アリサ 3/9
3月吉日、桜の蕾が生まれた頃、高校の卒業式が行われた。
ショーとアリサ。京子たちが県立大学に決まった。
毎日、ショーはアリサの家に来ている。レストランインファントで、スタッフとして。アリサも、大きなお腹で働いている。
そんなアリサを頼もしく見ている、アリサママ。
ショーは、アリサを、お腹の子供をと、よけい、気をつかっている。
「大丈夫だから。」
ショーママが言うが、心配で心配で、パパらしくアリサのフォローに回っている。
レイコ。まだ赤ちゃんの首が落ち着かないので、赤ちゃんの籠に入れられて、インファントに来ていた。
ショーママとレイコママ。アリサママに構われて、喜んでいる、女の赤ちゃん。
レイコは、この時ばかりと、アケミにシズカにと、話を聞いてもらっている。
そして、高校最後の日。
式の前に、ママさん達が、アリサと仲間達をカメラで撮っている。
マタニティドレスに、制服を着たアリサ。
「もう少しで会えるの。」
汗をぬぐって言う、アリサ。
体育館で、中々と、学園長の話を聞いた、学生達。
ママ、パパは、感動している。
アリサを見る、仲間達。
神妙に聞いているアリサとショーを見て、黙った。
「卒業生のお言葉。」
スピーカーから流れる。
「海渡アリサ。鈴木ショー。」
例年では、ひとりだが、今年、アリサとショーのふたりになった。
父兄の中には、何故女の子がと言う人もいたが、出席順と言われ、納得した。
アリサとショー。
「…、この日を迎え、……。」
祝詞を述べる。
「卒業生代表、……。」
学園長に渡したショーとアリサ、ショーが先に降りて、アリサをサポートする。
「アリサ。」
「大丈夫よ。もう少しだから。」
汗が流れている。
座るとき、アリサが崩れた。
「痛い!」
ショーの腕に爪を立てる、アリサ。
ざわめく卒業式会場。
先生達が、アリサのところにきた。
「男の人、先生、遠慮して下さい。」
ストレッチャーが、会場に入る。
病院のドクター、ナースが、アリサのこと心配で、卒業式に来ている。
「ストレッチャーに。」
言う、ドクター。
ショーがアリサを、お姫様抱っこして、ストレッチャーに乗せる。
周りの女子学生達が、黄色悲鳴を。
「保健室に。」
言う、ドクター。保健の先生とドクター、ナース達が、アリサを見ている。
「ここで産みます。」
ドクターが決定した。
「アリサちゃんの身体、赤ちゃんを産む準備に入っています。」
卒業生が、在校生が、教室にいる。
父兄も、誰も帰らない。
ショーとアリサママ、ショーママ、アケミが、服を着換えて保健室に入った。
アケミの持って入ったカメラから、音声が教室に流れていく。
苦しい中、ショーはアリサの手を握ることしか出来ないのか、と、思った。
アリサママが、ショーを見て、
「ショーがそばにいることが、アリサの力になるのよ。」
汗を拭く、ショー。
「ショー。」
陣痛の中、口を濡らすアリサ。
保健室の中、誰かが言った。
「ショー君。結婚は?」
アリサが、薄目で見ている。
「まだです。」
ショーが。
「えぇ~!」
みんながショーを見た。
「赤ちゃん、父無し子にするの!」
怒るドクター。
アリサママが教会のシスター牧師にスマホしている。
「産まれた?」
シスター牧師が来て、ひと言目の言葉。
「まだ。」
みんなが首を振った。
「そう、じゃ、結婚式を挙げるね。」
シスター牧師の言葉に傾ける、ショーとアリサ。
陣痛の波が短くなっている。
シスターの言葉が教室に流れる。
ひとりで聞くもの。
好きな人とふたりで聞いている人々。
仲間が集まって、手を握っている人達。
ショーママが、結婚証明書をパパとカオルに渡した。
「すぐ走って。産まれる前に。」
ママの気迫に驚いたふたりが、市役所に走った。
レイコが、赤ちゃんとレイコママ、ユキコと来た。
「どうなの?」
アリサの仲間に聞く、レイコ。
まだ、産まれないのと、聞いたレイコ。
「アリサ。かわいそう。」
「こんなに苦しんでいるなんて。」
女の子達が言った。
「これも、お母さんになる為の儀式よ。」
