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28.ある村人とついてない主人公の幸せ(?)な話② お悩み相談

28.ある村人とついてない主人公の幸せ(?)な話② お悩み相談



「それで、失礼なお客さんは私にどんなご相談があるのですか?」

「ええ……実は最近、妹と離れ別れになってしまって……」

「ええ!? い、妹さんは亡くなったのですか?」

「いや、今もどこかで俺を探しています……」

ヘビーな内容に空気が重くなる。

俺は頭を重く垂らした。

妹よ……妹よ……お兄ちゃん、頑張ります。


「あぁ、そうだったんですね! よかった!」

「え?」

相談相手の喫茶店店主、アメリアは明るく言う。

「もしよかったら、妹さんの様子を覗いてみませんか?」

「は?」




アメリアが店の奥から水のように透き通った水晶を持ってきた。

俺の前に座ると、何やら念じ始める。

「あの、これは?」

「いやあ、実は私すっごい魔法が得意なんですよね、特に探し物を探したり好きなものを見たりするようなやつ!」

「え?」

「いまからこの水晶に妹さんのお姿を映し出します! よーく見ててくださいね!」

そういったアメリアは水晶を両手で覆うように囲い、水晶は淡い青い光を帯び始める。

魔法の光だ。

「おお、おおお!! すげー!!」

みるみるうちに水晶にはクラナの姿が浮かび上がる。

周りにはごついアヌスとファルシスさん、白いのもいた。

「これは……ユウウェイ内ではありませんね」

「は、はい、俺は拉致されてここにいます、だから連れてこられなかった妹と生き別れです」

「そうでしたか……」


水晶の奥ではアヌスが建物の角でこそこそと辺りを見回していた。

クラナはソラと何か話をしている。

ファルシスさんはボーっと立っていた。


「もうすぐ音まで拾えますからねー!」

すると水晶の色が少し強くなってきた。

色も青から赤へと変化する。

同時にざわざわと電波の悪い場所でつけるラジオみたいな音が鳴り始めた。

その音は段々と鮮明になってゆき……。



「いいか、クラナ……」

「はい、師匠……」

「おっぱいっていうのはな、あればいいっていうものじゃないんだ。 だからといってなくて許されるものじゃない。 女なら少しはあるべきだよ。 それがクラナには無い。 ゼロだ。 壁なんだ、男でもここまで壁な奴はいない、これがどういうことか……」

「おい、何の話してんだよ」

クラナが少し可愛げに「ふひゃあ!?」なんて驚く。

「そ、その声は!?」

「久しぶりだな、白いの。 何の話してたんだよ」

「そ、そろそろ私の認識を……それより! 無事なんですか!? どうやって声を届けてているんです!?」

「ああ、俺とクラナは無事だよ。 これはある魔法使いさんに魔法で話をさせてもらっているんだ」

ソラとクラナが空をキョロキョロ見回す。

「お、お兄ちゃん……?」

「クラナ……突然消えてごめん。 なんかユウウェイのやつらに誘拐されちゃったらしいんだ。 帰れるように頑張るから、手伝ってほしい」

「そ、そんなのわかってるわよ……いま、こっちからもいろいろ手掛かりを探しているとこ。 じゃ、じゃあアヌス呼んでくるわね……」

なんだか妹が冷たい。

お兄ちゃんは悲しい気持ちになった。

「お、おい クラナ待」

「マリ!? お前、マリか!?」

「え、ああ、アヌス。 俺だよ、心配かけたな。 クラナ達と無事に合流できたようでよかったよ。 俺はいまユウウェイに連れてこられている。 簡単には帰れそうにない。  戻れるように頑張るから、アヌスもいろいろ手伝ってくれ。 それでアヌス、なんでクラナはそんなに元気が」

