アリサ3/1
作品は、原稿用紙は、完成しています。
何年か、本箱の中で寝ていた、アリサとショーの物語。
16歳。高校1年に知った、アリサとショー。
ふたりが、話を書いてくれました。
そして、高校3年に、アリサの身体に新しい命が生まれました。
この作品を読んでいただいた皆様、アリサとショーを暖かく見て下さい。
アリサとショー達は、3年になった。
夏休みも終わって、海水浴客も、少なくなった。
でも、土日は、まだ混む海水浴場。
学校では、実力テストが終わって、上位成績者の発表が終わった数日後、ショーは、教室に入って来た。
「おはようさん。」
黒く焼けた顔で、アリサに挨拶をする。
「ショー!!」
アリサはショーの腕を取って、教室を出た。
見送った、教室の学生達。
女子トイレに入ったアリサとショー。
「ねぇ! 今からショーと話しあるの!」
「だから、出ていって!」
カガミの前の女の子達、アリサの顔を見て、出て行った。
アリサのただならぬ姿に、巻き込まれたくないと。
ドアをおもいっきり、力強く、叩いて、開けた、アリサ。
ドアが、音をたてて鳴いた。
ドアと壁の間に挟まった、女の子。
鼻をさすって、涙が流れた。
逃げ出すことに失敗した娘が、ドアに持たれて聞いている。
「ショー。出来たみたい!」
「なにが?」
トイレの中に響く、アリサとショー。
「なに?これ?」
ドアを開けられない、女の子達。
「鈍いな! 私、泣いちゃうぞ!」
「もしかして?」
「そう。そのもしかなの。」
「アリサ! やった!!」
「キャー! 目が回る!」
「で! 男の子? 女の子?」
「ショー。気がはやい!」
「私の中に、命が出来たの。ショーと私の。」
「で!」
「後、6ヶ月ぐらいかかるよ。」
「今日、帰り、一緒に来て。」
「OK!」
言う、アリサとショーが強張った。
トイレのドアがゆっくりと開いた。
女子学生が、見ている。
「うふふふふ……。」
アリサの遊び仲間が、手を猫にして、見ている。
「ミァ!」
「待ちなさい!」
ドアを開けて、走るミァ。
「待ちなさい!」
「待て! ミァ!」
いつも、アリサとショーが朝のストレッチしている。そこに参加している、ミァ。
足が速い。
「待ちなさい。」
ミァが、校庭に逃げようと、階段を降りた。
教室に急ぐ学生達に、ぶつかって、アリサとショーに捕まった、ミァ。
アリサとショーの怖い顔に迫られて、約束させられた、ミァ。
トイレのドアが、ふたつ開いた。
「いった?」
「行った!」
「きいた?」
「聞いた~!」
「アリサに子供が出来たって!」
「男の子かな?」
「女の子!」
「これって!」
「大ニュース!!!」
トイレから走る、女子学生ふたり。
「もういいでしょう!」
「ぜったいいわないから。」
「ダメ! ミァ。ニュースメーカーだから。」
「ミス、スピーカー!!」
ショーが、怒っている。
教室に入った、アリサとショー。
仲間から、拍手がおこった。
「おめでとう!」
「なにが?」
教室を見る、アリサとショー。ミァ。
抱きつかれる、アリサ。
「ショー。おめでとう。」
誰かが、誰もが、ショーの背中を。
「アリサ!おめでとう!」
「いつ、生まれたの?」
「ねぇ。男の子?女の子?」
他のクラスの女の子達も来ている。
「どうして、知っているの?」
「みんな、知っているよ!」
座っている、ふたり。手を振って。
「ア リ サ。」
笑っている。
「カオリ。シズカ。」
ミァと同じ、アリサの遊び仲間。
「トイレで大はしゃぎだったね!」
「キャー!目が回る~。」
シズカに顔を近づける、アリサ。
「で! 男の子? 女の子子?」
「シズカ! もう一度、小学校に行きなさいよ。」
ひきつって笑う、シズカにカオリ。
「昨日の今日で、生まれる訳ないでしょう!!」
「今、心臓が動いているのよ。」
「って、卒業式、終わった後だな。」
「えっ?」
「なんだ!」
ショーから離れた、人達。
倒れる、ショー。
いくつものモミジで、背中じゅう真っ赤になっている。
「みんな!やりすぎ!」
怒るアリサに、誰がしたんだと、聞く学生が。
「鈴木君! 海渡さん! すぐ、職員室に来なさい!!!」
スピーカーが、壊れるぐらいの声が響いた。
「ショー。大丈夫?」
アリサが怒っている。
「大丈夫。行こうか!」
アリサとショーが職員室に歩いた。
クラスの仲間が、学生達が続いてくる。
