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2話

周りはとことん汚い場所だったと思う。


自分ではそう思ってないけど、

道を歩く大きな人は俺たちを「クサイ」ってよく言う。


とーちゃんは僕がもっと小さい時に死んだ。

いつも叫んでばかりいたけど、

僕には優しかったから悲しかった。


友達はたくさんいる。

だから動かなくなったやつを食べる。


そうすれば、僕達はそいつの力をもらえるんだ。

そうやって、友達もいなくなっちゃった。


でもある日、道にいる大きな人が僕を食べようとしてきた。

でも、僕を食べようとした人より少し小さい人が

『十』の形に『|』

をつけたみたいなのでその人を突き飛ばした。


その人は僕を食べるのかと思っていたら


「俺は探偵だ。そんなことはしない。

けど、もう君はここにいるべきじゃない。

君は孤児院に引き取られるんだ」


何かを話している。


「あぅー。あー」


真似してみた。

そしたらこの人の顔が歪んで、他の大きな人が僕を運んだ。



その後僕は、言葉を覚えた。

あれから1年だから、僕が5歳の時だ。


------------------------------------------------------

あの後僕は、孤児院に入れられたが、いじめを受けた。

それはそうだ。喋れないんだから。


いじめというのは多分

『皆に悪いことをしたやつ』

『皆と違いすぎるやつ』

『皆と仲良くしないやつ』が標的になると思う。


僕の場合は『皆と違いすぎるやつ』だ。


「ねぇねぇどこから来たの?」

「あー」

「なんだこいつ!気持ち悪い!」

「キモこいつ!皆で鬼ごっこしようぜ」


確か、孤児院に来た初日は確かこうだったはずだ。

その時は言葉がわからなかったが、今はわかる。


その後僕は、言葉を話せるようになった。

だけど誰とも話さず、ただただ本を読むだけの根暗な子供になった。


でも僕の人生を、可哀想だと思う人間はいない。

なぜなら僕は人を食べたから。


そして周りの人間を、羨ましいとは思わない。

だって誰かと一緒にいるということは、

人に裏切られるか裏切るかということだから。


だが、あの孤児院には居たくないと思った。

僕は孤児院に入って1年たった日、脱走しようと思った。


脱走した後どうするか。


子供でも、家出するときは冷静になるって

書いてた本を読んだことがある。

多分本当だ。


だって僕がそうだから。

脱走しようと思った日の夜、

僕は既に孤児院を抜け出していた。

何も未練なんてない。


ただ思ったのは、

『新しい場所に行きたい』

ということだけ。


そう考えながら僕は地図を開く。

・・・太陽があちらから登ってくるからその方向に進めば、

イタールアのあるイグリス国だ。

その少し下に進めばエシフルト国のある大陸に出るはず。


まずはボートを探そう。


------------------------------------------------------

「よし、見つけた」


大人が時々徘徊しているけど、

僕はうまく隠れながら船を探した。


小さなボートを見つけて、

2日分になるであろう食料と水を乗せる。


ボートと陸を繋げているロープを解き、

夜の海原に出た。


朝になれば太陽の登ってくる位置を確認し、

船の方向を修正させる。

太陽が頭上にあるときは休憩して、また進む。


2日間そうしたけど、まだ陸にはつかない。

船には他にも食料が有り、時々雨が降るからそれを飲む。


たまに魚が船に乗るから、それを食べる。


そうして5日が過ぎ、僕は無人島に漂着した。


------------------------------------------------------

無人島での生活は楽しかった。

人が居ないとこんなに落ち着くのか。


島の中を歩くと、湧水のある池を見つけた。

飲んでみると、とても美味しかった。


人がいると物が捨てられて、

水が飲めなくなるけど、

ここには人がいない。


飲んだら毒かもしれないとも思ったが、

思い切って水を飲んでみた一番の理由は

『人間がいないから』だった。


食べられそうな草を感覚で選び、

時々体調を壊す。

そういったことを繰り返して、

僕は食べられる草や、薬草の知識を得た。


魚を釣って食べる。

火の起こし方は知っていたから、

問題なく食べることができた。


毒を持った魚の知識もある程度は知っており、

これも役に立った。


池の周りをよく見ると、蛇や鳥がいた。

蛇は木の棒で殺せたけど、鳥は難しい。

でも、蛇の骨を尖らせて木の枝にくっつけて

槍を作り、鳥を狩ることができた。


鳥の骨で簡単な皿を作り、海の水をそこに入れた。

蒸発させると塩が取れると思ったけど、

思っていたのと違った。


でも、鳥の羽で作った羽毛に海水をこぼしてしまった時、

羽毛から滴る水を試しに温めて蒸発させた。

それを食べると、かなりマシな塩が取れた。


なん日かが過ぎて、体も少しずつ大きくなってきた。

近くの島にも渡れるようになり、そこに住んでいたうさぎも食べた。


狐も居たけど、彼らは僕の友達になってくれた。

一緒に野原を駆け回ることは何よりも楽しかったし、

一緒に見た夜空は、星がとても綺麗で、皆空を見上げたいた。


------------------------------------------------------

そうして僕は、無人島で4年間を過ごした。

先程も言ったが、とても楽しかった。

昔は本を読むのが好きだった。

だって、本の中にはいろんな物語があるから。

でも僕は、昔読んだ本の中よりも、今の僕が気に入っている。


木の上に作ったベッドも、

生き物の骨で作った食器も、

葉っぱで作った服も、

池にある滝の裏にあった洞窟も、

隣島にある草原で一緒に走り回る狐も、

狐に狩られるうさぎの姿も。


何もかもが気に入っている。


変化なんて求めるのは、

自分に自信がある人だけだ。

僕に変化なんて必要ない。


さて、今日は何をしようか。

隣の島に行って肉でも取ろうかな。


『ガシャン』


そこには前のめりになって倒れる、銀色の鎧があった。


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