5,世界を救う話
5,世界を救う話
「だぁ~かぁ~らぁぁぁ~信じてください!! 私めは、未来から来た女神クナにございます!!」
「はぁ なに言ってんだお前?」
目の前にいる頭の悪そうな女の話を聞いてみれば、そいつは未来から来た女神だと自己を紹介してきた。
気の抜けた声に、垢抜けない顔つきがバカっぽさを際立たせている。
見たところ、俺と同じくらいの身長、体格だ。
最近俺の回りに金髪しか表れないのが不思議だが、この女も流れる滝のように綺麗な金髪を持っていた。
髪はシスター服の、フードの裏に隠れ、襟を通って服のなかにしまわれている。。
あか抜けた顔つきと言うのは童顔という事で、頭はおかしそうだが、町で会えば3度見返してしまうような美少女である。
「なに言ってだお前?」と聞くと、女はベッドに座る俺に這いより、俺を押し倒して床ドンのような体制になる。
「な、なんだよ......」
ブカブカのシスター服からでも分かるような大きな胸についチラチラと視線が傾いてしまう。
どこをみたものかと下半身の方に目を向けるが、長く細い脚が綺麗すぎて、そこを凝視することも出来ない。
顔に目を向けると、この女は頬を赤らめて「キャー、エッチ」と、からかうような、小さく艶かしい声で呟いてくる。
どこ見たら良いんだよ!!?
俺は女を反対に押し倒して距離をとった。
女は床に正座し、口を開く。
「私めは、傷心しきった、伊勢 魔理様の心を癒して差し上げようと、個々に来た次第ですぅ」
押し売り見たいに媚びるなよ。 とても女神とは思えねぇよ。
「なんでお前なんぞに慰められねばならんのだ」
すり寄って猫のように「にゃぁ~お」、と鳴いてみてる女神様。
どう考えても不審者だろこれ。
「お、お前、いい加減にしないと通報するからな!」
「えぇ~! なんでですかぁ~! こんなに可愛いのに! 私のことどうしてくれても良いんですよぉ~!!」
どうしてもって......。
危険な女は続ける。
「ぁあ~んなことやぁー、こぉんなこともおおぉぉ アッ、アッ、マリさんソコは......やしゃしく、お願いしますね......」
「変な声を出すな!!」
「あぁ~! 赤くなったぁ!! やっぱ私で色んなことしたいのですねぇ!」
女はニヤニヤと笑いながら俺にすり寄って「アハアハ」言っている。
危険すぎるッッ!!
通報するしかないッッ!!
急いで仕事机の上に置いてあるスマホを開く。
「あぁ~ん待ってくださいマリさぁぁんん!!」
「うるせぇっ!!」
腰にしがみつく女神様を強引に振りほどき、スマホ片手に距離をとる。
「これ以上近づけば、本当に通報するッッ!!」
すると女は、ゆっくりと胸元のボタンをはずし始める。
「...... 何やってんだ?お前?」
女はボタンをはずし終わり、袖に腕を引っ込め始めた。
その顔は真っ赤に蒸気し、しかし、俺を誘うような上目遣いでチラチラと視線を向けてくる。
「んっ、くっ、ふぅ、きょ、今日はマリさんに身も心も差し上げるつもりで来ました......んんっ、」
今にも落ちてしまいそうなはだけた服、擦り会わせる足と足、胸と服。
俺は夢中で見入っていた。
漏れ出す甘い声と吐息のすべてがとてもエロくて今すぐにでも、がっつきたく......じゃねぇだろっ!!
「い、今すぐ服を着ないと通報するっ!!」
すると女はシャンとして言った。
「もう、なんで発情しないんですか かわいくないですか?わたくし」
「発情しねぇよ!!」
少し可愛いけど......じゃないよ。
なんなんだこの脳内淫乱ピンクモンスターは。
間違いなく危険人物だろう。
それもあるが、何故俺は現実に戻っているんだよ。
クラナや母さんはどこに行ってしまったんだ。
「クソッ、せっかく家族が出来たのに......」
小声でそう呟く。
なんでまたこの独りの家にいるんだよ。
危険人物がいるから独りではない......
やだよっ!!
すると女はフッと笑った。
「帰りたいですか......」
「はぁ」
帰りたい......? もしかして異世界についてなにか知っているのか?
「まぁ話を聞いてください」
危険だがなにか知っているかもしれない。
とりあえず話だけでも聞いてみようかな。
「さ、膝枕してあげますよ? おっぱいの方がいいですか? バインバイン枕ァ!!」
「黙れ!!」
女は(´・_・`)な顔になって、俺のベットに腰かけた。
俺は逃げるように仕事用の回転椅子に座る。
「実は最近、あなたが昨日まで行っていた世界は戦争中です」
やはり昨日の魔法の世界を知っているようだ。
しかし、油断はできない。
にらみを聞かせて相手を牽制しつつ話を聞く。
「そんなに威嚇しないでくださいよ、狼ちゃんですか? 狼は交尾が激しいことで有名なんですよ? 私とヤりますか」
上目遣いで誘惑してくる女。
「やめろ」と俺が言うと、「ちぇっ」と言って説明を続ける。
「その戦争と言うのが、あの世界の敵国に最近、悪い魔王が現れて、それをきっかけに、戦いが激化している、というものです。それで、戦争で発生した強力な魔力が、こちらの世界とあちらの世界を一部繋がってしまっちゃったみたいなんですよねー」
「ですよねー、じゃねぇよ!! (信用なんねぇけど)お前女神なんだろ! どうにかしろよ」
「まぁ聞いてください。 私はランダムに繋がるはずの、こっちとあっちの繋がりを、無理やりここ----すなわち伊勢 魔理さんをあっちと繋げたのです!」
「あっちこっち分かりにくいなぁ」
「まあ要するに、魔理さんが魔法の世界に行けたのは、私のおかげさまで、あなたは戦争を止めなくてはならないのですよっ!!」
「ならないのですよっじゃねええんだよおおおおっ!!」
くっそおおおおおおおおおおっっっっなんだこの女!!
