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12.オープニングのエピローグ

12.オープニングのエピローグ



朝食。

6人用の椅子に、疲れた俺、いつもの母さん、怒ってる?クラナ、怒ってるクナ、眠そうなファルシスさん、白いの、の6人でテーブルを囲む。

父さんは今日も朝早くから仕事だ。


ごくごくありふれたような朝食の時間。

母さんと白いのは黙々と朝飯を食べている。

なんだ?この白いの。雪?

俺が不思議そうに人の形をした白いのを眺めていると、なんとその白いのは声を発した!

「チッス」

それだけ言ってまたトーストを頬張り始める。

雪のように白い肌をした、無加工の鉱石のような真顔の少女だった。まぁいいか。


ファルシスさんが俺に一言。

「少年、醤油とって」

「は、はい」

ファルシスさんは、昨日の戦いのような重い声ではなく、孫に話しかけるおじいちゃんのように緩んだ声だった。

このじいさんなにちゃっかり仲間みたいになってんだ...?

あと、この世界にも醤油があるんだ。驚き、実家のような安心感。


3人3人で囲まれるテーブル、人の配置がなんかおかしい。

俺の左に母さん、右にファルシスさん、左前にクラナ、右前にクナが座っている。

目の前は白いのだ。確かソラッて名前のやつ。なんでここにいるの?


さっきから気づかないふりして黙っていたが、クナがこっちに負のオーラ全開のジト目を向けている。

おもちゃを買ってもらえなかった時の子供の目だ。


クナの方は見れないので、必然的に左前に視線がいく。

しかしそこにもこちらにジトジトした眼差しを向ける妹がいた。

「どうしたんだよ?」

俺なんかしたっけ......?

「別にっ! お兄ちゃんが夜通しその女といちゃついて立って別に気にしてないから、勝手にすれば!?」

クラナはプイッと顔を背けてしまった。

なんか不機嫌だ。


背けた顔はソラの方を向いている。

ソラはそれを自分に向けられた、と勘違いしたのだろうか、顔が赤くなっているようだ。

クラナはウザそうにソラを睨み付けて刺のある声で言った。

「って言うかっ!!なんでソラがここに居るのよ!!」

しかしソラはさも当たり前のように返答する。

「そんなの私がクラナの正妻だからよね? 居ても当然と言うか、ほら、あーんしてあげるよ?」

それを聞いたクナは着火材のように小さく舌打ちとともにソラの頭をひっぱたいた。

ベチンッという音とともにソラが頭を抱える。

「うぅ~。クラナ私SM無理~。やしゃしくしてぇ~」

「うっさいっ!!気持ち悪い!!」

さらに渾身のチョップ!!

ガンっという音とともにソラが涙目になる。

「クラナママに誘われただけだよ~。大人しくするからやめてぇ~」

俺はそのクラナママに聞いてみる。

「あの女の子と仲良いの?」

「うんー、良く遊ぶよ?」

しかしクラナママはソラの方は一切見ず、一心不乱にトーストに食らいついている。

それはまるで仕留めた獲物に食らいつく狼のようで、無我夢中で、只々食べることに全力、という感じだった。とてもソラと仲がいいようには見えない。

「少年、そこのシロップとって」

「は、はい」

俺は向かって左にあったトーストに付けるシロップをファルシスさんへと運んだ。


ごくごくありふれたような朝食の一時だ。


----------------------------------------


朝食をとり終わって、各々家の中で何故かごろごろ、くつろぎ始めた。

ファルシスさんは、おっさんのようにけつをかきむしりながら横になっている。おっさんか。

ソラはソファーの上で仰向けで寝ているようだ。

その顔にクラナが落書きしている。

「ふふっ」なんて笑いながら落書きするその姿は微笑ましく、ソラとそれなりに仲が良いことを教えてくれた。

クナは皿を洗う俺をジトジト見ているようだ。みないみないっと。

各々、まるで実家のようである。このまま居座んのか……?


