1,目覚めてみれば転生してた話
1,目覚めてみれば転生してた話
「な、なんだこれぇ!?」
俺は目の前に突然現れた、赤くぶよぶよしている生き物に腰を抜かして倒れこむ。
そいつには、無数の青い目と蛇のように動く触手が這えており、スライムのように丸い体をグニョングニョンと左右にうねらせていた。
その度に、辺りに飛び散る怪物の肉片が、プシューッとヤカンでお湯を沸かしたような音をたて、草原の草を溶かし、えもいわれぬ悪臭を漂わせている。
身長176cm、中肉の俺の3倍くらいデカイ怪物が突然目の前に現れたのだ。
「何処だ? ここ」
慌てて高い声が口から出る。
見知らぬ光景はこの怪物だけではない。
見渡す限りの草原や、それ以外に何もないこの場所も、怪物同様に、俺には初見だ。
まぁ、気がつけばだだっ広い草原のど真ん中にいた。 端的に説明するとそんな状況だ。
そして怪物が現れて、今にも襲われそうだ!!やべぇっ!!
怪物の10数個ある目玉が一斉に俺に焦点を合わせた。
「ひいぃぃっ!!」
狼ににらまれたかのように背筋が硬直する。
寒くもないのに自分の上下の歯がぶつかり合い、カタカタと音を刻むのがわかった。
怪物から伸びた触手を紙一重で避ける。
「結構早いっ!」
さらに怪物から触手が伸びてくる。
今度は避けきれず、俺の体はヌメヌメベトベトの触手にからめとられる。
「や、やめろっ!! なんなんだよ!?」
全身を拘束されてしまった!!
必死に振りほどこうともがいてみるが、効果がないようだ。
こ、これってエロ同人誌的なあれじゃねーか!!
「や、やばひい!! このままじゃ俺の貞操がああああああ!!......ひぃっ!!」
ああああああああああ!! 触手の一本がズ、ズボンの中に侵入してきたあああああっ!?
せ、せめてやしゃしくぅぅぅぅ!!
初体験の覚悟を決めようとも決めきれなかったその瞬間ッッッ!!
ぶしゃあああん!!
「んんんっ!?!? なんか破れた!? けつの膜破られた!?!?......っておおっ!?」
消防士が放水するときのような音がしたかと思えば、俺は怪物に投げ飛ばされていた。
結構な高度でふわりと浮かび、放物線に沿って落下する。
従って、俺は地面に尻を打った。
「ってぇ......まったく、なんなんだよ、俺は、えーと......確か部屋で絵を描いて......? それで......どうなったんだっけ? クソッどこなんだよここは!?」
そうだ、俺はイラストレーターで、組んでいる作家さんに要求された、魔法少女の絵を描いてたんだよ。
金髪で背が低くて、胸が小さくて、可愛い衣装を着ている魔法少女クラナの絵だ。
「ちょっと、あなた大丈夫?」
と、そこで、見知らぬ少女が俺に向かって手を伸ばす。
俺はその手をつかみ、「んっしょ」と立ち上がった。
「ん、ありがとう......あー、確かこんな感じの魔法少女を描いてたんだよなー」
あー、うんうん、これこれ、この女の子。
肩を流れ、腰まで落ちる金髪ロングの女の子。
俺より頭半分ほど小さい、見た目女子高生くらいの身長だ。
大きい瞳に少し鼻の位置が高い美少女である。
燃える炎のような、少しだけ吊っている紅色の瞳を持っている。
情熱的な瞳とは対偶に、冷えきった固そうな胸が特徴だ。
服装は、青を貴重とした制服のようなものを来ている。
しかし、中学、高校のような制服とは違い、スカートは短くヒラヒラだ。
上半身には下着なのか、締め付けの強そうなウェットスーツのようなものの上に、ブレザーを羽織っている感じだ。エロい可愛い。
微々たる胸肉を押し消すには十分な程度には、締め付けられている。胸が。
まあ、要約すると、
「金髪で背が低くて、胸が小さくて、可愛い衣装を着ている魔法少女」
「ちょっ、胸が小さいってなんなのよ!?」
おっと、声に出してしまったようだ。
にしても似てるなー、俺が描いていたクラナに本当にそっくりだ。
絵が産まれてきたようだ。
「あぁ、悪い悪い。 ......って!!あれ!! あれ来てるよ!! こっち来てる!! どうしよう!?」
俺を投げ飛ばした怪物が、だんだんとこちらに向かってどぼどぼ音をたてながら近づいてくるのが見える。
あの巨体がとても小さく見えるな、俺って結構遠くまで投げ飛ばされていたのかな?
