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アリサ- 第3章  作者: 稔~minoru
2/11

アリサ 3/2

アリサが京子を連れて、彫り師のじっちゃんの家に行った。

9月の熱い日の日曜日、彫り師のじっちゃんは、女性の身体に刺青をしていた。左肩にボタンの花が咲いている。

アリサは京子は、ショーは、1時間ぐらい、正座している。

化膿止めの薬を飲んだお姉さん。

「どう、アリサ。」

と、聞いた。

「ウン。綺麗。ボタンの花が。」

鏡を見るお姉さん。

「足。楽にしなさい。」

彫り師の孫娘が、ショーに言った。

「痛い。」

ショーに、アリサ、京子が、足を崩した。

「で、ショーが入れるのか?」

彫り師のじっちゃんが聞いた。

「私です。」

アリサとショーの間に居る女の子が言った。

フリル付きのスカートを来ている、京子。

この場にふさわしくない姿でいる。

京子が話をした。

ボタンのお姉さん。浴衣を羽織っている。

孫娘のお姉さん。背中に、桜と女の人がいる。彫り師のじっちゃんの背中には、龍が登っている。

弟子の男の人は、鷲を背負っている。

じっちゃんはあぐらをかいている。ふたりは、正座している。

聞いた、じっちゃん。

「で!あんたの親は?」

「金はあるのかい?」

黙った、京子。

「あんたの気持ちはわかった。」

「わしも、これで食っているンだ。」

「あんたの親の同意書とか言うのを、持ってきな。」

「変な事、なしだよ。」

お姉さんが言った。

「それと、ローンに学割なんかないから。」

京子をにらんだ、お姉さん。

数日後。

タクシーが、止まった。

彫り師の家に京子と、両親が入って来た。

玄関で、母親が口早に話はじめた。

玄関で聞いていた弟子、上がるように進めた。

女の人が、座布団を出した。襖は開けられている。

老人が、上裸で、座っている。

浴衣姿の女の人が、裸になって、布団に寝た。

いくつもの針筆で、彫る老人。

色をのせた。

背中に、虎が描かれている。

「よし。ここまでだ。」

薬を飲む、女の人。

浴衣を羽織って、麦茶を飲む。

1時間はたっていただろう。

京子が正座して座っているので、父親も母親も正座した。

終わった時は、足を崩なかった。足が痺れて苦しんでいた。

「どうだね。刺青を入れるのを見るのは?」

聞いた、じっちゃん。

孫娘が次の予約を取っている。

京子は見ているので、大丈夫だったが、父親と母親が、血の気をなくしていた。

それでも、母親は菓子箱をとり出して、じっちゃんにお願いをした。

孫娘が菓子箱を開けて、じっちゃんの前においた。

弟子がお茶を入れている。

昔ながらのしきたりで、お客を迎える刺青師。その堅苦しさに、困る京子の両親。

孫娘が、菓子を皿に置いて出した。

「お母さんの話は、わかった。」

言う、彫り師のじっちゃん。

「では。」

母親が乗り出した。

「しかし、これは、わしのすることではないな。」

「彫るのが、仕事でな。」

「学校もろくに出てなかった。」

「腕ひとつで、生きてきたんだ。」

「カネさえもらえば18の娘さんでも入れる。」

「わしが言うことでないだろう。」

笑うじっちゃん。

「それでは! 話が!!」

孫娘が畳を叩いた。

「入れる入れないは、京子さんの自由。」

「そして、刺青を入れた責任も、本人が背負っていく責任。」

にらみつける、客人のお姉さん。

悲鳴を上げるお母さん。

「やめなさい。」

言う、じっちゃん。

「素人相手にすることではないよ。」

「京子さん。お帰り。アリサんとこのコーヒー飲んで帰りな。」

「うめえぞ。」

と、追い出した。

京子に、菓子をいくつか渡して。

レストランインファントでは、タトゥーを見せながら、動き回っている女の人が、何人か働いていた。

そして、お客の中にも。

「アリサ!」

飛びつこうとする京子に。

「まて。マテ。待て。」

「えっ?なぜ?」

両手に、クラッシュアイスの山盛りのマグカップと、サイフォンコーヒーを持っている。

目の前まで上げた、アリサ。

それをテーブルに置いて、サイフォンコーヒーを注いだ。

音をたてて崩れる後の山。

「それを見ているカップル。」

「ごゆっくり。」

アリサが言う。

「ありがとう。アリサ。」

「ショー君は? アリサ。」

聞く、女の人。

「休み。ショーのお兄さんとお出かけ。」

そして、目を細める。

アリサ。参考書やパソコンを直して、テーブルを明けた。

