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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第三部 クロガネ、鉄を打つ
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第102話 『ドラゴンマスタークロガネ』

――坊やは遠ざけろ。皆殺しにしてやる――


飛竜の編隊が遠くから近づいてくる。1、2、3、4、5。5体か。


一番先頭に強そうな兜の魔族がいる。夜目、遠目が良い仕事をしている。目つきの悪さまで見える。


鑑定。名前が出た。ヴェロマキア。


あいつが主犯か。


お互い向かい合っているため、ものすごい速度で近づいてくる。


すれ違いざまに、巨龍が火を吹いた。


我が名は ロギア。人は我をピークエンドと呼ぶ。北峰の死神。

貴様らを屠る!


実際、龍が言葉を発したかどうかは分からない。巨大な咆哮が俺にはそう聞こえた。

ロギア。良い名前じゃん。


龍の吐き出した巨大な炎は、5体のうちの1体に直撃。魔族の体を溶かしながら、火だるまになった飛竜が錐揉み状に墜落する。


「固まるな、散れ!」


先頭のヴェロマキアなる魔族が叫ぶ。


巨龍と違い小回りの利く飛竜が巨龍の横に並び、俺に叫ぶ。


「貴様! 何者だ! 巨龍の背中に乗り、まだ生きているとは。まさか、その巨龍を手なづけたと言うまいな」


「俺か。しがない冒険者だよ。とはいえ、お前らは許さんからな。二度と悪さしないよう、ここで死んでいけ」


名乗るわけないだろうよ。せっかく正体がバレてないのに。


4体の飛竜はまるで、夏の蚊のように巨龍にまとわりつくように飛ぶ。


巨龍は翼をはためかせ、うっとおしそうに飛竜をはたき落とそうとするが、当たらない。


飛竜に乗った魔族が魔法を撃ってくる。紫色のビームのような魔法だった。

俺は、風呂敷から盾を取り出しビームを防ぐ。

これは魔力対抗の強い特製の盾。ゴードンからの頂き物だ。


巨龍は魔法を受けてもビクともしない。

本来、龍の鱗は魔法耐性が高く、硬く、それは優秀な防御力を有する。


激しい空中戦。


すれ違い様、俺は巨龍の背中から飛び出して、隊長の乗る飛龍の首に鉄のロープを巻きつけた。


強襲成功。


決して広くない飛竜の背中に這い上がり挨拶した。隊長ヴェロマキアは目を丸くして、後ろを振り返った。至近距離。手綱を離せない。


「よお。お前がリーダーだろ」


左手は鉄のロープ、右手に炎熱の長剣。


「ぐ、何という身のこなし。貴様、ただの冒険者ではないな」


飛竜は猛烈な速度で空を飛ぶ。振り落とされないよう俺も必死だ。


さっさと片付けようと右手の剣を振る。首はもらった。


「くっ」

流石に、隊長。剣を抜いて俺の斬撃を防いだ。


が、甘い。熱が燃え上がり、吹き出した炎が飛竜の頭を焦がす。


「ギジャアアアア」


飛竜が驚いて身悶え、俺たちは垂直になる。振り落とされる。


逆さ吊りのまま、もう一度、炎熱の剣を振る。


が、相手も中々やる。ヴェロマキアの顔が変形した。変形というか変態した。

口が左右に開き、昆虫の顎のようになった。かと思えば、全身を甲殻が覆い、ムカデのように節が生え、そのまま飛竜に絡みついた。


「くそ、たかが人間に、騎竜一体の寄生形態を取らされるとは」


確かに、この姿なら飛竜が暴れても落ちないだろうな。がっちりと、まるで肋骨が食い込むようにムカデのような複数の足が飛竜をがっちりとホールドしている。


一方俺はといえば、左手の錬成で繋げた鞭で何とかぶら下がっているような状態。くるくる回る視線の中、炎熱の剣を振るう。


わかってないなあ。

なぜ、この剣を使ったか。


こうするんだよ。


ヴェロマキアは無視。飛竜に剣を突き刺す。


一瞬で燃え上がる飛竜の体。


「じゃあな、飛竜と心中しろ」


鞭をほどき飛び降りる。


ロギア。心の中で叫ぶと、巨龍が落下する俺を背中で受け止めた。ギザギザの鱗が痛すぎる。


――贅沢を言うな、人間風情が


燃えながら落下する飛竜から、ヴェロマキアの体が離れた。すると、薄い虫の羽が背中から生え、カゲロウのようなフォルムの巨大な昆虫の姿で、こちらを見た。


「貴様、我々の計画を邪魔するなああ。第三魔将軍メギダス様直属の精鋭部隊を舐めるなよ」


飛竜部隊が整列する。1体減っていた。


ロギアが吠え、火球を吐いた。今度は、幅広い拡散する炎だ。


「あぢいいい」


さすがは虫。よく燃える。


旋回しながら、逃げるヴェロマキア。部下の2体は方向を変え、あさっての方向へ向かう。そっちにはグリフォンがいる。子龍を人質にでも取るつもりか。


「おい、そっちはやめとけ」


逃げていく先に、白い巨獣。グリフィン。その背中に乗る田中。

もちろん手には。


似つかわしくない大振りの銃が握られていた。


バスンという重い音。飛竜の頭が弾けた。


マグナムを直撃されて落ちていく。


残るは2体。1体は隊長。


子龍を狙う残りの飛竜へ急速に近づき、ロギアが大口を開けた。

そして、軽々と飛竜を咥え、左右に振る。


ギゴゴギという破砕音。骨を砕く音と断末魔の悲鳴。


子龍を狙うからだ。お母さんを怒らせた。


「ぐっぐう、この場は、一旦、逃げ」

ヴェロマキアが背中を向けて敗走を試みる。


許すわけがないだろう。


さっき、お前の体には細いワイヤーを括り付けてあるんだよ。


締め付けて一丁あがり。


「グゲえええええええ」


虫の体に巻きつくワイヤー。羽がちぎれ、落下する。


「さあ、行こうか!」


俺は巨龍に声をかけた。


空に舞い上がる巨龍。白いグリフィンがその前を飛ぶ。


「やめろお、離せええ」


まるでミノムシのように空にぶら下がる魔族。


こうして、災難は終わった。

巨龍は月に向かって飛び、北の山脈が見えてきたところで、一旦、子龍を降ろし、目を覚まさせる。


「ここからは、親子で帰れ。その魔族はくれてやる」


「やめろおお離せええ、許さんぞおお」


――礼など言わんぞ、人間。元はといえば貴様らの争いだ。


ロギアは威厳のある表情でそう言った。


二度と会うこともなかろう。そう言い残して親子の龍は空へ昇った。巨龍の爪先には、糸で結ばれた昆虫。


「やめろおお、離せえええ。助けてくれえええ」


山脈の裾野。雪が遠くに見える秋の空に魔族の悲鳴が響きわたった。


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