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仲間に見限られた俺と、家族に裏切られた彼女の辺境スローライフ  作者: 緋色の雨


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エピソード 3ー6 現実逃避へご案内

 この異世界でもヤンデレに死ぬほど愛される2 と、無知で無力な村娘は転生領主のもとで成り上がる1 の書籍が発売中です。

 発売日がサイトによって違ったりするんですが、30日が一番遅い発売日なので、今日には大抵の本屋さんに入荷していると思います。

「凄い、凄いわ、弟くん。まさかとは思ってたけど、本当に固有結界じゃない!」

 固有結界にある家のリビングで、リーフねぇがまるで少女のようにはしゃいでいる。その姿を見守りながら、さきほどの出来事を思い出して密かにため息をついた。


 ――さきほど、逆上(のぼ)せたセシリアがうっかり口を滑らせた後、お風呂ってどういうことなのかと、リーフねぇとメリッサに問い詰められた。

 リーフねぇかメリッサのどちらかだけならともかく、好奇心旺盛のリーフねぇと、セシリアを心配するメリッサを同時に躱せるはずもなく……あれこれ白状させられた。

 なお、そのあいだに物凄い勢いで現実逃避のポイントが増えたことを付け加えておく。


 そんな訳で、固有結界を見せて欲しいとせがんでくるリーフねぇを案内することになった。

 メリッサも興味はあったみたいだけど、逆上(のぼ)せたセシリアの看病で部屋に残っている。


「ねぇねぇ、弟くん。ポイントを使って、仮想のモノを物質化出来るのよね?」

「原理は分からないけど、そうみたいだぞ」

「なら、ここから物を持ち帰ることは出来るの?」

「えっと、出来る物と出来ない物があるみたいなんだ」

「ふむふむ。なら、どんな物が持ち帰ることが出来るの? でもって、持ち帰った物はどうなるの? その場に残り続けるの? それとも、消えてなくなるの?」

 次々に質問を繰り出してくる。その勢いに気圧されて壁際に追い詰められ、横に逃げようとしたら腕で壁ドンをされてしまう。


「お、落ち着けって」

「これが落ち着いていられるはずないでしょ。固有結界よ、固有結界」

「いや、それは分かってるけど……」

「わかってなーいっ! 歴史上にも数えられるくらいしか使い手のいない固有結界の中にいるのよ? これがどれだけ貴重な体験か分かる?」

 うわぁ……リーフねぇの緑色の目が宝石のようにキラキラしてる。好奇心旺盛だから、やっぱりこういうのが好きなんだろうなぁ。

 今のうちに歯止めを掛けないと、どこまでも探求しそうだ。


「ひとまず落ち着け。固有結界は逃げないから」

「現実逃避って名前のスキルなのに?」

「大丈夫だ、むしろ現実に引き戻してくるし、それに、この空間が逃げることはないから」

 俺が逃げ込むための世界なので、その世界が俺から逃げるなんて笑い話にもならない。


「むぅ……分かったわ。急かさないから、一つずつ教えて」

 あんまり分かってるようには見えないけど、答えない限りはこれ以上落ち着いてはくれないだろう。そう思ったので、一つずつ質問に答えていくことにした。



「……凄い。凄いわ! これは間違いなく、歴史上でも初の貴重なスキルよ!」

 俺からあれこれ説明を聞いたリーフねぇがぴょんぴょん飛び跳ねる。


「それはいくらなんでも持ち上げすぎじゃないか?」

「いいえ、褒めすぎなんかじゃないわ。現代で手に入る物はともかく、古代と異世界の物が手に入るというのが異常よ。安全に発掘が出来る遺跡みたいなモノだもの」

「ん~、でも、消耗品や家具とかは持ち帰れないみたいだぞ?」


 すべてを確認した訳じゃないけど、椅子やタオルは持ち帰ることが出来なかった。いくら古代や異世界の商品が凄くても、この世界で暮らすのが便利になるだけだと思う。

 そう言ったら、ため息をつかれてしまった。


「なに言ってるの。古代遺跡で発掘した品だって、そのまま使うわけじゃないでしょ。普通は研究して、再現できるようにするものよ。なら、ここで研究すれば良いじゃない」

 要するに、リーフねぇが研究する――と言うか、したいと言うことだろう。なんだか、徹夜で手伝わされる未来が見える。


「分かった。そういうことなら、ある程度はリーフねぇの要望に応えるようにするよ」

「ホント? ホントのホントに、要望に応えてくれるの!?」

「ホントのホントだって」

「わーい、弟くん、だから好きっ」

「お、おう……」

 ぎゅーっと抱きつかれてしまった。

 ここまで無邪気なリーフねぇは初めてで、しかも胸が思いっきり当たってて……っ。いかん、考えたら顔が熱くなってきた!