職員室に入ったアリサとショー。その後に、学生達が続いて入った。
「ここは職員室ですよ!」
教頭先生が、ヒステリックに叫んでいる。
「だから? 私達、日記を取りに来たんです。」
言う、女子学生が。誰かが、窓を開けた。
教師が、にらんでいる。
教頭のうなる声が、学校に流れた。
ドアを閉めようとする、教師達。ドアを開けて、職員室に入った学生達。
教頭と担当、アリサとショーの間に、マイクを置いた学生が。
教師がにらんで怒る声が、学校中に流れた。
「海渡さん。あなた。お腹に子供が、に、妊娠したと、言ったそうですね!」
教頭が、言った。
「ハイ。俺の子供です。」
ショーが答えた。
手をつなぎながら。
笑って話す、アリサとショー。
「で、いつ、病院に!」
「今日、学校の帰りに行きます。」
「ショー。大丈夫?」
アリサが聞いた。
「えっ? なにが?」
「産婦人科。女の人ばっかりよ。」
「そうなの? でも、1番若いのはアリサだし。」
「ほかの人に色目使ったら、ダメよ。」
と、教頭の前で、ふたりの世界に入っていったアリサとショー。
「いいかげんにしなさい!!」
机を叩いた、教頭。
「キャ!」
「オオコワ!!」
机から、手が離れない、教頭。
ショーに抱きついた、アリサ。
「で! いつ、おろすの!!」
「えっ?」
「えっ?!」
アリサが、ショーが。
「なにを?」
ショーが質問した。
「そのなかの子です。」
「病院に行くんでしょう。」
「なんで、おろさないといけないのですか?」
ショーが聞いた。
教師が聞く。
「産むつもりなの?」
「ハイ。」
「ハイ!」
ショーが、アリサが、言った。
職員室が、静まり返った。
職員室にいる、教師に学生が、アリサとショーを見る。
教室の学生達は、スピーカーからの声を聞いて、顔を見回した。
「あなたがたねえ!」
教頭が、怒り出した。
「学生でしょ。高校生でしょ!」
「育てられるの?」
「生活できるの!」
「なぜ? 学生だからですか?」
「なぜ、おろせと、命令するのですか?」
ショーが怒った。
「私は教師よ! 多くの事を見てきた。」
「子供を産んだ学生もいる。」
「でも、生きる事が、子供を育てる事が、大変なのよ!」
「私達、親に話します。」
「それでダメなら、ふたりで働きながら、育てます。」
「そんな事、うまくいくと思っているの?」
にらみつける、教頭。
「俺は、アリサに産んでもらいたい。」
「アリサに、人殺しなんかさせたくない!」
ショーが言った。
ショーを見る、教師達に学生達。
「何言っているの! 今なら、法律では人殺しにならないは!」
「命を宿した時から、アリサのお腹に俺との子供がいるんです。」
「アリサに、ママに、子供殺しをさせたくないし、子供をおろすって事は、母親も傷つける事でしょう。」
「身体も、心も。」
ショーが言った。
「ショー、よく言った!」
「アリサが選んだ人だ!」
「おふくろ!」
「ママ!」
「どうして?」
「アリサちゃんのバックアップは、私達ふたりがするから。」
ショーママが言った。
「ママさん。」
ショーを指さして迫る、ふたりのママ。
「ショー! アリサちゃんを泣かしたら、承知しないから!」
「わかった! 孫をきちんと育てんのよ!」
汗が落ちた。
「ショー、ガンバッテ!」
アリサがショーの背中を押した。
「ハイ! ママさん。おふくろ。」
「と、言うことだから、アリサちゃん、私達の孫を産んでもらいます。」
教頭の机を平手で叩いた、ふたりのママさん。
そして、固い握手を。
その中、ひとりの女の子が叫んだ。
「何故、なぜ、そうなるのよ!」
京子が泣き崩れた。
「私の時は、先生も、ママも、アキラも、おろせ、おろせと言っていたのに!」
「アリサの時は、産めなんて!」
泣き続ける、京子。みんなが見ている。
そして、みんなが知っている、京子の秘密。
アリサママが京子を抱いた。
「私も病院に行ったの。」
「ママが先生に言ったの。」
「『高校生なんです。今すぐ、中絶してください。』」
「心も痛かった。身体も……。」
「なのに、アキラ。ほかの女と、話して、遊んで…。」
「私。生きたかった。産みたかった。」
「なのに…。なのに……。」
アリサママが京子の背中をゆっくりと、ゆっくりと、さすっている。
「私もアリサみたいに強くなりたい。」
言う、京子。
アリサを見る。
その先に、制服から見え隠れする、バラのタトゥーが。
