アリサ 4/1
4月。
青空の中、桜の花咲く、その日。
アリサとショーは、大学の入学式に来ていた。
アリサの持っている籠に、赤ん坊が寝ている。
退院してから、アリサとショーは、インファントでいた。
レストランで、赤ちゃん用の籠におとなしく、入っている、ふたりの子。
おとなしくしていると思えば、泣き出す、我が子。
18歳の新米ママとパパが、よって来る。
それを見ている、お客さん達。
「この店で、また赤ん坊の声を聞くとは。」
目を細めて言う人も。
「今度はどっちだ。」
パパがお尻をかいだ。
「臭!」
奥に連れて行く、パパ。
少しして、アリサを呼ぶ声が。
「タオルくれ!」
笑うに笑えない、お客さん。
いつ起こされるかと、アリサもショーも、疲れている。
モーニングに来る、ショーママとレイコ、籠に寝ている赤ちゃん。
ふたりを見ている、ショーママとアリサママ、そして、レイコママ。
アリサママのママが、孫を見に来る。レイコのママも同じで、来ている。
3人のおばあちゃんと、ふたりのひいおばあちゃんに任せて、アリサ、ショー、レイコが2階に上がった。
その間も、アリサの仲間達が来て、赤ちゃんと遊んでいる。
「私のときはね。」
赤ん坊の苦労を話す、おばあちゃん達。
「そうなんだ。」
聞きながら、赤ちゃんからオシッコをかけられる女の子たち。
「あんたもかけたのよ。ママに。」
ママさん達から言われた、アリサの仲間達。
「赤ちゃんって、ミルク飲んで、ウンチして、大きくなるのよ。」
笑う、お客さん達。
「笑っているけど、あなた達だって、赤ちゃんの時は、飲んで、ウンチして、ママをパパを困らせて大きくなったのよ。」
「帰ったら、聞いてみなさい。ママに。」
言う、おばあちゃん達。
「ひとりではたいへんなことだけど、アリサちゃん、赤ちゃん、みんなに大事にされていいわね。」
言うママさんに、子供たちが、
「おままごとしているみたい。」
赤ちゃんにと、女の子たちがミルクを飲ませている。
「遅いね。」
「飲んでいるのかな?」
哺乳瓶を上げてみる女の子たち。
赤ちゃんが、突然おっぱいなくなったので、泣き出した。
笑って見ている、ママさん達。
「遅いね。」
「疲れた。」
誰かが飲みやすくするために、哺乳瓶の蓋を緩めた。
緩め過ぎた。
赤ちゃんの顔にかかるミルク。
「ハイ、ハイ。」
おばあちゃん達が、赤ちゃんの顔を拭いている。
女の子たちは、硬くなっている。
笑って話す、おばあちゃん達。
「みんなするのよ。」
「また、ミルクお願いね。」
喜ぶ、子供たち。
そして、迎えた入学式。
アリサママが、ショーママが、一緒に来ている。
アケミが、カメラをまわしている。
京子たちも加わって、桜の並木道を歩いている。
多くの学生とともに。
赤ちゃん連れた人が、スーツ姿で、歩いている。
誰かな、言う声が聞こえる。
ショーが、桜をちぎって、赤ちゃんに見せた。
見えているのかして、笑っている。
私も。と、仲間達が、籠に入れた。
「まるで、桜のお姫様みたい。」
アリサが手を叩くと、笑う赤ちゃん。
大学講堂に入ったアリサたち。
赤ちゃんをおばあちゃん達に預ける。
学長からの祝いの言葉。
その後、名前が呼ばれた。
呼ばれた学生は、立っている。
「…、海渡アリサさん。」
アリサが呼ばれて立った。
「…、海渡ショー君。」
周りがざわつく中、ショーがアリサの横に並んだ。
「名字換えたんだ。」
仲間の中から、聞こえる。
式も終わりに近づいたとき、赤ちゃんの泣き声が響いた。
慌てて、走る、アリサとショー。
何故、赤ちゃんが。
誰の赤ちゃん?
聞こえる中、アリサが、おっぱいを飲ませている。
おばあちゃん達、シートで目隠しをしている。
「飲んでる。飲んでる。」
アリサママが言う。
「君。」
と、来た、大学関係者。
講堂のみんなが見ている。
「赤ちゃんなんか連れて来て。」
「この子。私達の子供です。」
服を整えたアリサとショーが言った。
ショーに抱かれて、背中を叩かれる、赤ちゃん。
「しかし、今日は大学の入学式ですよ。」
「ハイ。先ほど、学長から、名前呼ばれました。」
「海渡アリサです。」
「海渡ショーです。」
笑うふたり。
「この子が、海渡エリカです。」
ショーが言った。
「私達、高校の卒業式の日に、結婚して、エリカが産まれたのです。」
静まり返った講堂。
「私が、姉です。」
レイコが、ショーの頭をクシャクシャにして言った。
赤ちゃんを抱いた人が。
「そして、私達があの子のおばあちゃん達です。」
3人のおばあちゃんが元気いっぱいに挨拶した。
「私がこの子のおばさんなんです。」
カメラを持った女の人が、挨拶した。
「あなた、海渡アケミさん!」
関係者のひとりが、叫んだ。
「久しぶり。先生。」
「妹夫婦、エリカ共々、よろしく。」
挨拶した、アケミ。
周りから、聞こえてくる。
なんで、卒業式が、結婚式で、赤ちゃんの産まれた日なの。
ざわつく会場の中、笑う人々が。
「さすが、アケミちゃんの妹なら、してもおかしくない。」
「なんでお姉ちゃんの妹ならって?」
「何したの? アケミさん。」
みんながアケミを見ている。
「な、何もしていない!」
言うアケミに、関係者は笑った。
「アケミさんのお母さんは?」
聞く人が。
「私です。」
「久しぶり。」
「先生!」
「あなたが赤ちゃんを連れて、授業受けに来たときは、ビックリしたけれど。」
「そうなんだ。」
「私、あんたのオムツ換えたんだよ。」
アケミを見る、関係者。
「先生。目が怖い。」
「そうか! あの時の赤ん坊がな。」
「抱いたときに、オシッコかけた女の子がな。」
学校長が来て言った。
学校長も加わっての話。
多くの人達が、話を聞いている。
その中、学校長に怒る人がいる。
「早く入学式を済ませて下さい。」
「みんなが帰れません。」
「それから、海渡アリサさん。」
「ハイ。」
「あなたのお母さまやお姉さまみたいに、学校にゴタゴタ持ち込まないで下さい。」
アリサは、ママとアケミを見た。
「ハイ!」
言うと、離れた、女の人。
「お姉ちゃん。なにしたの?」
目を泳がす、アケミ。
入学式。休暇が入ったが、終わった。
アリサはエリカを抱っこして、ママさん達と歩いている。
楽しい学校生活を送れそうだと思いながら。