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一目惚れでした

 わたくしの初恋は突然の事でした。


 お父様の命令で勇者召喚の儀を行い、神に選ばれた四人の男女。その中で唯一の男性であるアキト様。わたくしは、彼の顔を見た瞬間、恋に落ちました。これが俗に言う初恋というものなのですね。黒色の短髪に、身長は少し高めながらそれ以外これといった特徴のない殿方。ですが、瞳だけは違いました。キリカ様たちを庇いながら、どんなことがあっても三人を絶対に守ると決意に満ち満ちたものでした。


 愛の女神様に選ばれた者は自身の愛の大きさによって力を強める。だから、召喚された者の中に男性がいた場合は誘惑しろと、お父様やお兄様に言われていました。それまでは、そんなものしたくはないと突っぱねてきましたが……


「絶対にわたくしのものにする」


 小さく呟いた私の誓いは誰にも聞かれることなく空気に溶けていきました。


 それからは大変な日々でした。彼らにとってはわたくし達は誘拐犯のようなものです。だから、わたくしは誠心誠意をもって接することにしました。どんな些細な悩みも聞き、時には暴力をふるわれることもありましたが、神に選ばれたとは言えまだ少女なのです仕方がありません。


「妹がすまない」


 そう言って回復魔法をかけてくれる愛しい人。わたくしはこの時まだ想いを伝えていませんでした。だって、召喚されてすぐに私が男女の関係を迫ったら美人局だと思われるに決まっています。ですので、口から出そうになる想いを飲み込む日々でした。


『アキトが魔王を倒しましたよ』


 わたくしは神に選ばれた巫女。才能があったおかげか一ヶ月に一度ほどラヴィオン様のお声を聞くことができました。そのおかげでわたくしは誰よりも早く、勇者パーティーが魔王討伐を遂げたことを知りました。わたくしはすぐ王都にその報を知らせました。そして勇者パーティーから届いた手紙との情報をあわせ、魔王討伐記念のパレードと式典を行うことにしました。

 わたくしはお父様の後方に立ち皆様を待ちました。久々に見ることができるアキト様の顔に想いを馳せ、遠くから少しずつ歓声が近づくたびに鼓動が早くなるのを感じました。正直、馬車に乗ったアキトの顔が見えた瞬間に倒れるかと思いました。大好きすぎて辛いです。


 でも、一度もわたくしの方を見てくれることもなく、そのアキト様の視線はずっとキリカ様の方を向いていました。時折、お兄様とキリカ様を見比べて辛そうな顔をするアキト様。ああ、わたくしが抱きしめて慰めてあげたい。

 しばらくそんなアキト様を堪能していたら、話は変な方向に進み、最後はラヴィオン様降臨という奇跡までおきました。ラヴィオン様が天界にお帰りになられたすぐに私に神託が下りました。それは対魔王討伐にてアキト様の身に起きたこと。


 私は怒りに震えました。優しいアキト様は、誰にもその事を伝えないでしょう。でもわたくしは知ってしまいました。わたくしは勇者を、魔導師を、戦士を、そして騎士を許さない。なにが夫になりたければ私を力でねじ伏せてみろですか。女神様が約束の遂行をお父様にお命じになられていなかったら、わたくしは加護の力を尽くしてあの場で暴れていたでしょう。


 この際宣言いたしましょう。

 アキト様の意志など関係ありません。わたくしが願うからこそ、アキト様には絶対に幸せになってもらいます。それは勇者も国も全部敵に回したとしても!


「アキト様……お慕い申しあげますわ……」


 現在わたくしがいるのはアキト様の部屋。アキト様を押し込みベッドの上に倒してやりました。

 アキト様の上にまたがりわたくしはネグリジェの裾を乱暴に掴みました。このまま持ち上げれば私を包むものは一つだけ。さようならわたくしのハジメテ……


「ターシャいきます!」


 破けてしまうじゃないかというほどの勢いで振り上げた腕。下から突き刺さる愛しい人の視線。


 ああ……なんて可愛い表情なのでしょう……


 その感情を最後にわたくしの記憶は途絶えた。

 冷たい棺桶の中で一晩過ごしたわたくしは翌日風邪をひいたのでした。

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