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15,最初の町の2つ目

夏が来たァァッ!

15.最初の町の二つ目



―――やめろ!!

金髪と白髪の美少女の喘ぎ声、観衆のどよめき、そのすべてを押しのけ何者かの声が晴天の空の元に響き渡る。

観衆の視線は一気に声のほうへと傾いた。

そこに立つ男は大勢の人に向かって野太い声を上げるのだ。

「貴様らッ!! こんな街中で何をしている!? 即刻町から立ち去れ!」

男が向ける指先が俺たち悪ふざけの集団であることは明らかだ。


堀の深い顔、程よく焼けた肌、筋肉、筋肉、筋肉。

筋肉の服を着ており、背中にはモ●ハンの大剣のように猛々しい巨大な剣が鞘に収められている。

面長でローマ人のような貫禄のある顔立ちをしており、イケメンだが怖い。

勇ましい肉体に武器に声、絶対強い。

あれはどう見ても身長が2メートルは超えている。

現代で言うと、米軍の将軍とかあんな感じだろう。

絶対かかわりたくないし、腕相撲とかしたら勝負つく前に指とか全部複雑骨折しそう。

もう一度言う、怖い。学校の教育主任のレベル100みたいな感じだ。


観衆は一瞬静まり返る。

平和な街に静電気が人から人へ飛び回るような小さな緊張が走る。

道に落ちている細かな砂粒が細かく震えているようにも感じられた。

男が俺たちに向かって一歩踏み出した。

厳かな声で、目の丸い聴衆の中、もう一度警告した。

「いいか、もう一度言う、立ち去れ!!」

こ、怖いい!!

なんか悪いことして怖い先生に呼び止められた時のような、背筋が吊り上がって足が動かなくなるあの感じだ。

「お、おい、クナ、早くここから立ち去ったほうが……」

「でもマリさん、ソラちゃんが止まりません」

「へ!?」

なんとこの状況でソラはクラナの胸に顔をうずめ、何もないのに腰を振っていた。

クラナが「んんー!! んんー!!」っと必死に抜け出そうとしている。

や、ヤバイ!!早く何とかしないと!!

「お、おいソラ、早く逃げないと、もういいだろ!?」

しかしソラには聞こえていない。

「お、お兄ちゃん!! 早く何とかして!!」

クラナが真っ赤な顔で懇願してくる。

このまま眺めていたいが、今はそんなことをしている場合じゃない!!

「お、おいソラ、クラナの無い胸に顔をうずめても楽しくないだろ!! 早く逃げないと殺されるぞ!!」

マッチョメンがまた一歩踏み出す。

床と砂のこすれる音で分かった。

そしてオーラでも分かった、ガチで殺される!!

しかし必死なクラナにはそんなことわからない。

「ちょ、ちょっと私はまだ発達途中なんだからね!! これから大きくなるの!!」

「そんなことはどうでもいいだろ!!」

「そんなことって何よおお!」


「ちょ、クラナ、マリさん、あいつが私たちまであと3歩まで近づいたときにおじいちゃんが奇襲をかけます、もうちょっと粘ってください」

「「え?」」

クナがぼそぼそと、周りに聞こえないよう小さな声で説明する。

「あいつがここにいる称号持ちの魔法使い、豪傑のアヌスです。あいつから仕留めましょう!」

あれが、魔法使い。ボクサーにしか見えない。

「あいつの剣には超強力な魔法がかかっていいます、私にもどれほど強力かは図れません。なので奇襲です」

ほんのり体が熱くなる。

今から、あいつを倒す!!


アヌスの歩みがだんだんと速くなり、威圧の厚みは膨れていく。

聴衆には怖がる者、不思議がる者、涙目の者、必死に何かを考える者がいた。

そしてついに男が俺たちの目の前、後3歩、一歩踏み込めばその剣の攻撃可能範囲にまで近づく。

「動かないか……ならば排除するまでだッ!! 我が名はビル・アヌス、大魔法使いが1人、豪傑のアヌスだッ!!!」

「え、やっぱり!?」「あ、あれが本物の……」「わ、わたしっ!!」

「ん?」

アヌスが自分の名を叫ぶと黙っていた聴衆がどよめき始めた。

次の瞬間……


アヌスが背中の大剣に手を伸ばす、それをつかんだ瞬間だった。

それはまるで、トランプのタワーが崩れ落ちるように突然、聴衆が叫び声をあげてアヌスに向かって走り出した。

「「「わああああああああああああああああああああああ!!!」」」

「ぬ、ぬお」

アヌスの背後から奇襲をかけようと試みていたファルシスさんが人の波に跳ね飛ばされる。

突然、町の人々が目の色を変えてアヌスへ突っ込み始めたのだ。

そして彼らは口々にこう言う。

「ああ、アヌス様、ずっと会いたかったです!!」

「これがあの伝説のアヌス様……!!」

「アヌス!アヌス!!お母さん本物だよ!!」

一気にアヌスは人の鎖に拘束され、身動きが取れなくなる。

「わ、わかった、わかった、ちょっとどいてくれ」

しかし人々はアヌスアヌス言って動かない。

俺たちは何が起こったのか把握できず、只々その光景を眺めていた。


人々の熱狂的なアヌス愛は止まらない。

「アヌス、サインサイン!!」

「握手してええええええええええ!!」

「こ、子供に触ってやってください!!」

もしかして……

「なあクナ、アヌスってめっちゃ人気者なのか?」

「みたいですね、ものすごいです」

あの巨体が押しつぶされそうなくらいの人の圧がアヌスにかかる。

「マリさん、あの爺の奇襲は失敗したみたいです。ここは一旦引きましょう」

「あ、ああ」

こうして俺はファルシスさんを置いて、白いのと妹を担ぎ、路地裏へと逃げた。

晴天だった空は少しだけ赤みがかかっていた。



(15.最初の町の二つ目 了)


今年は少々暑すぎますね

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