可愛いけど腹立つぞっ!!
つか、そんな危険な戦争なんて俺なんかが止められるわけ----
「大丈夫ですっ!! マリさんならイケます!!」
「はぁ、その根拠は?」
「いいですか?」
女は黄金色の長髪をかきあげ、説明を続ける。
「私は女神です。 万物を操れます。 この世界の理、生と死さえも。
だから、あなたの、あの世界での初期ステータスに多量の補正を掛けました。
魔力だけで見れば世界一の数値にしてありますよ!!」
「え、魔力? 俺魔法使えるの?」
「ええ! あの世界でならね」
へー、魔法使い......カッコいい。
そりゃあ憧れるよな、誰だって。
思わず顔が歪んでしまう。
「お、赤くなりましたねー、私に発情しちゃいました?」
「そんなことはどうでも良いよ。 他にステータスは変えてないだろうな? エロ同人的な設定があったならかかわらないからな」
「あぁ、一つだけ。 魔法を使うために、魔法使いの血をマリさんに混ぜました。 ここではなんでもないですが、あっちの世界に転生した瞬間にあなたの血液が入れ替わります。昨日のあの一家の血です。魔法は魔法使いの血族にしか使えませんし、しかたない設定ですね」
「へ? 俺母さんと血が繋がってんの」
「私とが良いですか?」
へー、本当の血の繋がった家族になってたのか。
「ちなみに設定があって、あの家族の長男がマリさん、貴方です(σ≧▽≦)σ、昔魔物にさらわれたけど、生きてましたー!! みたいな?」
「マリのことじゃねえええええかああああああっっっ!!!!」
俺がマリだったのかよ。
なんか偶然重なりすぎとは思ってたけど、この変態のせいだったのか。
つか気まずっ!! マリじゃないと言っておいてほんとはマリかよ。
ん?でも俺は魔理だから、マリじゃ、なくはなくはない?のか? ん?
「本当は、端からあの世界にマリなんていませんが、過去ごと変えてきましたから、あなたはあの世界ではソルレの息子です」
まじか。
本物の家族......!
「あ、ああ、ありがとう、お、俺、家族が欲しかったから、そ、その、きつく当たってすまなかった。
お前、実は良いやつなんだな」
感謝はちゃんと伝えなくてはな!
変態は顔を赤くした。
か、かわいい!
けど、この顔どこかで......
まあいいや、クナは「え、えへへ」とにやけている。
「そ、それで、俺はあっちにどうやって行けば良いんだ?」
「ああ、私に言ってくれればすっ飛ばしますよ。あっちの世界とこっちの世界を往き来出来るようにしたげます。 だから、はいこれ」
クナは俺にスマホを差し出す。
その画面には無料通話アプリlineeのQRコードが映っていた。
「......」
俺が頭上に疑問符を浮かべる。
「もうっ、やだなぁ、lineeで友達になりましょ?」
バアアアアッッッンン!!
俺の全身に電流が走る。
そ、そうか、lineeと言えば友達か。
引きこもり云々ではなく、俺は中学校からlineeを一緒にやるような友達が一人もできていない。
lineeで誰かと繋がると言う発想事態が欠落していた。
「で、でも、あっちの世界でもlineeで話せるのか?」
「あー、どこでも謎の電波で使えるスマホ、て設定変えときました。そのスマホ」
「お、おお、そうなのか、すげえ」
「嘘です、魔法で動いてます」
「なんかかっこいいな」
早急にlineeをインストールし、
「じゃ、じゃあ読み込むぞ......」
ゴクリ。
唾をのみこむ。
「何をそんなに緊張してるのですかー? 童貞ですか? 貞操もらってあげましょうか?」
ピコんっ!
お、おお!! と、友達だ!!!
「や、やったあ!! lineeの友達だあ!!」
「ふふ、マリさんの初めて、嬉しそうで何よりです」
スマホの画面をまじまじと見つめる俺。
新しい友達、の欄に「超絶美少女大天使 クナ」という名前が追加される。
一言コメントのところには、「コミケ行きてぇ」と書かれていた。
「すげぇ!! す、すげぇ!! 友達だ!!お、俺lineeの友達初めてなんだよ!」
「マリさんの初めて。 これでいつでも連絡がとれます。 私は基本マリさんに付きっきりですが、私が居ないときはこれで連絡ください」
「あぁ、そうかわかった!! あっちの世界から戻ってきたければlineeをすれば良いんだな?」
「そういうことです!」
気分が高揚していて大事なことにツッコムのを忘れていた。
「では、これからよろしくお願いしますね」
lineeのことだと思って、
「ああ、よろしくな!」
と俺は返した。
こうして俺は変態と暮らすことになった。
(5,世界を救う話 了)
いやぁ~、これは妹ものなのでしょうか?それとも......
やはり、いつの時代も、積極的な可愛い子は素敵ですよね。
(作者のような)人見知りの人間にとっては、こんな子がいると、とても安心感があります。
小学生の頃、引っ越した自分に最初の友達になってくれたk君......元気かなぁ?
そんな、懐かしみに触れつつ、この女神を書きました。(別にk君はモデルとかではないです。クナは僕の好みです)
さて、4話、で後書きの説明はしたことですし、今宵は床につくとしましょう。
(俺も寝て起きたら可愛い女神様とつきあえねーかなー)
愛雌 雄 大好きなアニメを眺めつつ。