1話
あらすじにも記載致しましたが、
『旅する探偵もの』
と同じ世界観です。
『旅する探偵もの』
も、お読みいただけると嬉しいです。
「あれ?」
ココドコ?私は誰?
・・・うーん?何も見えないなぁ。
ってかなんか、変な感じだよなぁ。
体を動かしてるはずなのに、
動いてない感じ?
黒一色しか見えないってことは、
視力があるのか無いのか・・・
・・・動けないし何も見えないしほんと暇だよね。
俺、これからどうなっちゃうんだろ?
「ぃゃ,ぉぉぃ」
うん?なんか聞こえる。
足音も聞こえる。
「もっと火薬を増やしてみよう。
この鎧も砕く火力が欲しい」
『バサッ』
うお!光が見えた。
布を取った音が聞こえたってことは、
布を被せられてたのか。
ってかなんだこれ?
まるで・・・そう!
鎧の中みたいな。
へ?俺鎧なの?
・・・いやいや、ありえない。
でも待てよ?今って西暦2次6年だよな?
地球に残った人は、俺を含めて4人だったはず。
でも、他の3人と今の奴って声が違うぞ?
「まずはパーツを破壊することができる兵器を用意せねば」
うわ!俺分解されてる!
何故か解る!
あ、しかも頭取れらた!
ん?
頭の目から視界を確保してるわけじゃないのか。
あ、外が見える。
え!
空が青い・・・視界の一部がまだ黒いけど・・・あ、全部見えた。
うーん。
まるで西暦1次3000年までの空みたいだ。
どうなってんの?これ?
空って火が踊り狂ってる「踊り場」だろ?
もしかして、地球治ったの?
うーん・・・
何か喋れたら良いんだけど、何も喋れないな。
『ボン!』
『キイィン!』
うわ!視界が揺れた!なんだよ一体・・・
ってか火薬クサ!
・・・あ、匂いはわかるのね。
「よし!鎧の頭にヒビが入った!
やはり、純粋水爆で弾を飛ばす方法に間違いないのだな!」
それって、俺の頭だよなぁ・・・。
純粋水爆で弾発射って
・・・そんな技術知らないぞ俺。
「おいそこの君!この鎧を倉庫に放り込め。
わしは武器の改造をする。決して邪魔するな?」
「わかりました。おーい!
鎧を運ぶから手伝ってくれ」
あー、頭被せられてまた視界が無くなちゃったよ・・・
ガチャガチャ音が鳴る。
俺を運んでどこに行くんだろ?
「このクソみたいに重い鎧何なんだろうな?」
知らんよ。俺も知りたい。
「重さが500kgあって、未知の鉱石で創られてる。
中に入っても動かせる者はいない。
誰が作ったんだこんな物?」
「今ある鎧は、確かこれを基にしてるんだろ?
歴史上一番重い鎧が100kg前後だよな。
それでも中に入った奴は首が折れたりする。
絶対戦いに使えないぜこの鎧。
身長も2mの人間用だしな」
「頭だけは結構軽いけどな。3kg程度か」
「それでも頑丈だよな。
案外ゴリラ親子の専用鎧だったりしてな」
めっちゃ悪口言われてる・・・
その後も
『木偶の棒』『ウドの大木』『粗大ゴミ』『老害の住む豪邸』
等と悪口を言われ続けた俺は、倉庫に投げ捨てられた。
・・・運んでくれた人達!
お疲れ様です!
お前らの顔・・・じゃなくて声!
しっかり覚えたからな!
次会ったときは容赦しないぞ!
まぁともかく、ひとまず状況を確認しよう。
俺は西暦2次6年に、いつものマグマ噴出風景の中で、
防護服着て寝てた。
その後目を覚ましたら鎧になって倉庫に放り込まれた。
はいOK。60点。
回答枠3つかぁ。
上二つの配当が30点だもんな。
残りは頭にヒビが入った。
これこれ。
いえい90点。・・・あれ?10点足りない。
じゃぁおまけに10点あげる!
やった100点だ!よくできました。
意味分かんね!
どうしたら良いのこれから?
・・・うん?
なんか視界に影が。
「チュウ!」
なんだ鼠か。
あ、外の景色が見えた。
なんで?
