ホラーで 恋、崖っぷち
「ハァ〜〜ァ」
相変わらずの朝だった。
昨日と変わったコトと言えば
ちょっと肌寒さを感じる季節が来たコトくらい。
「眠…」
眠たい目をこする
それを見る者は誰もいない
すでに登校した生徒が何人かいるハズなのに
廊下は奇妙なほど静かだった
「うわー…」
寒さに背筋が凍る
『なんかでそう…
幽霊とか幽霊とか幽霊とか……』
微かな恐怖に肩を震わす
早く教室に行こうと早足で歩く。
「あ。」
私は鏡の前で足を止める
寝グセ…
キュッ
蛇口をひねると冷たい水が出てくる
手をかるく濡らして
髪を撫でつける
「…!」
ハッと気付く
鏡の中
私と重なるようにうつる
もう1人の誰か…
私の真後ろにいる
その人の手が持ち上がる。
『まさか本当に幽霊…!!?』
肩に手がポンとのる
ビクッ
大げさなほど体が揺れる
ギュッと閉じた目を
そーっと開ける
「あ…」
鏡越しにうつったのは幽霊じゃなくて
加藤君だった。
にやにやしながら
私を見る。
「加藤く…ん?」
放心状態で呆然とする私を
あざ笑うかのように
「何驚いてんの?」
と静かに言う
「べつに加藤君こそ どーしたの?」
「… ほらよ」
手にしていた本が鞄にのる
「あ。ありがと」
本当に持ってきてくれたんだ…
やたらと心拍数が上がるのは
この際 気にしないでおこう
耳の奥の方でドクドクと鳴り響く心臓
「じゃ、貸し出し料金300円ね」
ハ?
場が一気にしらける
100年の恋もさめるであろう
「うん、分かった」
笑顔を作り教室に逃げる
あっけない
あまりにも あっけない。
加藤君への想いは一気に崖っぷち
「ハー―…」
借りた本はホラーもの
『ホラーとか…マジ無理…』
眉間にシワが寄るのを実感
「もう終わるんじゃね?」
心の内に感じた恋の終わり
口に出すと
空しく虚空に消え失せた