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仲間に見限られた俺と、家族に裏切られた彼女の辺境スローライフ  作者: 緋色の雨


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エピソード 4ー3 町の復興

 この異世界でもヤンデレに死ぬほど愛される2 と、無知で無力な村娘は、転生領主のもとで成り上がる1 が発売中です。

 また、10日にはとにかく妹が欲しい最強の吸血姫は無自覚ご奉仕中!1 が発売します。


 夏に同時連載中のペットトリマーと、ガールズラブライフもよろしくお願いいたします。

 ガールズラブライフの方はひとまず完結しました。この機会にぜひご覧ください。

 作者名から投稿作品リストから飛べます。

 

 アンドレアが帰還した翌日。

 俺達は食糧支援をおこなうために、目録を持って町長宅へと向かった。


「これはこれは、セシリア様に……たしか、レオン様でしたかな?」

「そう言えば名乗ってなかったな。よろしく、ランドルさん」

「はい、よろしくお願いします。……それで、本日はどういったご用なのでしょう?」

 挨拶を交わしたあと、ランドルはセシリアへと視線を向ける。


「実は、ローゼンベルク家から食糧が届きました」

「ローゼンベルク家から、ですか?」

 ランドルの表情に期待の色が滲んだ。その期待に応えるように、セシリアもまた、柔らかな微笑みをこぼす。


「いままで苦労を掛けましたね。風土病で困っている家を中心に支援を致します」

「おぉ……よろしいのですか?」

「風土病が流行っているのも、みなが疲弊しているからでしょう。体調を整えて、また農作業に従事してください」

「ありがとう、ありがとうございます」

 ランドルさんはほろりと落涙した。


 実のところ、少し甘いんじゃないかな……なんて思ってた。食糧支援ではなく、多少の労働と引き換えに食料を提供した方が良いんじゃないかなって。

 だけど、ランドルのいまの反応を見る限り、俺の予想よりもセレの町は疲弊している。食糧支援に代償を求めなくて正解だったのかもしれない。


「……レオンさん?」

「ん、どうしたんだ?」

「いえ、あれを出して欲しいんですけど?」

「ん? ……あぁ、悪い悪い」

 どうやら、俺が物思いにふけっているあいだに話が進んでいたらしい。慌てて革袋からジャガイモの種芋を取り出し、ランドルに手渡した。


「これは……芋ですか?」

「ええ、ジャガイモと言って、あまり手間が掛からずに栽培できるんです」


 ちなみに、当初予定していた、遠方で栽培されている特産品候補の作物じゃない。固有結界にある、畑に植える種や苗のリストから選んだ。

 なお、わりとどこでも栽培できるらしいので、特産品にするのは難しいかなと思ってる。食糧事情が改善しやすいと分かれば、どこの領地でも栽培されそうだからな。

 なので、特産品はまたいずれ――と言うか、既に固有結界でリーフねぇや白雪があれこれ始めているんだけど、結果が出るには少し掛かる。

 と言うことで、まずは食糧事情の改善を優先したのだ。


「このジャガイモを増やして欲しいんだ」

「増やすと言うことは、あらたな畑も必要になりますよね?」

「あぁ……労働力が足りない問題だよな。たしか、風土病で寝込んでる人達が治ったら、その労働力の一部を、開拓に回すって話だったか?」

「その通りですが、さすがにまだ病が治ったものはあまりいなくて」

「まぁ……そうだよな」


 フラムを採取してから、まだ一週間と経っていない。中には回復したものが出てきてもおかしくはないけれど、労働力が元通りとは行かないだろう。

 とは言え、それは予想通りなので問題はない。


「ひとまずは冒険者に依頼という形で、畑を耕してもらおうかなって思ってるんだ」

「……冒険者に畑を、ですか?」

 ランドルは目を丸くした。


「もちろん、冒険者だって仕事を選ぶけどな。あいつらなら、報酬をちゃんと支払えば引き受けてくれるはずだ。……良いんだよな?」

 事前に話をしてあったので、セシリアに確認の意味を込めて視線を向ける。


「ええ、問題ありません。そちらはお願いしますね」

「ん、任された。それじゃ、ちょっと行ってくるな」

 ――という訳で、俺は単独で冒険者ギルドへと向かった。



「レオンさんじゃねぇか!」

 冒険者ギルドに入ると、ジャックが飛んできた。続いて、ギルドの隅っこにあるテーブル席から、フィーナも駈け寄ってくる。


「数日ぶりだな、元気してたか?」

「元気してたか? じゃないよぅ。定期的に依頼をくれるって言ったのにくれないから、お屋敷に乗り込もうかって話し合ってたんだよ?」

「――ちょ、フィーナ!?」

 フィーナのちょっと過激な発言に、ジャックが慌てる。


「フィーナも相変わらずみたいだな」

「相変わらずみたいだな、じゃないよ」

「悪い悪い。今日は一応依頼を持ってきたんだ」

「依頼? また、薬草採取で、森に連れて行ってくれるの?」

「連れて言ってもらうのは俺の方だぞ? ちなみに、そっちもまた頼むつもりだけど、今日は別件なんだ。実は……」

「「――実は?」」

 二対のキラキラした瞳がまぶしい。この状況で言い出しにくいんだけど……仕方ない。