「と、取り敢えず、家の外もあるんだ」

「――外? 部屋の外があるの? 見せて、すぐに見に行きましょっ!」

 言うが早いか、玄関へと走って行った。

 腕の中から柔らかな温もりが消えて、思わず寂しさを覚えてしまう。……いや、覚えてしまうじゃなくて、しっかりしろ。

 リーフねぇのスキンシップが激しいのは今に始まったことじゃないだろ。


「弟くん、はやく、はやくーっ!」

「はいはい、いまいきますよ」


 火照った頬を冷ましながら後を追って家の外に出ると、リーフねぇが「凄い凄い、本当に外があるのね!」と、両手を広げてくるくると回っていた。


「ねぇねぇ弟くん、この世界って、広げることも可能なの?」

「レベルが上がる時に広がったことがあるけど、どれくらい広がるかは分からないな」

「それは夢が広がるわね」

「広がるのは夢じゃなくて、現実逃避の世界だけどな」

「ふふっ、あんまり上手く言えてないわよ?」

「うっさいなぁ……」

 恥ずかしさを隠すために悪態をつきつつ、リーフねぇの後をついていく。


「井戸に薬草園。あっちが噂の温泉かしら?」

「ああ。他にも小川とかも設置出来るみたいだ」

「はぁ……本当になんでもありね。さすが弟くんの支援スキルだわ」

 そんなおしゃべりをしながら、肩を並べてフィールドを歩き回った。



「あっ、そうそう。弟くんに団長から伝言よ」

「――っ」

 唐突な言葉に、思わず身をすくめてしまう。


「ふふっ、そんなに硬くならなくても大丈夫よ」

「そうは言っても、な。団長は……なんて言ってたんだ?」

「『お前は良くやってくれていた。もう、十分すぎるほど恩を返してもらった』だって」

「……団長がそんなことを?」

 にわかには信じられなかった。

 俺を慰めるための嘘じゃないかと、リーフねぇの顔をまじまじと見つめる。


「団長は戦うことに傾倒していたけど、貴方の働きは認めていたのよ?」

「……団長が俺を認めてくれてた?」

「ええ。だから、弟くんは立派に、恩返しをしてくれたのよ」

「――っ。ホントに、俺は恩を返すことが出来たのか?」

「ええ。貴方はあたし達にちゃんと恩を返してくれたわ」

「そっか……そう、だったんだ。……教えてくれて、ありがとう」

 俺は既に恩を返し終わっていた。それを教えられて、熱いモノがこみ上げてくる。

 これで、心置きなく、この町で暮らすことが出来る。


 残っている問題は、保護した白雪のこと。太陽の下に出られない白雪をどうにかしてあげれば、なんの気兼ねもなくのんびり暮らせる。

 もっとも、その問題はなんともなりそうにないんだけど――なんて思っていたから、続けられたリーフねぇの何気ない一言に驚くことになる。


「この世界なら、あの子も自由に暮らせそうよね」

「え、あの子って……?」

「白雪に決まってるじゃない。この世界の光は優しいから、あの子でも大丈夫なはずよ」

「……光が優しい?」

 太陽がないというのはその通りだけど、明るさは日中と変わらない。それじゃ、意味がないのではと思ったのだけど、リーフねぇは袖をまくって白い二の腕を見せてきた。


「白雪ほどじゃなくても、あたしも肌が痛くなったりすることがあるの。でも、この空間だと、そういった感覚がまるでない。光が優しい証拠よ」

「ふむ……」

 良く分からないけど、日焼けしにくい光と言うことなのだろう。

 そういうことなら、是非とも白雪に教えてあげよう。白雪がここで暮らすかどうかは分からないけど、青空の下を歩き回れるというのはきっと気晴らしになる。



 ――という訳で、部屋に戻ったのだけど、白雪はまだ眠ったままだった。

 翌日になれば目を覚ますだろうのことで、その日はなにごともなく終わったのだけれど――


「レオンさん!」

 翌朝、寝ぼけ眼を擦りながら部屋を出た俺に、セシリアが抱きついてきた。

 華奢な身体から、花のような甘い香りがする。柔らかな感触に少しドキリとさせられたけれど、すぐにそういった煩悩は消えてしまった。

 セシリアの身体が、小刻みに震えていたからだ。


「セシリア、どうしたんだ?」

「それが、その……ローゼンベルクから使者がこの町に来ると先触れがあったんです」

「ローゼンベルクからの……使者?」

 セシリアの母親を殺し、セシリアを僻地に追いやり、その命をも奪おうとした。そんな連中からの使者がやって来た。

 ……どうやら、一波乱ありそうだ。

 

 

 次回、リーフのときのような、セシリアの実家視点を一話挟みます。

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