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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第一部  鉄の勇者のサバイバル
10/214

第10話 クロちゃんとの日々 魔王軍襲来

「それー」木の枝を投げる。

ぴょんぴょんと飛び跳ね、木の枝を拾いに行く黒い物体。

木の枝をひょいと加えるように体に取り込み、また跳ねて戻ってくる。


そう、俺はクロちゃんと戯れていた。


うふふ、キャハハである。


クロちゃんは結構、頭が良い。お手と言えば、触手を伸ばして手に置くし、お座りというと、平べったくなる。

とても従順である。


そして、いざ戦闘になると、コンマ2秒で刀に変わる。まるで、宇宙刑事である。


クロちゃん刀、略して黒刀は切れ味抜群だった。いや、抜群を通り越してバツギュンと言っても過言ではない。


元々の鉄の硬さに、何かしらタールのような粘り気を感じさせる。試しに斬ってみたら、もう狼なんか、まるでチーズケーキですわ。


焚き火を囲いながら、クロちゃんで色々遊ぶ。クロちゃんをバスケットボールの形にしてドリブルの練習、指に一部をくくりつけてヨーヨー、頭にかぶせてアフロ。色々遊べて楽しい。


クロちゃんと遊んでいたら、ある時やたら体が軽くなったので、調べてみると身体強化がレベル2に上がっていた。


身体能力がレベル2になると、垂直跳びで3メートル飛べます。100メートル、7秒くらいです。正確には測れないので、多分それくらい。


こんな感じで散策しながら過ごしていた。

漂流18日目。この頃になると、海岸沿いのあたりは、ほぼ調べ尽くして、遠くに見える岩山を目標にしていた。

高いところから見下ろせば、近辺の地形把握になると考えたからだ。


身体強化の影響で歩く速度もかなり早くなっていたし、樹上の枝を飛んで渡る事も出来た。森での機動力は獣を超えたとも言える。


海岸から山までの距離はおよそ10キロほど。なんでも、遮るものがないところで人の目の高さから見渡せる地平線水平線までの距離は10キロくらいらしい。

樹上から遠くに山裾が見えたから、なんとなくそう判断した。10キロなら、30分くらいで行けるはずだ。


樹上からの森の景色は、想像を絶するものだった。森の広さとかそう言う話ではなく。

木の高さを超える蛇のような化け物や、遠くに巨人も見えた。また、空を飛ぶキマイラ。5メートルくらいの巨体で、コウモリのような羽で飛んでいる。体の割に羽が小さいから、魔法で飛んでいるのだろうか。

とにかく、化け物だらけだと言うのがよくわかる。強くなったと思ったが、まだまだ危険がいっぱいである。

空の魔物はまだ倒していない。遠距離攻撃の乏しい俺のスキル、礫だけでは不利すぎる。多分、簡単に負ける。空から一方的に攻撃されては勝ちようがない。

今はひとまず隠れて進む。空の魔物、巨大な魔物に見つからないよう、慎重に進んでいくと、30分ほどで山裾までたどり着いた。


樹上の木陰から見ていると、山裾のやや開けた空き地では、なんか見たことのあるような、見たことのないような人型の魔物が喧嘩していた。遠くから鑑定してみると、片方の小さい人影の集団はゴブリン、片方の豚みたいな集団はオーク、と表示された。

ああ、定番のやつがいました。

領土争いをしている様子で、50匹くらいの集団が入り乱れている。


争っているゴブリン・オークの集団を避けて森をぬけ、岩山を登る。木がほとんど生えていない岩山。空からの魔物にはもっと注意する必要がある。岩陰に隠れながら、慎重に登る。

1時間ほどで見晴らしの良い崖の上に出た。


遠くに海が見える。海は果てしなく広く、その向こうは白い靄で霞んでいる。雲と靄で水平線がところどころ見えるが、地図によるとこれは中央大洋という海らしいので、さもありなん。


海の少し手前に砂浜。最初の砂浜があそこだろう。ここからは見えないがあの辺りに小屋がある。緑の森がその手前に広がっている。ずっと右に目をやると平原が見える。平原の真ん中あたりに岩山。 その平原の右もさらに森が広がっている。それ以上先は見えなかった。


しかしながら、美しい光景だった。崖に腰掛け、広がる景色は異世界の美しさをしばし堪能した。空から巨大な鳥がいつ飛んできてもおかしくないこんな場所で、それでもしばらくこうして居たかった。

白いコンテナを抱える。多分、このバリアで即死になるようなことはない、と思う。


空は地球と同じく紺碧で、海は空の色を濃くした深い青。

緑の森の間に色とりどりの人食い花。闊歩する巨大なモンスター。

ああ、俺は異世界にいるんだな、と改めて思った。


早くあの海を越えて、人里へ辿り着きたい。そう思いつつも、この危険な森をもっと遊び尽くしたいとも思った。

強くなるのは快感で、命を賭けて戦うことは爽快だった。小難しい理屈もなく、弱肉強食。警察もいないし小うるさい声もない。力だけが左右する自由。

これこそ生物の本来の生き方なのだろう。

そんなことを感傷的に考えた。

息子と娘の平穏を祈って、俺は山を降りることにした。


山を慎重に下っていき、再び森に入ると、行きしに見かけたゴブリンとオークの小競り合いがまだ続いていた。俺は、再び木の上に戻って、やり過ごそうとした。


山裾の広場にゴブリンとオークの死体が転がっている。ややオークの方が優勢なようだ。ゴブリンが蹴ちらされていく。そろそろ勝負が決するかなと、思った瞬間、全員がピタリと動きを止めた。

そして全員が空を見上げて、そわそわした様子で、次の瞬間には、逃げ出していた。


ゾワ!

