第16話 森を焼いた日 最後の救援物資と太古の巨人
洞窟の中、潮溜まりの匂いとカビ臭い湿気。
薪をくべ、火を囲みながら、夜を過ごす。火種はレンジベア。
あれからすでに3日過ぎた。
昼はドラゴンを探しレベル上げ、夜は洞窟でひっそりと眠る。
いよいよ脱出の目処がついた。新しいスキルが目覚めたのだ。
と思っていたら、外から聞こえるキーンといういつもの音。
慌てて飛び出して落下地点を探すと、山の方に落ちたようだ。
今は夜中。朝まで待っていられない。
危険だが、夜の森を走る。
ここに来た当初からは考えられないくらい俺も強くなった。
夜でも森を歩けるくらいには。
いやはや、俺も頼もしくなったもんだ。
落下地点はすぐに分かった。白熱したコンテナがほの赤く光っていた。
途中、5メートルくらいある植物の化け物が触手を伸ばしてきたが、切断して無視して進む。
くぎぬきのような道具を作って、それに引っ掛けコンテナを素早く回収! 今じゃあ、道具を作れるようになったから、熱くてもへっちゃら!
洞窟へと持って帰る。
最近どうもコンテナの力が弱っているようだ。女神の力が弱っているのか、それとも時間が経つと効力が失せるのか、不明だが。
新しいコンテナも、弱々しい光だった。
コンテナを開ける。
またしても手紙が入っていた。薄い本と、折りたたんだ布が入っていた。
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拝啓 鉄男様
よく頑張っていますね。無事で何よりです。
救援物資は今回で最後になると思ってください。北の大陸ヨーラスが、魔王の手に落ちました。本来であれば貴方に食い止めてもらうはずだった侵攻です。
今回の制圧で、力関係は完全に逆転しました。我々の力は削がれ、これ以上の援助は難しくなりました。
これまで、あなたを守ってきたコンテナのバリア機能も、しばらくすれば消えてしまうでしょう。今後、戦闘にはくれぐれも注意してください。
残念な知らせばかりですが、さらにもう一つ。
聖都からの艦隊も、魔王軍により壊滅しました。自力で脱出してもらう必要があります。
間も無く、そこに魔王軍の軍勢が現れるでしょう。それまでに脱出してください。
今回は、救援物資に、服と魔法入門書を付けてあります。魔法入門書は、初級魔法なのであまり役に立たないかもしれませんが、少しでもお役に立てればと思い、ご用意しました。
最後に、お詫びをさせてください。貴方をこのような危険なところへ連れてきてしまったことを。最初の提案の3つ目。私は、万全のサポートをすると言いながら、こんなザマです。本来なら、あなたは今頃、聖都で安全に修行できていたはずでした、申し訳ありません。
これより先、我々の助力はしばらく、いえ最悪、永遠に無いかもしれません。貴方が、失地回復として魔王の勢力を殺ぎ、再び、我々の力が支配力を高めるまでは・・・我々はもはや無力です。
鉄男さん、必ず生き延びてください
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・・・今回の手紙はこれまでになくシリアスだった。ちょっと冷や汗が出てくる。
え、まじ、そんなにやばいの?
バリア使えないのは、地味に辛い。
頭が痛くなる。
と言っても、状況が変わるわけでもなし。
まずは目の前の問題を解決しよう。
続いて物資を確認。
布。と思ったら、服でした。貫頭衣というやつですか。腰でくくる紐がついている。なんかキラキラ輝いてます。うーん、神の衣ってやつですか。
早速鑑定。
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ゴッドキトン
アイテム 通称 神衣 食用不可
神が織った布を、神の刃物で細工した神の衣装。
熱や冷気、電気など、様々な衝撃を軽減してくれる。
着ているだけで、徐々に疲労を回復する効果を持つ。
鎧としての効果もあり、獣の爪くらいは軽く弾く。防弾、防刃性能あり。
また、多少の破損は自動で修復する。自動洗浄機能付き。洗濯不要。
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これまた、凄いアイテムですやん。RPGなら最後の方でもらうやつですやん。
早速、着込んで見る。鎧を一度外して、キトンを着て、再度鎧を装着。おお、なんかお風呂に入っているような感じもする。これが疲労回復効果か?