そのテーブルに、アケミが案内した。

ケーキセットを注文した京子の家族。

アリサが持って来てくれた。

エプロンを外して、京子の横に座った。

「どうしたの?」

京子ママが怒っている。

「なんだ。そんなことか。」

水を入れたコップと、カウンターに置いている、茹でタマゴを持って、座り直した。

「なんだとは、なんですか!」

京子ママがアリサに。

アリサママも、スタッフも、笑っている。

「私ら。」

アケミがアリサに抱きついて、話をする。

「じっちゃん。って呼んでいるけど、よく、高級外国車が止まっているよ。」

「よく、出前持って行ったとき、お菓子くれたよ。」

イスを持って、アリサの横に座った。

アリサは、茹でタマゴの殻を剥いている。

「菓子箱の下に、きんいろのお菓子あったけど、食べられなかったね。」

「じっちゃんと、おじさん。笑っていたけどね。お姉ちゃん。」

「あの時、食べられるお菓子の方が、宝物でさ。」

「たくさん、いつも、もらったよね。」

笑う、アケミとアリサ。

「それって!」

「なに?」

笑うふたり。

「この子、じっちゃんに頼んで、入れてもらったの。15で。」

「お姉ちゃんも入れたのに!」

と、姉妹ゲンカを。

ふたりの後ろに立つ、お姉さん達。

手には、業務用の、柄の長いお玉が。

ゲンカしているふたりの頭を叩くお姉さん達。

「ハイ。」

みんなが笑っている。

「まあ、そんな人だから。」

「おばさん。じっちゃんに頼んだんだろう。」

「えっ! なにを?」

タトゥーを指したふたり。

「その反対です。」

京子ママが。

「京子に止めさせるように、説得してもらおうと。」

京子パパが。

「だったら;じっちゃんに頼むのは、間違いだろうね。」

アリサが言った。

「じゃあ、海渡さんが。」

京子ママが言った。

「私? ムリムリ。入れた人間が、やめろって。」

「アリサに言うこと、おかしいよ。」

笑う、アケミ。

黙っている、京子。

「他人に頼むことではないでしょう。」

アケミが。

「お父さん。お母さんが、説得することでしょう。」

アリサが、言った。

「京子の気持ち。京子の家族の気持ち。」

「京子パパ、ママが、京子を説得しないと。」

「なんで、他人の私達が言わないといけないの。」

アリサとアケミが笑った。

「で、言ったの? 入れたいって。」

「そしたら、パパもママも、猛反対で。」

「どうして?」

「決まっているでしょ。娘が刺青を入れたなんて、わかったら、なにを言われるか。」

「どんな教育をしているのか、って言われるし。」

京子パパとママが、アリサママを見て言った。

「なんだ。京子ちゃんのこと、思っていないんだ。」

アリサが。

「世間体を気にしているだけか。」

スタッフのお姉さん達が見ている。

「かわいそう。京子。」

「京子のこと、思ってないんだ。」

つぶやく、アケミ。

「クラスの人をあてにしちゃあダメよ。」

スタッフのお姉さんが言った。

「私、入れたい。」

「だから、私、身体、売る。」

パパとママは驚き、店内は、大爆笑になった。

アリサは、イスから転げ落ちて、床に顔をうずめて笑っている。

「ウ、ウン。アリサの友達。面白い。」

「アリサ、仕事に戻りな。」

お姉さん達が、アリサの両手を引っ張って立たせた。

「あ~。笑った。笑った。」

「ゆっくり、考えて。」

エプロンをして、仕事に戻った。

「あの子、死ぬね。」

スタッフのお姉さん達が話している。

「親も親だね。」

言うお姉さんも。

「なぜ、笑うの?」

「ひとりで出来ないからさ。」

と、話すお姉さん。

タバコに火を点けて、煙を京子に吹きかけた。

「私もやっていたからね。」

「手、付けたら、あんた、死ぬよ。」

お姉さんの身体から、冷たいものが出ている。

「あなたは?」

ツバを飲み込んで、言った。京子。

「私。ウンがよかっただけ。」

京子に左手を見せた。小指が無い。

「死ぬところを助けられたんだ、兄さん達に。」

「その人達の紹介で、ここにいるの。」

「病気になって、死ぬ人もいる。」

「京子さんだっけ。アリサから、話は聞いているよ。」

「でも、入れたら、消せないよ。」

「一生、後悔することになるよ。」

言う、お姉さん。

「アリサは?」

「その覚悟の上で、したんだから。」

立って、仕事に戻った。


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