「畑を耕して欲しいんだ」

「……フィーナ達が畑を」

「……耕すのか?」

 フィーナ、ジャックが続け様に呟く。冒険者パーティーとして、なかなかの連携だ――なんて、益体のないことを考えてしまった。

 ついでに言うと、二人揃ってなにか言いたげな視線を向けてくる。


「気持ちは分かるけど、最後まで聞いて損はないと思うぞ」

「でも、畑を耕すんだよね?」

「まぁそれは変わらないな。ただし、報酬はちゃんと支払うし、おまけもつけるつもりだ」

「……おまけ?」


 フィーナが真っ先に目を輝かせた。

 期待しているところ悪いけど、今回はフィーナ向けのおまけじゃないんだよな。


「その前に確認だけど、二人は誰にも師事せずに、独学で冒険者をしてるんだよな?」

「……うん。最初の頃は先輩がいたから、分からないことがあったら教えてもらえたけど、今はその先輩もいないしね――って、もしかして?」

「もし依頼を受けてくれるなら、サブ報酬として護衛騎士に指導を頼んでやる」

 ジャック達が低ランクでくすぶっているのは独学だから。ちゃんとした指導を受ければ、俺くらいはすぐに追い抜ける。

 だから、喜んでくれると思ったのだけど――


「……あんまり嬉しそうじゃないな?」

 そう思って口にすると、ジャック達は顔を見合わせた。そうして、なにやら小声でやりとりを交わすと、ジャックが代表するように俺を見た。


「その指導してくれる相手だけど、レオンさんにお願いできないか?」

「……俺? 俺みたいな落ちこぼれに習っても仕方なくないか?」

「「いやいやいや」」

 二人揃って右手を顔の前で振る。

 だけど、その顔は真剣そのもので、冗談で言っているようには見えない。


「……たしかに基礎なら教えられるけど、サポート系以外のスキルは詳しくないぞ?」

「フィーナは望むところだよっ」

「そりゃ、サポートスキルを持ってるフィーナは良いだろうけど……」

 ジャックは良いのかと視線を向けた。


「剣のスキルを持ってるなら、騎士の指導は最適だと思うぞ?」

「それはたしかに興味があるんだけど……」

「……あるんだけど?」

 言うか言うまいか迷うような素振りを見せていたので、俺はその先を促す。それで意を決したのか、ジャックは意を決したかのように口を開いた。


「俺は、俺はレオンさんが良い! 俺は――レオンさんに惚れたんだ!」

 いきなり告白された。


「ジャ、ジャック!?」

 フィーナが詰め寄る。

「……ん? どうしたんだ、そんなに血相を変えて」

「どうもこうも、ほ、ほほほっ惚れたってどういうこと!?」

「……ん? あっ、ち、違うぞっ、いまのはそういう意味じゃなくて、ただ、レオンさんのスキルに頼らない勇姿が格好よかったというか、魅せられたって言うか……っ」

 しどろもどろになるジャックは、頬が少し赤くなっている。たぶん、きっと、戦闘の光景を思い出して興奮してるんだろう。


 現実逃避の使用可能なポイントが増加しました。


 ――マジで!? わりと冗談のつもりだったんだけど、いまのが現実逃避になるって……あぁいや、俺がその可能性から目を逸らしたってだけで、事実がそうとは限らない――


 現実逃避の使用可能なポイントが増加しました。


 ……おいおい。なんか……いや、考えるのはよそう。


「こ、この反応は……ライバル、ライバルだ。早いうちに潰さないと!」

「は? ちょ、お前、なにを言って!?」

「うるさい!」

「がふっ!?」

 ジャックが崩れ落ちた。……一体なにが起きたんだ。今回は机で遮られていた訳でもないのに、フィーナがなにをしたか見えなかったぞ。


 ついでに、受付にいるアヤネが「ジャックが攻めかいな? いや、誘い受けという線もあるなぁ」と、良く分からないことを呟いているが無視。

 全部なかったことにして、フィーナへと視線を戻した。


「……それで、依頼は受けてもらえるのかな?」

「え? あぁ……えっと、うん。依頼料をちゃんともらえるのなら大丈夫だよ!」

「そっか。それじゃ、今回はちゃんとギルドを通しておくな。それと、畑を耕す人数は多ければ多いほど良いから、あてがあったら誘っておいてくれ」

「うん、良いよぅ。その代わり、フィーナに色々教えてね!」

「はいはい」

 元気で可愛らしい。妹がいればこんな感じだったんだろうか――なんて思っていると、フィーナがもじもじと身体を揺すり始めた。


「それと……えっと、もう一つお願いがあるんだけど」

「……うん? 内容によるけど?」

「その、サポートスキルを使って欲しいかなって、思って……」

「サポートスキルを?」

「ち、違うよ? あのときの感覚が忘れられないとか、そう言うんじゃないからね? ただ、その……そうっ! フィーナはあんまり体力がないから、畑を耕すときに使ってもらえたら、凄く助かるかなって、それだけだから!」

「お、おう……」


 なんだか良く分からないけど、勢いに押し切られた。

 とは言え、サポートスキルは一人にしか使えないだけで、使用に多大なる疲労が伴うとかじゃない。なので、フィーナに使うのはなんの問題もない。

 という訳で、畑を耕してもらう日は、可能な限りサポートスキルを使うことにした。

 

 

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