追っ手は1人のようだ。


「魔王軍か」


俺の問いかけに半魚人は嬉しそうに答えた。


「やっと見つけたぜ、勇者。手柄は俺がいただく。さっさと海のモズクになりな!」

それをいうなら藻屑な。モクズ。


今のうちにささっと知識の書を読む。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

アンアク・ツナナミ 危険度 S(水上) SS(水中) B(陸上)

魔族 通称 深海のツナミ 食用ギリギリアウト(魂的に)

水魔法を操る半魚人。12将の7番目。海よ俺の海よ、が口癖。よく言葉を間違えて覚えている。ペットのカジキングを乗りこなすマリンスポーツ派。

海洋軍統括。海での戦いに絶対の自信あり。好物は生ウニ。

スキル 水魔法Lv7

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

カジキング

魚類 通称 トビカジキ 食用可

トビウオのように発達した前ビレで空を飛べるカジキマグロ。成長したら8メートルほどの巨体になる。集団で行動し、空からその巨体の体重と速度で獲物めがけて串刺しにする。また魚なのに魔法が使えるため、襲われた時などは水中でウォーターボールを発したり、水柱で煙幕を貼ったりする。

スキル 水魔法Lv2

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


なるほど。水上戦闘特化型。いや、水中も強そうだ。こいつが大鎧鮫を殺したんだろうな。後でどうやって俺を見つけたか、聞かないと。


ツナミ野郎は、カジキに乗って俺たちのボートの周りを旋回。時折ジェット水流で攻撃してくる。

こちらは、近づけないので、何とか鉄の盾を斜めに当てて、水流の勢いを殺してかわす。


「はっはあ! 海の上じゃあ、手も足も出ねえか! なぶり殺しにしてやる!」


いつの間にやら、俺のことは生け捕りにしなくて良いようだ。もう完全に敵認定されてますわ。


うーむ。どうしたものか。と思ったら、閃きました。


さっきまで考えていた食料問題解決のためには、俺は成長しなくてはならない。

つまりこういうことだ!


グアアあああ。


ほら、釣れた。


針に絡まったカジキングと、勢いのまま海へ投げ出されるツナミマン。

そう、俺は、大量の針と鉄糸を、海中にばら撒いていた。硬化で細く強くできることで、目に見えないレベルで糸を細くできるのだ。


さらに鉄操作で、針の先を四方八方、タコの手足のように遠くへ伸ばせば、ご覧の通り。勝手に絡まって自爆してくれた。


暴れるカジキングの喉へ、糸の先を変形させた刃物を刺して息の根を止める。


ツナミ君は海中へ逃げたようだ。


糸にも捕まらない。


くそ、厄介なやつだ。


海の中から声がした。器用な芸を持っている。


「ギザばあーー。俺のカジキコイキを殺したなああああ。許さんぞおお」


カジキなのに、コイキ。小粋? コイキ●グか?


次の瞬間、ボートの周りに渦ができ始めていた。渦に巻かれてボートも旋回しだす。制御ができない。


「このまま海へ沈めてやる! 死ねえええ」


波がどんどん深くなり、ボートがくるくる回る。目が回る。気持ち悪い。


が、時すでに遅し。誰がって? 俺じゃないよ。ツナだよ、ツナミだよ。


手応えあり。俺は、手に持っていた鉄のロープを引き上げる。

投網に引っかかった人魚ではなく、津波マン。

「ブワーーーー。何じゃこれーーーー」


勢いよくボートの上へ網ごと持ち上げる。ピチピチと暴れる半魚人。

そんな渦を作るってことは、君、居場所教えてるようなもんだよ。

竜巻系の技は、中心が弱点だって、じっちゃんが言ってた。


「助けてくれー。助けてくれー」

哀れ命乞いか。大したことないな。


こうして、魔王軍の将軍を捕虜にしましたとさ。

ちょっと魚臭い。


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