アリサママを突き飛ばして、アリサの左腕にしがみついた。
「タトゥー! そうね。アリサが強いのは、タトゥーを入れたから!」
「やめなさい。一生後悔するはよ。」
教頭が止めた。
「だから!」
机のハサミを持って教頭に迫った。
「だから!」
教師達に刃物を向ける京子。
「誰か! 止めて!」
アリサが手を握った。
耳元でつぶやいた。
「本当?」
「ウン。でも、今日じゃないよ。」
「彫り師のじっちゃん。今日はいないから。」
「聞いて見る。」
「いつがいいか。」
「ハイ。」
「だから、京子もタトゥーを入れるって事、調べて、よく考えて。」
「ウン!」
抱きついた、京子。
「誰か、やめさせなさい。」
成り行きを見ていた教師達が、止めようとした。
「でも、先生。アリサ止めなかったら、どうなっていたか考えた?」
ミァが、仲間たちと見ている。
「京子。あれからずっとヘンだったのよ。」
「クラスから離れて、アキラも、京子に話ししなくて。」
「誰も近づかない。」
「誰も話ししない。」
「先生も、京子から、逃げていたのでしょう!」
「怖いものを見るような目で、京子を見て!」
「もしかして、京子、崖に立っていたかも。」
「京子!どんな気持ちで、学校に来ていたと、考えたこと、ありますか?」
「アリサが、京子と話ししなかったら、どうなっていたか?」
「先生も、経験あると思います。」
「子供がいなくなったときの気持ちが。」
「アリサのレストランで助けを求める人。」
「教会の人になっているかも。」
誰かが、言った。
「教会?」
聞いた、教頭。
知っているものは、黙っている。
「何があるの?」
「骨です。」
「崖から飛びこんだ人の、自殺した人の遺骨。」
「京子が、その中のひとりにならないようにと、いつも、見ていたんです。」
「子供を殺すということは、それだけ大きな問題なんです。」
「学生だからと言って、簡単にいわないでください。」
それから、毎日、タトゥーの話ばっかりする京子。
昼休み、アリサとショーの所で、お弁当を開いた、京子達。
アリサの中に新しい命があることを知ったクラスメイトは、アリサの仲間たちは、アリサと、弁当を食べるようになった。
教師達も、何人か、教室に来て、食べている。
ある日、京子に聞いた。
「京子。あんた。金、有るの?」
「えっ?」
「タトゥー。高いよ。」
「それに、針で入れるので、痛いよ。」
アリサが言った。
「アリサ。したんでしょう。タトゥー。」
アリサを見る、京子。
「ローン。通るかな。」
京子を見る、アリサ。
「あんたねぇ!」
「学割は?」
みんなが京子を見ている。
「学割なんてあるの?」
教師が、真面目に聞いた。
「ないない。」
「じっちゃん。腕ひとつで生きてきた人だから。」
「ローンなんか、できないよ。」
「学割なんかないし。」
「第一、学生で入れる人って、いないよ。」
アリサが言った。
アリサを見る、クラスメイトに、アリサの仲間たち。
「アリサ! 入れたのに?」
「ン? 私は、入れたかったの。」
「いつも、見ているから。」
「アリサ。いくらかかった?」
アリサの仲間が、聞いた。
「いわない!」
「値段なんか、ないよ。」
「それって、問題よね!」
教師が言った。。
「いろいろあるみたいよ。」
「どんな絵柄か? 」
「何回も、書いて、ダメになっているから。」
「墨の色は? 全身か、腕だけか?」
「ヤのつく人達が来るぐらいの有名人なんだから。」
「かかるよ。何ヶ月も。」
「よく知っているのね。」
教師が嫌味を言った。
「ウン。お得意様だから。」
ショーを見るアリサ。
「よく、弁当、持っていくから。」
「お菓子。もらって帰るの。」
笑う、アリサ。
「菓子箱に、小金色の菓子が入っているんだけど、子供の頃は、袋のお菓子が、好きだった。」
みんなが見ている。
「だって、あれって、ものすごく固いのよ。」
「美味しくないし!」
「じっちゃんも、姉ちゃんも、笑うし。」
アリサの話を聞く、学生達。
「それに、饅頭、たくさんもらえたし。」
「じゃ。アリサの家の饅頭って。」
聞く、シズカ。
「名店の和菓子屋さんのよ。」
「美味いんだよ。アリサのお茶休憩。」
「でしょう。ショー。」
「スーパーの菓子、食べられなくなる。」
なぜか、タトゥーから、和菓子になった話。
「と言うことだから、ローンも、カードもダメだから。」
京子に言った、アリサ。