何が起こったのかと思った刹那、背中にものすごい悪寒を感じた。樹上の背後から声がした。


「やっと見つけたぞ、ニンゲン」


!!!

樹上から即断で飛び降りる。白いコンテナを抱えたまま、一気に逃げる。

やばい、殺される。

圧倒的な殺気に、逃げの一択。

実力が違いすぎることが、本能的に分かった。

ゴブリン達は、この気配に先に気づいて逃げたに違いない。


どん、と何かにぶつかった。衝撃で吹き飛ばされた。


「おっと、逃がさんぞ」


声のする方を見上げると、ぶつかったのは、細身の青白い男だった。胸のところに小さい鎧を着ている。パッと見は、アラジンの魔法のランプの精霊のような服装。

頭にツノがある。人間には見えない。これが魔族というやつか。


調子に乗って樹上を飛んできたのがアダになったか。やはり調子に乗りすぎたか。


男は首を傾げて、こちらを見ている。すると、もう一人、太った魔族が降り立った。太った方は巨大な棍棒を担いでいる。


「こいつか。全く、こんなとこまで探しに来させるとか、ブーゲは糞だぜ」

「今言うことじゃない」

「ああ、で、こいつを生きたまま連れて帰るのか?」

「四肢は捥いで良いとのことだ。止血は魔法で済ます」


次の瞬間、右腕が切り飛ばされた。俺の腕が。肩のすぐ先から腕が無くなっていた。刀ごと右腕が草むらに落ちた。


!!!

全く見えなかった。挙動がない。魔法か!?


「おい、逃げようと思うなよ」細い方の男が、何事もないかのように言った。

俺は、呆然としてしまっていた。


腕が無くなった・・・マジかよ。血の気が失せて、吐きそうになる。


「こんなのが勇者かよ。ブーゲはビビリすぎじゃねえのか? 殺して食っちまおうぜ」

「ダメだ。情報を吐かせてから、魔力を抽出する。そのあとは、自由にしても良いが。多分、奴隷にするだろうな。万に一つも、お前のおもちゃにするわけはない」


脂汗が止まらない。右腕はあまりのことすぎて、痛みを感じるまで一瞬、間ができた。一呼吸して、右腕に激痛が走った。グアアあああ。うめき声が思わず出てしまった。脂汗がにじむ。傷から血がどんどん流れていく。左手で動脈を抑えて少しでも出血を抑える。ただこのままだと、すぐに失血死するだろう。少し寒気がする。

完全に絶体絶命だ・・・詰んだ。鼓動が激しくなる。大きく息を吸い、何とか言葉を出すことができた。

「ハアハア、お、お前達は、誰だ? な、なぜこんなことを。俺はただの遭難者だ・・・」


思わず日本語で呟いたが、そういえば、相手の言っていることも普通にわかる。翻訳機能が有効化されているのか。


「しらばっくれても無駄だ。こんなところに、人間が住んでるわけねえだろうよ。ここは汚濁大陸の端だぜ、お前らは、死の大陸とか呼ぶんだったな。逃亡奴隷がここまで来れるわけねえし、お前には奴隷の印もない、ブーゲの転移で飛ばされた女神の勇者しかこんなところにいないんだよ」


ブーゲというのが第二魔王のことだろうか。あ、なんか凄く傷口がめちゃくちゃ痛くなってきた。


白いコンテナが、ちょっと離れた所に落ちている。ぶつかった衝撃で手を離してしまった。

あそこまでたどり着けば、一時は助かる。

だが、いま動けば即、死。肌にピリピリくる殺気から、それが分かった。


どうしようかと考えあぐねていると、次の瞬間、黒い影が茂みから、何かが、太い方の魔族に飛びかかった。右腕と一緒に切り飛ばされたクロちゃんが刀の姿のまま、魔族に飛びかかったのだ。