「うおおおおお、マリ、マリ、よかった!! よかったぞ!! 生きていたのだなあああああああ!!」

「お、おう、俺のために喜んでくれるのはうれしいがだな、クラナと話が」

「いいぞマリ!! いいんだ!! 俺が今すぐ救ってやる! ああ、待っていてくれ!! 今行くからなああああああああああああ!!」


ぶち


突然水晶の映像が切れる。

「あ、あれ?」

「す、すみません、ちょっと声が大きくて怖い人が映ってたので……」

「あ、あはは……」

アヌス☆こわい。

「あの、もう一度繋ぎましょうか?」

きっともう一回繋いでも話せずに終わるだろう。

アヌスの仲間思いは感動するが、ちょっと熱すぎる。いい奴だけど。

「もういいですよ、きっともう一回やってもろくに話せないでしょう」



「水晶、ありがとうございました。 妹の姿が見れて安心しました」

「ええ、とっても綺麗な妹さんでしたね」

そう言うアメリアの姿はえも言われぬ美しさで……。

「あの、それで、この水晶、見たいものならなんだって見れるんです、ほかに相談はありませんか? この水晶やちょっとした魔法でできることなら、何でも協力しますよ」

俺がアメリアを凝視していると、もっと相談したいと思われたのか、協力してくれることになった。


ところでここで疑問が沸く。二つだ。

其の一、未来や過去は見ることができるのか? 無理だろうな……。

其の二、アメリアさんのあんな姿やこんな姿はいくら払えば見られるのか。 ただで見ようとは思わない。 無理だろうな、嫌われる!

「あのお……」

いろいろな想像で鼻息荒い俺にアメリアさんは小首をかしげる。

「アメリアさん、その水晶は本当に何でも見られるんですか?」

「はい、いけますよ?」

「未来や過去でも?」

「ええ、もちろん!!」

「アメリアさんの全裸……え?」

「え?」

「未来見れるの!?」

「い、一週間位なら……」

興奮して俺の顔が熱くなる。

未来が見られる!? 一週間!? だったら貴族がどうやって攻めに来るのかまるわかりじゃないか!

「い、今すぐ一週間後の未来を、この村の未来を見てください!! そこで貴族はどっから攻め込みますか!?」

「え? 貴族?……攻め込む!? そんな未来ないと思いますが、まあ、一週間後の村が見たいのなら」

すると再びアメリアは両手で水晶を囲む。

「未来を見るのは少し魔力をたくさん消費するんですよね! ちょっとだけお待ちください……」



「でました!!……え」

アメリアが一週間後の村の様子を見て絶句する。

そこには何もなかった。

ただむき出しになった大地が、何かにえぐられたようにあっただけだ。

よく見ると所々電流のようなものが流れているようにも見える。

「こ、これは……」

「ど、どうしてこんなことに……し、調べますね!」

アメリアが水晶に映る映像を少し巻き戻す。

すると突然水晶が焼け付くほどに光だし、収まったかと思うとそこには俺がいた。

正確には俺と二人の馬に乗った貴族、彼らが率いると思われる大群もいた。

「俺……?」

「マリさんですね、ゆっくり進めてみます」

映像の中で俺は二人の貴族と戦っていた。

身体強化の魔法だけで戦う俺は、戦い慣れした貴族に簡単に押し倒されてしまっている。

そして歩兵の槍に囲まれ、絶体絶命だ。

兵士は俺に槍を刺そうとする。

すると未来の俺は立ち上がり、何やら全身に光を帯び始める。魔法の光だ。

次の瞬間、俺の光が辺りを包み、俺もろとも村一つ、その周辺の地形まで消し去った。

そういう映像だった。



「マリさん……」

アメリア映像を切った。

その手は少し震えている。

「よくないのを見せました。 俺は魔力が人の何倍もあるくせに人の何倍も魔法がへたくそで、きっと一人で貴族に勝とうとして、でも無理だったから魔法に頼ろうとしたんだと思う。 それで、案の定失敗して……」