次の瞬間倉庫のドアが目の前に来て、ドアが吹き飛んだ。
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「なんだ!」
研究者が驚いて声を上げる。
あの倉庫は、先程鎧を運んだ場所だ。
今もかなりの煙が出ている・・・
「警備兵!警備兵来てくれ!」
ここは軍事施設で、爆発物が多量に備蓄されている。
それが爆発したのか?
・・・いや、あの倉庫に爆発物はない。
ではなんだ?
「どうした!侵入者か?」
警備兵がマスケット銃を構えて私の前に立つ。
「わからない。急に倉庫のドアが爆発したんだ!」
「おい!本部に連絡だ!
第2兵器開発センターにて爆破事故発生だ」
「了解!」
うん?煙の中に何かがいる
あの鎧だ。
四つん這いになっているが、頭を忙しなく動かしている。
一体何だ?
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わーい!脱出成功だー!
んなわけねーべ。
「おい!そこの鼠、止まりなさい!」
あ、声出た・・・出てんのかなこれ?
どうも、今の俺は鼠に操られているようだ。
兵士に滅茶苦茶攻撃されてるけど、大丈夫か俺?
中の鼠は死んだふりでもしているのか、全く動かない。
どうでもいいが今俺は、鎧の外と中を同時に見ているようだ。
何か面白いなこれ。
あ、動き出した。
人を轢きながら。
やめて!シャレにならん!
せっかく生き残りがいるのに、こんなひどいこと!
この鼠めぇ!
クッソー!体が動かない!
いや、動きまくってるけど、ほんと動かない!
まずいまずい。
まずいまずいまずい!
うわ!外に出るの!?
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急に動き出した鎧が外に出る。
私がこの開発センターに来たのは2ヶ月前だが、
この鎧は絶対に動かないと聞いていた。
夜になったら持ち主を探して動き出すとか、
魔術師を供物に捧げると、3日だけ動くとか、
そう言った話は聞く。
だが、なぜ今動くのか?
目的はなんだ?
先程からマスケット銃や剣で攻撃するも、
全ての攻撃が弾かれる。
マスケット銃で撃つ鉄球は、
当たった瞬間
『ゴーン!』
と音を立てて弾かれる。
剣もヒビが入り、振るう者を痛めつけている。
「うわ!動き出した!」
先程まで動かず、ただただ攻撃を受けていた鎧が動き出した。
それも、既に割れている高窓に向かって。
「まずい!外に出る気だ!」
「逃がすな!」
しかし時は遅く、鎧は外に逃げ出した。
街のど真ん中にあるこの建物から。
「敷地から逃げ出されると住民街に出るぞ!絶対止めろ!」
兵士たちが雄叫びを上げて建物から出て行く。
マズイぞこれは、大事件だ!
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「あああぁぁぁぁーーー!」
止まれよ俺!このままだとヤバイって!
「チュウジュウ」
中中?なかなか?
俺は下の下だよほんと。
いや、
どっかの社長が「下の下以下ですね」とかなんとか言ってたから、
それだよ。
それにしても。地球ってもうすぐ滅びる予定だったよな?
なんでこんなに人がいるんだ?
それに鼠って全滅したよな?
そういやさっき『ゴリラ』って言ってたけど、
ゴリラも全滅したはずだ。
どうなってる?
ともかく止まれっておい!
うわ!たくさんの兵士が出てきた。
あれって西暦1次の時にあった、パターソンて銃だろ?
そこそこ初期型のリボルバーだ。
まあ、これより古いリボルバーなんていくらでもあるけど。
データで見たことがあるけど、実際に撃たれるなんてな。
うーん?
タイムスリップってやつ?
異世界転生ってやつ?
パラレルワールドってやつ?
よくわかんねぇなこれ。
あぁー兵士達が吹き飛んでいく。
死んでなきゃいいけど、これほんとどうすんだ?
誰か助けてー!私が私に誘拐されてますー!
いや、割とガチで。
も”ぉ”―”!や”だ”あ”!!
あ、『だ』に濁点つけちゃった。
ゲ!街に出た!本格的にまずい!
