夏がちかづく
何日か過ぎて、僕は学校の生活に慣れた。
もう夏が近づいてきている。当たり前だが友達はつくっていない。
ある朝、僕は眠たい身体を起こして、朝食を作ってテレビを見ながらゆっくり過ごしていた。
「今日も晴れか」
僕は密かに喜んでいた。運動競技の中で一番得意な陸上をやるんだからな。
はりきって制服に着替えていた。
陸上競技以外はできないから、これで成績を上げておこう。
オール5をとるんだ。兄さんに負けないんだ。
電車に乗ると、ラッシュで息が上がっていた。
きつすぎる、もっと早い時間に家を出るべきだった。
1つ前の駅に着くと、人は流れるように車内から出る。
そして今度は倍の人が入ってきた。
「ん、きっつ」
「あっ!」
同じ学校の制服を着ている、女子。確か同じクラスの、滝谷春奈だっけ。
トンッと僕の胸に飛び込んでくる。
「ご、ごめんなさ・・・・・・って、あなた」
「ラッシュだし、仕方ない」
茶色の髪に、青い瞳。
ていうか女子特有の匂いってこのことか。香水ではないな、でも良いにおいがする。
・・・・・・俺の変態。
「渡辺君、だよね」
高校に入って、初めて名前を呼ばれた。
「いつも何読んでるの?」
僕は何も言わなかった、答える気もない。
「なんで、わざと人を避けるのよ」
!
僕は気がつくと、彼女を見ていた。
「あ、着いちゃった。また話そうね?」
僕は駅のホームで立ち尽くしていた。
誰かに、あんなことを言われるのは初めてだったんだ。