「だ、だからって、あの魔力は……あんなのもう人じゃありませんよ……それこそ神じゃないと……」

「この魔力の出どころは言えない。 相談に乗ってくれてありがとう、これから魔法なしで貴族に勝つ方法を考えます、騒いで悪かった」

俺はアメリアの顔を見ずに立ち上がる。

今すぐクナに相談しなくては……。


「待ってください」

店の入り口でアメリアに呼び止められる。

「何ですか?」

アメリアの立つ音が聞こえた。

「なんで貴族が来て、それとマリさんが戦うのかはわかりません。 どうしてマリさんが大量の魔力を持っているのか、わかりません」

アメリアは淡々と言葉をつなげる。

「でも、その力がとっても危険なことはわかります」

「ああ、この力はすっごく危険なんだ、いつ暴走するかわからない」

脳裏にはあの巨大な木が浮かんでいる。

手が震え、腰が抜けた思い出だ。 もう二度と強力な魔法は使いたくない。 試すのも嫌だ。 見たくもない。

「も、もしかしたら、この魔力でアメリアさんにいろんなエロいことしちゃうかもだぜ?……そうならないように、早く返しなよ」

「ええ、そうならないように、貴族退治、私が手伝います」

「ああ、そうだな、俺みたいな危険な男……え?」

アメリアのほうを見る。

なんかハアハア言っていた。

顔が赤く上気し、少しだけ涎が垂れている。

瞳孔は大きく開き、腕が震えていた。

「そ、そんなにおっきな魔力、見たことがありません……わ、私、おっきくて強力なのが大好きなんですよね……マリさんのそれを……私にも見してほしい!! です……」

俺の腕が振るえる。

「俺の周りはどうしてこう……その……変態なんだ……。 だめだ、危険すぎる、女の子に戦いの手伝いなんてさせられない!」

しかしアメリアは引き下がらない。

「でも今のままじゃ確実に負けますよね?」

「え、うんまあ……」

「そのうえ村が消し飛びます」

「それは……そうだけど……」

「そこで私です!!」

一気にアメリアの目が大きく見開かれる。底知れぬ輝きと共に。

「まだマリさんは貴族の戦い方を見てませんよね?」

「ま、まあ確かに」

「私にいろいろ手伝わせてください、貴族の戦い方も、魔法の練習も、貴族との実践だって、やらせていただきます!」

アメリアは両手を強く握りしめて俺に迫ってきた。

かわいいけど……変態……。 残念……。

「確かに、貴族の戦い方は気になるし、後日改めて見せてもらおうとか考えていたけど、魔法の練習とか本当の戦いにまで付き合ってもらう義理はない!」

「いいや、いいんです手伝わせてください!! お願い!! なんだってします!!」

アメリアは両手を合わせて懇願する。

「ダメだってば、危ないんだよ!」

「何でもです、マリさんのためなら何でもします!! 魔法以外でも……そうだな、料理に洗濯とか!」

一歩、また一歩とアメリアが近づいてくる。

「だから、それこそやってもらう義理はない! もう返してくれ!!」

「そ、それで満足できないのなら、わ、私がいろいろなご奉仕を……い、一緒にお風呂に入りましょうか……? あ、ああ、体で体を洗ってほしい? 仕方ないですね、それなら私も付き合うしかないですね、お願い!!」

一歩、また一歩と……ついに俺を扉まで追い込んだ。

「何の話だ!? ダメなんだよ!!」

アメリアは俺に壁ドンする。

涙目でつぶやいた。

「だめ、ですか……?」


「な、なんでそこまで……?」

アメリアが少しだけ俺から離れる。

視線を少し俺からずらして話し始めた。

「私のように青い髪で水晶を持っている人たちは、エルフェンと呼ばれます。 人間より魔力を多く持ち、その扱いに長けます。 エルフェンは数が少ないので、女性は生き残るために、強い魔力を持つ男性に簡単に惚れるのです」

「え、それって……」

アメリアがゆっくりと俺に近づてくる。

「マリさん……結婚してください……」

「は、はわわわわわわ!?」



(28.ある村人とついてない主人公の幸せ(?)な話② お悩み相談 了)

今日は朝投稿です

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