そんな中、母さんが俺に一言。

「魔法の修行をするなら……旅よね」

「え?」

「たしかに」

じとじとクナが便乗。

「え?」

そこへおっさん、ファルシスさん登場

「なに……旅……? わしも若いころに旅しておった。 あの頃は…………」

「あ、そっすか」

ファルシスさんはしゅんとした。すこしかわ……いくねーよ。

「やっぱり、魔法の修行といえば旅よね、行ってくれば?」

「え、でもそんな急に」

「行きましょうよ!!マリさん!」

突然クナのテンションが上がる。

「はぁ? 魔法の修行ならここでもできるだろ、他に目的もないのに行かないよ」

しかし面倒くさいので嫌だ。

「ぶー」

「ほっぺ膨らませてもだめだ、こんな危険な魔法を使って各地に深刻な傷跡でも残したらどうする?」

「深刻な傷跡とは?」

「大爆発とか、でっかな木とか」

ちょっと加減を間違えるだけであんな事になってしまうんだ、こわい。

「そんなもん私が元どうりに直しますよ!ね、いこいこ!!」

騒ぎをかぎつけ、クラナがペンから手を放し、寄ってきた。

「何の話?」

「お、クラナちゃん、魔法修行の旅、行きたいですよね?」

クラナはクナに話しかけられて一瞬嫌そうな顔をした後、俺のほうを向いて言った。

「お兄ちゃんが行きたいの?」

「いや、俺は行きたくはないんだ……」

俺の言葉はクナにさえぎられる。

「いやぁ~突然マリさんが、魔法の修行したい!って言いだしましてね」

「おい、俺はそんなこと……」

「ちょっと、お兄ちゃん困ってるじゃない、またあんたの勝手なんじゃないの?」

クラナが苛立ち始める。

するとクナは何も言わずクナのほうに背を向けた。

少しだけ俯いており、その顔はこっちを向いているのによく見えない。

クラナは構わず攻め立てる。

「ちょっと、なんか言いなさいよ……」


一瞬、一瞬だけクナが落ち込んでいるように見えた。見えただけだった。

「もう、いい加減に……」

そうクラナが行ったとほぼ同時だっただろうか、クナが俺の腕にしがみついてきた。

左腕ががっちり固定される。

「な……何してんのよ!」

クラナの小さな叫びにクナが相手に聞こえるような大きなつぶやきで答える。

「弱いくせに」

「んなっ……」

「昨日も私に負けたのに、もっと強くなろうとは思わないのですか? そんなんじゃその、“邪炎”の位もなくなってしまいますよ?」

「う、うるさいわね……」

クラナは何か後ろめたいことが見つかった犯罪者のように、その声から覇気が消える。

「最近全然特訓なり修行なりしてないようですけど、大丈夫なんですか?」

「ちょっとくらいしてるわよ……」

「へぇ、じゃあ今見せてくださいよ、どれだけ強くなってるんですか?」

「あれ、お前昨日クラナに、強くなったな、みたいなこと」

「ちょっとうるさいです」

俺のつっこみは一声でごみのように切り捨てられてしまった。

しかもクラナはその声にきづいてすらいなかったようだ。


ゲスイ顔をしたクナによる、魚釣りのような誘導は続く。もうノリノリだ。

「ほら、このままじゃあ私には一生勝てませんよ~?いいんですか?」

「ぐっ……」

クラナが歯を食いしばるようにその表情を硬くする。わかりやすい。

「ほらほら、悔しかねえんですか~? いつまでも私の後ろをぴよぴよ追いかけるんですか? ほら、ぴよぴよ~、ぴよぴよ~」

「んぬぬぬ……」

クナはひよこの真似だろうか、手をパタパタさせてとことん煽る。

それからぴよぴよが2秒ほど続いたときだろうか、魚が釣れた。

「ん、んん、うがああああああああっ~!!」

クラナが口を尖らせぴよぴよしているクナを、魔法で出したトンカチでぶん殴る。

ガゴン!!とエレベーターが床に落ちたような音。

「びゅぎゃあ!」と、つぶされたタコのようなクナの声。

クナは床に倒れこんだ、頭がぷしゅー、としている。

「お、おま、やりやがった」

俺の妹がこんなに暴力的なわけがない。

嘘、ほとばしるほど暴力的。

鼻息荒いクラナは俺のほうを向いて叫ぶ。

「おおおお兄ちゃん!!修行よ!魔法の修行に行くわ!!明日から!!」

「マジですか……」

「早く準備するわよ!!」

「はい……」


こうして魔法の修行?の旅に行くことになってしまった。どこ行くつもりだよ……。



(12.オープニングのエピローグ  了)



(後書き)

本日0:00に投稿する予定でありましたが、寝落ちしてしまいました、遅れてしまい申し訳ございません。

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