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捕らえられてはどうでしょう①

 

 

魔法を発動するにはいくつかの手順を踏まなければならない。まずは魔力石を用意し、その属性の魔術式をそれに付与する。この魔術式を付与できる資格を持つものを一般的に魔術師と呼ぶことが多い。


 そして魔力石と同じ属性魔力を込め、これで魔法石が完成する。ではどうやって魔法を発動させるのか。それは、特定の【呪文】を唱えることが必要になってくる。この特定の【呪文】とは魔術式それぞれに決まった語句を唱えることを意味する。


 これだけ言うと、魔法とは誰でも使えるように聞こえなくもない。お金はかかるが魔法石はどこでも買えるし、魔力を込めるのは魔力発生装置で事足りるからだ。

 実際、私たちの生活の中は魔法で溢れている。


 しかし、ここで問題になってくるのが魔法の階級である。魔法の階級は主に二つあり、その威力や効果によって下級魔法と上級魔法に分けられる。

 私たちが普段日常で使っているのが下級魔法、これは【呪文】の際に魔力を使わないものだ。

 それが上級魔法になると、この【呪文】を唱えるのと一緒に属性魔力を流さなくてはならない。


 後から聞いた話だが、この魔力を外に出すということが普通の人にはできないのだという。私はなぜかできていたので普通だと思っていたのだが、他の人に聞いてみても自分で魔法石に魔力を込めることはできないらしかった。


 今日は銭湯の定休日。しかし、私たちは休日を満喫するでもなくレイヴンと一緒に浄化機を修理に出すために街を歩いていた。こうして街を二人で歩くことはあまりなかったので新鮮ではある。


 しかし話題に困っていた私はそんなことを思い出して、ふと隣にいるレイヴンに疑問に思っていたことを聞いてみた。


「この間レイヴンが使っていた水の魔法石。あれはあんな魔法を出すものじゃないはずよね?」


 あれの魔術式はシャワーのように水を出すものだったはずだ。【呪文】はそのまんまの【ウォーターシャワー】魔力を込めなくても発動できる下級魔法である。しかし、レイヴンが使ったあの時の魔法は攻撃魔法とまではいかずとも上級魔法に分類されるほどの威力を持っていたので疑問に思っていたのだ。


 この問いにレイヴンは少し困った顔をすると、何かを誤魔化すような素振りを見せた後勘弁したように答えた。


「実は魔術式と言うのは改変できる。俺は水の魔術式を少し弄って威力を高めたんだよ。【呪文】の際に魔力まで込めてしまったから魔法石は割れてしまったけどな」


「そんなこともできるのね」


 感心したように私が頷いていると、レイヴンが何か言いたげにこちらを見ていることに気づいた。彼はまだ私に遠慮している部分があるのか、時々変なところに気を使う。私が聞き返すと彼は少し言いづらそうに質問してきた。


「あー…前から思ってたんたが、ルーシーはやけに魔術式について詳しいな」


「そう?たしか、昔誰かに少しだけ教わったのよね」


 誰かは思い出せないけれど、なかなかためになることだったから内容はよく覚えていたのだ。


 ひゅうと北風が髪を揺らして私は思わず肩を震わせた。少しでも寒さを和らげようと必死に腕をさする。


「うぅ、それにしても寒いわね。最近は室内に籠ってたから気づかなかった」


「買い出しとかクロの散歩も全部俺に任せてたからな」


 レイヴンに少し恨みがましい目で見られる。冬の苑は寒く、外に出る度に身が凍えるような寒さがある。幸いなことに雪はあまり降らないが、歓楽街にある温泉辺りは儲かってそうだ。まあ、銭湯は汗を流す場所でもあるので夏でも売り上げがあるのがいいところではあるが。


「寒いの苦手なのよ、暖かくなったらちゃんとやるから…」


「ふっ、頼られるのは嬉しいから気にしてない」


 ぽんぽんと私の頭を叩くレイヴン。私の年齢を知ってから彼は時々こういう仕草をするようになった。なんだか甘やかされてるみたいで少し頰が赤くなる。誤魔化すように目を背けるとちょうど曲がらなければいけない道が見えてきた。


「あ、レイヴンこっちよ。ついてきて」


 黒い外套の端をつかんで引っ張る。その瞬間、前にもこんなことがあったようなひどい既視感を感じて首を傾げるが、気のせいだと自分を納得させた。




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