太い魔族は完全に気を抜いていた。飛び出してきた刀に目を剥いて驚くだけ。

だが、細い方が目にも止まらぬ速さで移動して、太い方の背後、刀身を素手で掴んだ。

「往生際が悪いな、ニンゲン」

その瞬間に俺は、礫を打ち出した。細い方の背後、死角から。

細い方は首を傾げて礫をあっさり避けた。


ほんの僅かに生まれた隙、俺は飛び出し白いコンテナを掴んだ。


「何の真似だ、ニンゲン、死にたいのか」「こいつぶっ殺す」


細い方と太い方が同時に声をあげた。細い方の手から、クロちゃんがすり抜けて草むらに隠れるのが見えた。クロちゃんが無事に逃げたのを見て、少しホッとした。


細い方がクロちゃんが逃げる姿を見て、呟いた「ライブメタルか、厄介な」


太い方がまるで戦車のように雄叫びをあげて突っ込んできた。が・・・

「おおおお、おおお?」

白いコンテナのバリアにぶつかり、ちょうど3メートルの距離で止まる。バリアに防がれたが、熊のように転ぶことはなかった。

相撲のツッパリのような姿勢で、右腕を突き出し、その右腕がバリアに触れていた。白く青い稲妻のようなスパークがチリチリと魔族の肌に立ち上る。

「小癪な。女神の結界か」


「どけ!」

細い男が叫ぶと、太い男が消えたと思ったら、喉に凄い衝撃。俺の体が吹き飛んだ。喉の下に野球のボールくらいの石が食い込んでいた。

女神のコンテナは絶対に手放さない。

攻撃されている! そう認識して、とっさに左手で頭を抱えたが、続いて散弾のように砂が全身に食い込んだ。

細い魔族が土を拾って投げただけ、それだけの攻撃だった。


「おい、ニンゲン。舐めたマネはするな。女神の結界は魔物や魔族は通さないが、普通の石は素通りするぞ、このまま気絶するまで攻撃を続ける」


男は冷徹に言った。クロちゃんが右腕を拾って草むらから戻ってきた。

クロちゃんはバリアの影響を受けない。神鉄を取り込んだからだろうか。

クロちゃんは、体を広げると、まるで風呂敷のように俺を包み込んだ。魔族が投げた石は、クロちゃんのボディに当たり威力を減衰させた。クロちゃんが身を呈して俺を守ってくれていた。


「ライブメタルをそこまで使いこなすか。キサマ、召喚系か」


細い魔族はさっきからライブメタルと繰り返している。

魔物が投げる石がクロちゃんの体にあたり、ガムのように伸びてそれを受け止める。さすがのクロちゃんもダメージがあるのだろうか。いつまでも俺をかばうことはできるのか?

魔物の投げる石は強烈で、クロちゃんが守ってくれていても、ノーダメージというわけにはいかず、まるで殴られるような地味な衝撃を俺に与え続けている。

クロちゃんがいないとおそらく即死クラスのダメージだろうが、弱まった石の衝撃は、それでも痛い。


俺は決めなければならない。戦うか逃げるか。

逃げてもおそらくジリ貧だろう。場所はバレた。次々魔王軍がやってくる。


正面からやって勝てる相手ではない。見えない魔法の斬撃が厄介すぎる。それだけでなく、圧倒的に地力で負けている。そして俺は右手がなく、出血で死にかけている。

状況は絶望的だった。


細い方は、反応も異常だ。全方位に感覚が張り巡らさせている。隙が無さすぎる。


その一方、太い方は、驕りが見える。そこが唯一の勝機かもしれない。

血が失われていく。迷っている暇はない。


「クロちゃん俺の右腕になってくれ」

そう念じるとクロちゃんは、肩の傷に張り付いて、腕の形に変形した。クロちゃんが程よい締め付けで出血箇所を締め付けてくれる。血は止まり真っ黒な腕が生えたようになった。錬成を応用してまるで自分の腕のように動かしてみる。自在に手を握ったり開いたりできる。


細い方が飽きずに、石を飛ばしてくる。俺は黒い右腕でそれを受ける。

クロちゃんは自在に動いてくれる。要領は高速な錬成。思う通りに右腕は動いた。俺は新しい腕の動きに満足した。


何とか血は止まり、石は受け止められる。これは、一見、千日手のような状況になった。このまま石を防いで時間を稼ぐのも良いかもしれないが、それだけでは俺の不利は変わらない。打って出る必要がある。


俺は細い方を見て

「降参する!」と叫んだ


そしてこっそりと、すかさず鑑定する。

鑑定には「魔族」と出た。名前が出ない?!


俺は、失意を顔に出さないようにして両手を上げた。名前がわからないと弱点を調べられない。

白い箱を地面に置き、続けて叫んだ。

「殺さないでくれ、命が惜しい!」


太った方が、

「はっ、最初から大人しくしとけば良いんだよ、くそ雑魚が」と忌々しそうに言い、こっちに歩いてきた。


さあ、もっと近づいてこい。

棍棒を肩に担いだ太った男が、めんどくさそうな顔で近寄ってくる。


白い女神のバリアから一歩踏み出す。太った男が近寄ってくる。


「バーナ! しゃがめ!」

細い男が目を見開いて叫ぶが、もう遅い。


俺の黒い右腕が、太い男の顔面めがけて炸裂した。

太い男、バーナと呼ばれたデブは、ニヤリと笑って拳を受け止めた。

「おい、こんな軽いパンチで俺が倒せ」

とそこまで言って、その後、頭が吹っ飛んだ。


身体強化2のパンチ力は600Kgを超える(自社比較)。そしてこれはパンチじゃない。


ドリルだ。ドリルはロマンだ!


クロちゃんは、黒い円錐のドリルとなって高速回転していた。

そう、ライブメタルと何度も言うから、思いついたじゃないか。


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