第13話 洞窟とドラゴンとキノコ
海岸沿いに1日ほど北に向かうと洞窟があると女神は手紙に書いていた。
俺は学習した。と言うか、ややビビっていた。
魔族は空を飛んで襲ってくるかも知れないので、なるべく木陰に隠れながら、海が見えるところを北上していた。時刻は多分、昼ごろだろう。日差しからそう判断した。
特に大した戦闘もなく北へ順調に進む。やがて日が暮れてきたので、野宿することにする。心許ないので、開けたところを見つけて小屋を収納から取り出す。
女神のバリアのおかげもあり、朝までぐっすり眠れた。
再び歩き出す。朝靄の中、北を目指す。
2時間ほど歩いていると、遠くからヤバい気配がしたので、また魔族が来たのかと身構えながら慎重に進むと、遠くからでもその巨体がわかるほどの茶色の物体があった。
それは、見間違えることなく、ドラゴンだった。
全長30メートルほどの巨体。木々を踏み倒しながら、東の山の方に進んでいた。
遠目に見ても、勝てる気がしない。この辺りの主のような存在感だった。一応鑑定しておく。
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マッドドラゴン
種族 竜 成体 危険度S
種族として最強なドラゴン族の中で、中堅程度の強さの竜。マッドは狂っていると言う意味ではなく、泥という意味。泥のブレスと、足場を沈ませる泥の魔法を主に使う。
ほとんどの敵は魔法を使うまでもなく、その大きさの前に成すすべはなく、ただ踏み潰されるだけである。危険度としては街を滅ぼせるレベル。
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かなり危険そうだな。うん、近寄らないようにしよう。
それでも、ボーゲンより弱いの? それとも怒ってないから、Sだとか。
危険度の基準は一体なんなのだろうか。
海岸沿いを北上していく。すると、今度は、なんだか見られているような気がした。危険な感じのしない視線だったので、視線の方へ向かってみた。
海から少しだけ離れた森の、倒木の下にそれはあった。
それは、10センチくらいの人型のキノコ。プルプル震えている。
赤と白の斑点。うーむ。早速鑑定。
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神聖なマイコニド
種族 菌類 幼体 危険度G
プルプル、アタシ、悪いキノコじゃないわ。
聖都の近くでしか繁殖しない珍しいキノコ。このキノコの胞子をつけたゴブリンが巨大な鳥の魔物ガルーダに捕食され、そのまま死の大陸まではるばる飛んできて、落としたフンに付着してそのまま成長したというバックストーリーを持つ。ふるさとに帰りたがっている。(Y/N)
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・・・・
この最後のやつは、仲間になるときに必ず表示されるのだろうか。もう、はっきり言って、連れていくのが前提みたいな書き方だ。
クロちゃんのこともあるし、多分、おそらく、間違いなく、連れて帰った方が良いということなのだろう・・・
手を差し出すと、嬉しそうに、キノコが乗ってきた。
おかっぱ頭の人形のようだった。
お前の名前は「ピノコ」だ。
そういうとピノコは、手のひらの上で、小躍りしてはしゃぎ出した。
「よろピくね、お兄たん。素敵な名前ありがとう」
!! しゃ、しゃべったーーー !!
「ピノコはチゃべれるわよ、バカにチナイでくだちゃい」
「お、おう!」
あー驚いた。まさかキノコが喋るとは。
ピノコはプンプンした感じで拗ねている。
よし、気をとりなおして行こう。
「俺たちは、この大陸を脱出して、なんとか聖教国へ行こうと思っている。ピノコはふるさとに帰りたいんだろう。なら、俺たちの目的地は一緒ってことだから、連れてってやるぞ」
「わーいわーい」
素直で良い子のようだ。
キノコを肩に乗せて、再び走り出した。
「しっかり掴まってるんだぞ」
そのあと、目的の洞窟には1時間ほどで着いた。途中の危険は避けた。
海岸が崖のようになっていて、その下に洞窟がある。入口が崖にあり、入りにくかったが、確かに安全なようだ。中は湿っていて、それほど快適とは言えなかった。海から光が差して、幻想的な青い色に満ちている。日中は明かりに困ることもなさそうだ。
入口があまり大きくないので、巨獣が入り込んでくることはなさそうだ。
例のフナムシが大量にいたが、バリアとクロちゃんベッドがあれば、寝込みを襲われれることなく快適に過ごせそうだった。湿気だけ我慢すれば。
早速、丸ごと持ってきたオンボロ小屋を設置。家があるとちょっと落ち着く。
家の横に丸太を組んで、後でキャンプファイヤーにしようと準備していると、キノコが話しかけてきた。
「ねえねえ、お兄たん。お兄たんはどこから来たの?」
ピノコにこれまでの経緯を説明する。
どこまで理解しているかわからないが、ピノコはウンウンとか頷きながら、話を聞いてくれた。
「ピノコは何故喋れるんだ?」俺が尋ねると、
「ピノコはね、遠くから来たの。ピノコは、死体が大好きなの。この辺りで人が死んでたの。それを食べたら喋れるようになったの」
可愛い仕草で恐ろしいことをサラッと言った。お、おう。俺はちょっと引いた。
ピノコはプルプル踊っていた。
洞窟の中、小屋の中。落ち着いたところで、さて、次はどうしようかと考えた。
何とかして早くこの大陸を脱出しなければならない。陸路の可能性は無い。魔族だらけの大陸で助けを求めるなど自殺行為。そうなると海を渡るしか選択肢はない。海を渡るために必要なのは、船だ。だが、船を作ろうにも方法が思い浮かばない。木を伐り出して、操鉄術で作った釘や針金でまとめることも考えたが、耐久度その他に不安が残る。あの巨大な魚がいるような魔海なのだ。離岸した瞬間に食べられて終わる気がする。
とはいえ、洞窟に隠れているなら、やることは限られる。
スキルをあげるくらいしかない。操鉄術で何とか船を作れるようにならないだろうか。
ステータスを確認する。
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黒金鉄男
異世界人 通称テツオ 食用可
流浪の異世界人。漂流20日目 危険度F 戦闘力C
女神に召喚された勇者(候補)。戦闘能力が向上中、操鉄術の向上に夢中。
怒るとキレるタイプ。鉄に詳しい職人肌。魔族から指名手配中。
保有スキル 身体強化lv2 鑑定lv1 気配察知(NEW) 操鉄術lv2(650/1000)
操鉄術 『精錬』『錬成』『礫』
PT
クロちゃん(ダークゴッドアイアンスライム)
ピノコ(神聖なマイコニド)
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あまりステータスに変化はないが、ビビりながら生活していたからだろうか、気配察知というスキルを習得していた。ピノコに気づいたのもこのスキルのおかげか。戦闘力はCに格上げ。
戦闘力ってやつは、どういう基準なんだろうか。危険度との違いが不明。
魔族と戦ったからか、操鉄術のスキルが200ほど伸びている。
強い敵と戦うとスキルの伸びも良いのだろうか。
と、そこで、ものすごく良いことを思いついた。