「はぁ!? なによその謝りかたは!? っていうか? あんな下等魔族も倒せないの!? ダッサァ~~!!」
怪物など何処吹く風、少女は俺を甲高い声で罵倒する。
が、今の俺はそれどころでは無かった。
「こ、今度こそ貞操が奪われるっ!!?」
「まったく......ごちゃごちゃ五月蝿いわね!! あんなの、こうして、コウよっ!!」
高飛車な声で少女は言った。
素早く、人差し指をピンと伸ばし、「こうして」にあわせて、ピンポン玉くらいの大きさの、赤く光る玉を指先に作り出す。
「コウよっ!!」と同時に指を前に振って、赤玉を怪物に飛ばした。
赤い玉は、ゆっくり、怪物へとまっすぐ飛んで行く。
モワモワと光を放つその玉は鬼火のようにも見えた。
「......?」
しかし、浮いている? 不思議だ。
すっと飛んで行く赤い玉を見つめ、頭上に疑問符を浮かべる俺に少女は、「ふふんっ」と笑い、「まぁ見てなさい?」と、自信ありげな顔で豪語した。
「あれで倒すつもりなのか?」
問いかけるが、怪物の方を見ている少女からの返事はない。
そうこうしているうちに、赤い玉は怪物に接触した。
「ぷししぃっ」と弱々しい音を上げて赤い玉は消えてしまった。
「......はぁ?
お前、あれで何を...---
......あぁ、聞くまでもなかった。
後悔したのは"その"7秒後。
状況を把握したのは"その"5秒後。
"その"が起きたのは今から10秒前。
"その"とはこれだ。
赤い玉などお構いなしに進み続ける怪物。
再びその下品で下劣で冒涜的な触手をイケメンの俺に向けて伸ばした、その時。
怪物の体の内側から光があふれでて......
どっかああああああん!
爆発四散した。
俺の前方20m程先で。
どかあああああん!! とか、ばああああああああああんんんんっっっ!! とか、ずばあああああああんん!!って感じに。
一瞬、辺り一帯が赤い光に包まれる。
次の瞬間飛んで来たのは赤い血と真っ赤の肉片、津波のように押し寄せる煙幕。
煙がおさまれば状況が見えてきた。
怪物の姿は跡形もなく、というか、そいつのいた、平らな大地は隕石でも衝突したかのように大きく凹み、核爆発を彷彿とさせるキノコ雲が空に浮かんでいる。
端的に言えば、エヴァンゴエリオンの●●インパクトの爆発が目前で起こった感じだな。
キノコ雲も立ち消え、周囲は静まり返る。
なんでまだ視界が赤みがかかっているのかと思えば、全身が血まみれだった。眼球にも血がついていた。
虫を素手で触ったような不快感に襲われる。うげぇ。
全身動物の血まみれとか気持ちが悪すぎる。
少女はどや顔で俺に言った。
何故か彼女は全く汚れていない。
「どう? すっごいでしょ?」
「ひぇっ......?はへ?」
こ、言葉を発しようとするが、口はもごもごするだけで人の言語が使えない。
「......て、あんた防御魔法も使えないわけ!? まったく汚いわね。 変な格好だし、私の家に来て体を洗いなさい 家、そこだから」
「へ......? あ、うん」
(1,目覚めてみれば転生してた話 了)
初めて書きました。
これからも、頑張って投稿したいと、思います。
ペースは、1週間に1話の予定です。(たまに書き溜めて、一気に投稿する時があるかもしれません)
よろしくお願いします!!