レイコが、赤ちゃんにおっぱいを飲ませながら言った。
「かわいい。」
集まる、女の子達。
女の子にほっぺたを突かれながら、元気に飲み続ける、赤ちゃん。
納得する、女の子達。
教室で、廊下で、誰ひとり帰らない、学生達。
スピーカーを見ている。
いつも、ツッパッている学生達。
「なんで、ここにいるのよ!」
「終わったンだから、帰ろう!」
言う、学生が。
言うだけで、動かない学生。
「なんでいるのかな?」
夕日を見ながら、口走った。
「もう少しよ。」
「頑張って!」
スピーカーから聞こえる。
そして……。
産声を上げる、赤ん坊の声が。
教室に響いた。
ドクターが言った。
「元気な赤ん坊。」
「アリサ、ママに、おめでとう。」
「抱く?」
うなずく、アリサ。
ドクターがアリサのお腹に赤ちゃんを置いた。
「おはよう。私の赤ちゃん。」
「パパ、抱っこして上げて。」
ショーは、アリサに置かれた赤ちゃんを撫でながら、言った。
「産まれてくれて、ありがとう。」
「……。」
「よかった。」
ふたりで話す、イヤ、産まれた赤ちゃんと、親子3人で話す、アリサとショーがいる。
「なにを聞いているのかな。」
産まれたばかりの我が娘を触りながら、ショーとアリサが。
短くて、長い時を過ごす、3人。
アケミが、ママが、カメラにスマホに収めている。
アリサママが、ショーママが、レイコが、赤ちゃんを抱いている。
パパが、カオルが、抱きたいと、窓ガラスを叩く。
レイコが意地悪して、満身の笑顔で答えた。
アケミの腕によって、編集される、カメラ。
「京子さん。いる?」
担任の教師が、保健室から出て、探した。
「アリサさんが呼んでいるの。」
枕を背もたれにしている、アリサ。
「京子。」
「赤ちゃん、抱いて。」
言う、アリサ。
「いいの。」
うなずく、アリサが。
「ウン。ありがとう。」
抱いてほしいからと、危ない手で、赤ちゃんを京子にと、渡す。
ドクターが、介助して、京子が抱いた、アリサの赤ちゃん。
初めて抱いた、赤ちゃん。
「小さい。」
「こんなに小さいなんて…。」
泣きながら、話す、京子。
「京子の赤ちゃんも、抱かせてね。」
うなずく、京子。
保健室の外では、京子のママが、パパが泣いている。
スピーカーから流れる声に、泣き出す、学生達。
「なんでこんなに、出るンだよ!」
「涙じゃないぞ!」
言う、学生も。
保健室の廊下に集まった、教師の皆さん。
「今日の卒業式。1番、思い出に残るね。」
学園長が話をした。
「どうして?」
学園長を見る、学生達。
「卒業式に、結婚式に、あの子が産まれたのだから。」
「すごい!」
感動する、学生が。
「でも、ショーとアリサ。子供になんて言うのかな?」
「誕生日が、パパとママの結婚記念日で、高校の卒業式なんて…。」
言った女子学生を、みんなが見た。
「どうしたの?」
「なんでもない!」
「親が悪かったのよ。って、言うかもね。」
マイクが、聞いている。
教室で廊下で笑う人達。
赤ちゃんは、産衣を着て、アリサと病院に行くことになった。
アリサと赤ちゃんと、スマホに収めている。
アリサと3ショット、撮る学生が、卒業式の前に並んだ姿の写真を撮りたいと、言う。
アリサを真ん中にして、並ぶ仲間達。
「今日一日で、ひとり増えたね。」
「スイカのお腹が、へっこんだ。」
からかう、仲間。
ナースが、車イスを持って来た。
「初めてなの。」
アリサが座って、赤ちゃんを抱いた。
保健室で、廊下でアリサとショーにお祝いの言葉をかける学生達。
ショーが、ゆっくりと車イスを押す。
「ありがとう。」
いう、アリサとショー。
アリサママが、ショーパパ、ママが、後ろについて歩く。
学園長に、教頭に、教師に、お礼をいう、パパが、ママさん達が。
スマホで撮る学生達。
病院の自動車に乗り込む、アリサとショー。
「この子にこんなに祝ってくれて、ありがとう。」
アリサが、ショーが、お礼を言った。
大歓声が上がった。
それにビックリして、泣き出す、赤ちゃん。
学校を出た自動車をいつまでも見送る、学生達だった。