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俺はアンヌリカ国に生まれて40年経つ。
昔は狩りで生計を立ててたが、今は農作業もして暮らしている。
そんな俺が見たのは、四つん這いになったの鎧が、
ジグザグに走っては止まって、
走っては止まってを繰り返している光景だ。
何が起こってるのかを少し考えてから、俺は大声を上げた。
すると近所の人間や通行人も大声を上げて走り出した。
俺は妻と子供たちの元に向かって走り出した。
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どうにかして俺の体を止められないか?
やっぱ無理か!
大体この鼠、どこから入ってきた?
頭ぶっ壊し実験をされてる時か!視界がちょっと黒かったあれか!
クッソ!
どうすれば良いんだ・・・あ、海が見える・・・紫色じゃない、青い色だ。
海って硫化水素やらなんやらで紫色になったはずでは・・・?
ほんとどうなってんだ?
そうだ!俺を海に落とせば、中の鼠を・・・可哀想だが殺すしかない!
誰か気づけ!
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海賊になったのはいつだったかな?
今が30歳だから、10年前か。
昔は海の上で自由に動く海賊を羨ましいと思って憧れていた。
仲間と共に最高の海賊になって、悪い奴からお宝を奪う!
そして、善良で弱者になってしまった市民に配るんだ。
だが、海賊になってから色んなものを失った。
まずは耳だ。
大砲を撃って敵を狙えと命令されて、俺は嬉しかった!
これから俺の海賊人生が始まるのだと。
だが、大砲一発で目が覚めた。
鼓膜が破れたのだ。
次は足だ。
大砲が弾を撃った事で後ろに動き、
その車輪で俺の足を轢いたのだ。
次は歯だ。
海水で口を洗う毎日。
口の感覚がなくなっていき、気づいたら歯は全て抜けていた。
次は夢だ。
海賊は人からモノを盗まないし奪わない。
跳ねっ返りが軍を襲うだけ。
奪ったものは皆で山分け。
あと、市民から奪われることもあったな。
俺の思ってたのと違う。
もっとこう、ギラギラしたのをイメージしてた。
だが、これが海賊だ。
だから海賊を抜けようと思う。
賊長は今日の仕事が終わったら、船を降りても構わないと言ってくれた。
金塊も一つくれた。これで暮らしていける。
早く今日の仕事終わらねぇかな。
うん?視界の端でも目立つ鎧が、四つん這いで走っている。
俺は
「ウォウウウウゥゥゥ!」
と、歯のない口で叫んだ。
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「だめだあいつ」
見るからに不憫な男が不気味な声で叫ぶ。
おそらく海賊だろう。
海賊は話が通じないというか、
大半は話ができない人間の集まりらしいからな。
俺を海に落とすのは無理だろ。
漁船とかより見込みないぞ。
もし海賊続けていけるなら、あれだ。
定刻の反逆者みたいに、人間やめてる奴らだ。
でもなんで俺の中の鼠はこの船を選んだんだ?
あれ?船の先にココナッツが吊るしてある。
「え?まさかあれを取るの?」
「チュウ!」
なんか返事が宇宙のデカみたいだけど、マジかー。
あれ、完全に鼠よけだぞ?
「見るからに罠だって。お前死ぬ気か?」
「チュウ・・・ジュ!」
取る気満々だな。
そうか、お前がそう願うんなら!
俺の体を存分に使え!
「チュウーー!」
『ザッバアアァァン!』
海に落ちた鼠は、
俺の体内で、もがき苦しむが次第に動かなくなり、
完全に死んだ。
計画通り・・・。
あ、視界が鎧の中だけに戻った。
外の世界をもう少し見たかったけど・・・。
体は動くな。適当に歩くか。
なに、地球は丸いんだ。いずれ地上に着くだろ。
コツコツ
って音が聞こえる。
多分波や石が鎧に当たる音だろうな。
お?音が明瞭になった。
水から出たっぽい。
よし、このまま進んでっと。
ガシャアァァン!
あれ?まるで鎧が倒れた音みたいだな。
え?体の動く音がさっきまで聞こえてたのに・・・?
誰かー!誰かいませんかー!?
誰かいたとしてもなんか、
ハ○シフィック・リムのOPみたいじゃん!
あの映画、西暦1次のアメリカ映画で2番目に好きだけど!
1番目はデッド・フ○―ルね。