これは良いですね。
そして、もう一つの物資。薄い本。
薄い本には、「女神ちゃんの魔法教室! てへぺろ」とタイトルが書かれていて、イラスト化した青い女神がウィンクしていた。
・・・
パラパラとめくってみると、いくつかの魔法らしき説明が書かれていた。水魔法、風魔法、土魔法など。
詳しく読むと、中はこんな感じだった。
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ここには神の初級魔法を書いてあります! 地上で打ったらちょっと炸裂しやうかもだけど、初級だから大丈夫だよね、てへ。
まずは、火の初級魔法、こうやって右手を前に突き出して、ズギューンて魔力を込めて「@/se&#%t」って唱えてね!?」
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そんな文章が大きな字、そうまるで幼児向けの絵本のような字で書いてあり、魔法を唱える女神のイラストが描いてある。
で、これどうやって読むの?
困った時の鑑定。
「ァヴアハせアゥトゥギィ」と読むらしい。
声に出そうとして躊躇った。魔力が濃縮するのが気になる。なんか嫌な予感がする。
暗がりの中、ひらけた場所までやってきた。空は満点の星空。月がうっすらとあたりを照らす。
一キロ四方の岩場の平原。ところどころに草が生えている。
遠くに墓石のような岩が見える。200メートルくらい離れているが、ビルのような大きさがある。
ここなら間違っても延焼するようなこともないだろう。
魔王軍に見つからないように祈りながら、俺は右手を、遠くにある岩に向けた。あの岩に当てるように念じて、ァヴアハせアゥトゥギィ と唱えた。
発音が悪いのか、何も起きない。
もう一度唱えるが、何も起こらない。
ァヴアハせアゥトゥギィい、と最後の言葉を口を横に広げた発音したら、なんか漲る感じがした。おおおおお?
魔力が吸われる!
すると、右手から猛烈な炎が吹き出して、あたりを白く染めた。
ゴオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!
猛火は岩を吹き飛ばし、その先の森を焼き、見渡す限り前方が燃え始めた。
俺は、こうして森を焼いた。
何が初級魔法だ。周りの魔物が、悲鳴をあげている。周囲が一気に明るくなった。
まさに煉獄のような光景!
遠くの岩が跡形もなく崩れている。
ズーーーン!!!!
何かが、落下するような音!
そうして崩れた岩のあたりから、巨大な何かが立ち上がった。煙を背景に巨大なビルのような影がこちらを見据える。
強烈なプレッシャー。
ものすごい魔力量。これまでの魔物の比ではない。あの魔王軍のボーゲンですら、赤子のようだ。
この状況は何? 魔王復活させちゃった? さっきの岩は封印?
え、こんな偶然ある?
慌てながらもなんとか鑑定。 巨人の名前は「ヘカトンケイル」。
逃げないと死ぬ? 警戒しながら知識の本で確認!
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ヘカトンケイル 危険度 SSS
巨人族 ライブメタルゴーレム 食用:食えるもんなら食ってみろ
古代神により封印された太古の神、巨人の一族。体高約40メートルの巨体で40本の腕を持つ。オリハルコンとヒヒイロカネの合金で出来たボディは、破壊不可能に近く、巨体とその体重でほとんどの生物は、太刀打ちできない。また、体を構成する金属類は魔法抵抗に優れ、ほぼ全ての魔法に対して抵抗を持つ。
スキル 武器化
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もはや、言葉も出ない。
誰か助けて、神様、女神様。
魔王軍でもいいから、早くきてくれ。
ヘカトンケイルの真っ赤な目がこちらをロックオン。圧倒的、圧倒的圧倒感、圧倒ケイル。アットンケイル。
10階建のマンションくらいのデカさ!
40本ある腕の一本がこちらを向いた。
と思ったら、爆煙をあげて飛び出してきた。
ロケットパンチ!!!!
手の大きさ、握りこぶしで3メートルくらいの大きさの拳が、200メートル離れた距離から、猛烈な勢いで飛んできた。新幹線が空を飛んでくるような威圧感。
死んだああああああああ!
