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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第三部 クロガネ、鉄を打つ
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第100話 『インタビュー ウィズ エルダードラゴン』

傀儡虫という線虫を使った破壊行為は、アルメニア大陸の国々では条約で禁止されている。

かつて、人類同士が戦争を繰り返していた頃、北のとある国が、傀儡虫を隣国に使った。

傀儡虫は死体に寄生し、体を乗っ取り、活動する。傀儡虫に寄生されたものは、外見上、ほとんど生者と見分けがつかない。外傷のない死体に寄生すると、生き返ったかのように振る舞う。脳機能を最大限に活用して、以前の生活を送る。

見た目や行動が普段通りなため、発覚が遅れ、気づいた時には、被害が広がっている。

夜になると起き出し、眠っている他の生物へと侵入する。昼間は通常の行動をする。

かつてこの虫を使った国は、皮肉なことに、王族が傀儡虫に寄生されて、やがて壊滅した。


夜の捕食中に発見されると、非常に攻撃的になることも知られている。

経口で他の生物に侵入する。その侵食行為中は、非常に攻撃的。


この虫は別名「夜の侵略者」。


夜のうちに静かに侵略し、寄生する。非常に危険な生物である。



「距離を取れ、近づくと危険だ」

スケルトがレイアに注意を促した。


口から触手を出した元公爵、フォンハイゼンの死体。触手の先には、乗務員の死体。2体の死体を触手にぶら下げて、フォンハイゼンが近寄ってくる。

フォンハイゼンの後ろで、メイド服を着た女が、むっくりと起き上がる。女のねじれた首が、内側からボコボコと奇怪な動きを見せながら、戻っていく。

公爵と同じように口から触手を覗かせながら、何かを求めるように手を前に出して近づいてくる。


「浄化魔法で弱るはずだ。レイア、頼む」

疾走する列車の中、集中しずらい環境だが、レイアの手が仄かに光り、浄化呪文が発動する。


「浄化の領域!」

呪文名をレイアが唱えたと同時に、清浄溢れる光の粒子が、車内に満ちる。


「一体ずつ片付ける、レイアは近づくなよ」


スケルトが静かな足運びで敵に近寄る。フォンハイゼンは、荷物になると思ったのか、ぶら下げていた乗務員を投げ飛ばしてきた。

スケルトは、大剣で死体を傷つけることなく、優しく捌き、構え直す。


数十もの触手が、フォンハイゼンの口から飛び出す。大剣を狭い車両の廊下で使うのは、至難の技。

しかしスケルトは伊達の冒険者ではなかった。狭いダンジョンをいくつも攻略した実力者。

大剣を下向きに構え、体に沿って動かす独自の剣術で、狭い場所でも立ち回れるように工夫を重ねている。


飛び出してきた触手を、下に構えた大剣を左右に振って鮮やかに捌く。

スケルトの持つスキルは、その名も「スキルレス」。

自身、長くスキルを持っていないと思い、悩み、王位継承権を放棄するまでに至った。

しかし、勇者ぽっくんに見出され、スキルレスというオリジナルスキルを最大限に使いこなす戦術を編み出した。

スキルレス。その名の通り、スキルが一切使えなくなるスキル。以前は、自身のみ、スキルが使えなかったが、その範囲を一定の距離まで伸ばせるようになり、飛躍的に応用の幅が広がった。

スキルの効果を乱されると、どのような達人であれ、崩れる。身体強化を使えなくする、感知型の機能を使用できなくする、魔法を使えなくする、などと言った基本的なスキル封印だけではない。足だけスキルを解除してバランスを崩す、感知の一部を歪めて認知を阻害する、魔法の術式の一部を無効化し自爆させるなど。使用させ、効果を歪め、致命的な失敗を起こさせるという技術を高めた。

さらに、スキルレスの奥義は、スキルを使えなくすることではない。

その真の力は、範囲内でスキルが使われたら、それを感知できるということにある。

つまり、スキルレスのテリトリー内では、いかなるスキルも感知されるということになる。

この世界では、ほとんどの生物がスキルを持つ。実は、微細な行動もスキルを無自覚に使っている。意志有るところにスキルありという言葉は事実である。

つまり。


「終わりだ」

スケルトが近寄り、大剣を直線に突き出し、フォンハイゼンの首を断った。


ことスキル戦において、スケルトは最強の一角であった。


・・・ただ、地味だが。


実はそのことを、本人は多少気にしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


激しく揺さぶられることで、服はズタボロ。全身血まみれ。

龍がめちゃくちゃに暴れ、ジグザグ飛行を続ける。


相変わらず、どこからか聞こえる坊やを呼ぶ声。


「大丈夫ですか! クロガネさん!」


暴れる巨龍になんとか近寄り、田中が大声で聞いてくる。


「なんか、子供がどうのと聞こえるんだが、気のせいか!?」

俺が大声で聞く。


「声なんか聞こえないですよ! 大丈夫ですか、しっかりしてください」


田中には聞こえない。ということは。

この感覚には覚えがある。

つい先日。

マインの坑道で、あの百頭竜と対峙した時。

心の中に直接響くような、声にならない声。


この声は、この巨龍の声だ。


「田中、この龍はどうも子供を探しているようだ。近くにいないか?」


「ナンスカ。子供でおびき寄せるって、ナウシカのやつじゃないですか」

「意味のわからないこと言ってないで、探してくれ!」


田中が、笑顔でOKサインを出して、列車の方へ降りていく。


「おおい、龍よ、聞いてくれ。俺はクロガネという、坊やってのはお前の子供か。力になりたい」


坊やを盗んだやつを出せ。絶対許さない。


「子供を今、探している。落ち着け。力になる」


うるさい、お前も殺す。許さない。


「暴れるなって、子供は絶対に助けてやるから」


うるさい。黙れ。殺す。


「今、仲間が子供を探しに行ったから、落ち着け。子供をどうやって追いかけてきたんだ?」


小さい竜に乗った小賢しいやつらが、子供を連れ去ったのだ。お前もやつらの仲間だろう! 同じ匂いがする!


「そいつらは、俺たちの敵だ。必ず子供は助けてやる。まずは冷静になれ」


黙れ、人間風情が。


「人間を舐めるなよ。助けてやるって言ってるんだから、落ち着け」


やかましい、振り落としてやる。


同じ会話を根気よく繰り返す。龍は激昂してさらに暴れる。

いい加減、腕が疲れてきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「大変ですよ。龍の子供が拐われたそうなんですけど、どうしましょう!?」


窓の外から、スケルトを探し出して、なんとか見つけた。


大声で叫んでみたが、気づかれないので、田中は何度か叫んで、ようやく気づいてもらえた。


窓越しの会話。走る列車の中と外。


「・・・フォ、クロで・・・、だ」


全く何を言っているのか分からない。


業を煮やした田中は、窓を拳銃で撃って、その後、壊れた窓から、黒い物体を投げ入れた。


「それを耳につけてください」

声は届かないかもしれないが、耳につけるジェスチャーをする。


スケルトが、怪訝な顔で、その物体を拾い、耳に当てた。


「声が聞こえますか」


「おお、なんだこれは、声が聞こえる」


それは、最新型の無線機だった。

音声を検知して、同時通話が可能になっている。


「そちらは片付きましたか? 龍の方が大変です。子龍がさらわれたそうです。探すの手伝ってください」


「うむ、わかった。こちらは一旦片付いたはずだ。乗務員に連絡して、探すのを手伝ってもらう。しばらく待て」


スケルトは、走り出し、先頭車両に向かう。


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