5話
俺はその後、ヨウエイが戻ってくるまで考え続けたが、
この島をでる方法は思い浮かばなかった。
諦めかけているとヨウエイが戻ってきて俺に乗り込んだ。
頭を打ったらしいが、大した怪我ではないようだ。
<どう?いい方法見つかった?
「うん。多分大丈夫」
え、マジで?
俺より頭良いってことじゃねそれ?
<・・・どうするんだ?
「まず、どこから水が入ってくるか確かめよう」
<おう・・・
海に入って確かめる。
まずは首から下だ。
顔だけ海から出している。
昔のアニメとかドラマだと、温泉に入ってる感じかな?
確認したら、両腕の手首辺りから水が入ってきていた。
ヨウエイは陸に上がって俺から降りる。
すると、何か膜のようなものを持ってきた。
<それ何?
あ、声聞こえないんだった・・・
「兎の皮を何重にもした布。これを手首あたりに巻いてと・・・」
おぉ、説明してくれるヨウエイ君偉い。
俺より頭良いかもだし・・・
もう、お前に教えることは何もない・・・!
ヨウエイは、俺の手首あたりに布を巻き終えると、
再度俺に乗り込んだ。
<これで海に入って、水が中に入らなきゃ良いってことだな?
「うん。問題なかったら、今度は頭もつけてみる」
<りょーかい
海に入った後、特に問題はなかった。
いや、少しずつ水が入ってるな。
「ほとんど浸水してないみたいだし。このまま頭も付けようか」
<おうよ
そして完全に海に潜る。
全身海に入っているのは、生まれて初めてだ。
おっと・・・また浸水してきたな。
<あー、そういや変なジジイに頭も傷つけられたっけ
純粋水爆ってあんな感じに弾発射できるんだろうか?
「とにかく、ここも塞ぐね」
<あいよ
また陸に上がり、頭にも布を付ける。
手首からも少し浸水していたため
念の為に、鎧の外と中の両方に布をつけた。
<よっしゃー!テストじゃ!
「テストってなに?」
<さぁ、実験を始めようか・・・ってことさ
「成程」
これで海に潜ってみた。
おぉ!こりゃすごい!
<水が完全に入らないな。布と俺をどうやってくっつけてるんだ?
「粘着性の葉っぱと、鳥の糞だよ」
<・・・
マジかよ!
<後で洗ってね
「え?・・・うん」
------------------------------------------------------------
鎧さんの補修を終えたあと、
僕は隣島にいる友人と別れの挨拶をすることにした。
友人たちは、僕が来るのを待ってくれていたようだ。
狐なのに、まるで犬のように
「ピィーピィー」
と甘えた鼻声を出している。
僕たちは、30分程度草原を走り回った。
そして皆で一緒に草原で寝る。
青い空がとても気持ちいい。
この景色とも別れるのかな・・・
そう思うと、なんだか寂しい気持ちになる。
「なんで僕は、鎧さんとすぐに仲良くなったんだろう?」
ふとそんなことを考える。
あの時のケレンさんに似ていたから?
未来人だから?
・・・多分人間の姿をしてないからかもしれないけど、
結局、自分でもよくわからない。
それが結論だった。
「でも、この島を出たいと思ったのは初めて」
出てからどうするか。
それはまた考えればいい。
かつては人間を食べ、
その後いじめられた世界に行くのは確かに怖い。
でも、ケレンさんのように、探偵をやってみたいと思った。
それなら行動しないと・・・
「だから、僕は行くね・・・」
狐達に別れを告げるためにそう言った。
彼らも、自分の住処に帰っていった。
きっと『さようなら』って気持ちは一緒だと思う。
さようなら。初めて食べなかった友達。
----------------------------------------------
「ごめん。そろそろ行こう」
<おう、挨拶は済んだか。そろそろ昼になるな・・・
僕たちは北東に進み、イタールアに向かう予定だ。
恐らく、海の中を2時間程度歩くだろう。
<さて、行こうか・・・あれ?
「どうしたの?」
<いや、なんか、俺のスペック変わってる・・・
『鎧inヨウエイ 水中ver0.1
身長200cm
重さ500.9kg
パンチ力1.1t
キック力2.6t
100m8.7秒
ジャンプ力15m
水中移動速度2ノット/時速3.7km
ヨウエイと鎧が意思疎通可能である
ヨウエイと鎧の直感が統一化される
視力3.5
水中視力2.5』
こりゃすごい。
でも、地上と水中の視力が別って何か意味あんの?
まあいいか。
<パンチ力が100kg弱くなったけど、
<海の中を移動できるようになってる
「え、それってすごく弱体化してる?」
<うーん・・・あんま変わんないと思う
<まあ、良いか、さっさと行こうぜ
俺達は島を出て、イタールアに向かう旅に出た。
ようやくまともな街に行ける。
そう思うと、まるでパズル格闘の子みたいに心が踊る!
西暦1次2017年だっけあれ?
ん?なんか島から聞こえるような・・・気のせいか。
-----------------------------------
畜生。
海賊船が壊れたのは俺のせいじゃない。
なのに俺が犯人みたいに扱われて、海に投げ落とされた。
なんか、海の中で変な街についたけど、すぐに追い出された。
あんな街が海の中にあるなんて聞いたことなかったが、
誰にも言う事はできない。
「ヒフヒョオオオオオ!」
畜生とも言えねぇ・・・海賊なんて皆そんなものだが・・・。
爪がはがれるのも普通だし、足や腕がないのも普通だ
あれで生きていける奴らは、ほんと化けもんだよ。
妖怪なら海賊やれるんじゃないか?
でも、この島なんなの・・・?
そこら中に生活感が漂っているような・・・。
動物の骨で作られたかのような食器、
イカダの作りかけ、
動物の羽で作られた布団・・・
原住民がいるのだろうか?
「カラカラカラカラカラ・・・」
なんか怖い!
後ろから蛇の鳴き声みたいなのが聞こえる・・・。
いや、あくび?
もうやだ!帰りたい!
あ、カヌーがある!
やった、これで帰ろう!
あ、でもその前に、食料と水を探さないと・・・
「ヒフヒョオオオオオ!」
「カラカラカラカラカラ・・・」
こうして、元海賊のサバイバル生活が幕を開ける気がするのだった。
めっちゃ日が開いた・・・
ちょっと最近忙しくなって、気付いたらこうだよ・・・。