と思ったら、今度は5メートルくらいあるトゲ付き鉄球が横から飛んできて、腕を弾き飛ばした!!!!
鉄球は鎖がついていて、その先には、バイクに乗った巨大なドクロ仮面がいた。
もう一度言う、巨大なドクロ仮面だ!!
バイクだ、ドクロライダーだ!!!
20メートルくらいの大きさの、ドクロライダー。突然現れたドクロライダー。鋼鉄の鎧を着込んだ、ドクロの騎士?
ドドドドドとエンジンの爆音を響かせて、ヘカトンケイルと対峙する。
ドクロライダーは無言で、顎をクイと振り、下がれと促してきた。邪魔だと言わんばかりに。
俺は一瞬で物語を想像した。こいつは、ヘカトンケイルの見張り役。復活したヘカトンケイルを止めるために現れた正義の味方に違いない。
逃げつつ、鑑定!!
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ドクロ☆ライダー
種族 謎 危険度 謎 食用 謎
謎の正義のドクロライダー。すごいぞライダー、我らが味方。
いけ、パンチだ、キックだ、鉄球だ!!
強い。とにかく強い。強すぎる。
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もはや、表示がバグっていた。つのだ☆、漫☆的な表記に作為を感じる。
ドクロライダーがバイクのアクセルを吹かす。タイヤが空転し煙が上がる。羊のツノのようにグネッと曲がったハンドル。軽くウィリーしてヘカトンケイル目掛けて突進する。
ヘカトンケイルが、ロケットパンチを連続して放つ。鉄球を振り回して次々と腕を撃ち落とすドクロライダー。
さながらその光景は、世紀末の巨大怪獣合戦。
ドクロライダーの目から破壊光線が飛び出した! どんな原理だ。
光線が、ヘカトンケイルの顔面に直撃。
ヘカトンケイルがよろめく。
ドクロライダーは、バイクで突進しながら、右手に巨大なショットガンを構えた。そして、ヘカトンケイルに向けてショットガンを放った。
ドカンと言う炸裂音と共に、吹き飛ぶヘカトンケイルの右半身!
オリハルコンて、あれだよね、最強金属だよね? なんでショットガンで吹き飛ぶんだろうか。
これが、異世界の最強レベル同士の戦い? 次元が違いすぎる。
倒れるヘカトンケイル。
バイクから飛び降り、ヘカトンケイルに馬乗りになるドクロライダー。
豪快な手刀でヘカトンケイルの胸へ指先を突き刺す。オリハルコンだよね? 指で突き刺せるの?
そして両手を突き刺して、胸をこじ開けるように引き裂いた。そして、その中から、何かを掴むと、こちらへ投げて寄越した。
それは、人間だった!? 女性だった。綺麗な長い髪の、美人。
放物線を描いて落ちてくる女性を受け止める。お、重い!
抱き上げてよく見ると、それは、人間では無かった。関節部分に線が入っている。
それは人形。俗に言う機械人形って奴だった。
気がつくと、ドクロライダーは消えていた。あの巨体が、煙のように消えていた。
ヘカトンケイルだったものの残骸。オリハルコンって、貴重品じゃねえの?
早速回収。漁夫の利という奴ですか。オートマタも回収。
無限収納に収める。
火事と、それに続くヘカトンケイルとドクロライダーの圧力とバトルで、周りの魔物も逃げ出していたようだが、決着がついて、また騒ぎ始めた。
何が初級魔法だよ、とんでも無い目にあった。一体、このイベントは何? 何に巻き込まれたの? ドクロライダー、だれ? どこ?
もはやハテナの嵐。
ええ、こんな騒ぎが、目立たないはずもなく。
気がつけば、魔王軍に取り囲まれてましたとさ。ちゃんちゃん。
豆知識
ヘカトンケイルのヘカトンはヘクト(100)の意味。
ヘクトパスカルとか、ヘクタールとか。語源は同じ。
腕40本しかないから、こいつはヘカトンケイルではない。厳密には。




