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私っていくつに見える?

 



 今日の夕食は、普段は出ないトマトがそのまま出された。なんでもルーシーが近所の八百屋さんから無料で貰ったものだそうだ。なぜだか、食べている途中にルーシーがじっと俺のことを見てきたのだが、なにも反応がないとわかるとあからさまに落胆した顔をしていた。


「それは?」


「酒瓶よ!今日はレイヴンの歓迎会をしましょう」


 お風呂から出た後、随分と機嫌がよさげに待っていたルーシーの手元には茶色い瓶が握られていた。ラベルには煌架抄と達筆な苑字で書かれており、どうやら中には酒が入ってるようだった。


「それでね、今日ぐらいは私も飲んでいいと思うの。だって、ハステルって成人は15なんでしょう?」


「苑は違うのか?」


「苑では一般的に18歳からが成人とみなされるわ。もちろん、お酒もね。でも今日くらいはいいわよね?ね?」


 そう言って期待のこもった眼差しでこちらを見てくるが、俺にはルーシーの言っている意味が全く分からなかった。別に俺の許可など取らなくても普通に飲めばいいんじゃないか?


「ルーシーが酒を飲むことに何か問題でもあるのか?」


「え?だって一応この国では18歳まで飲んじゃいけないことになってるし…」


「だから、18歳から飲めるんだったら何も問題はないだろう?」


 はてなマークを浮かべる俺と、同じように首を傾げているルーシー。何かが噛み合ってない気がする…すると、彼女は唐突に何か閃いたのか、信じられないという顔をした。


「レイヴン…その私っていくつに見える?」


 脈絡のない質問に思わず眉を寄せながら俺は見たまんまの感想を答える。


「俺と同じぐらいか、少し下か?」


「ちなみにレイヴンっていくつ?」


「確か今年で26歳だ」


「アウトーーーー!!」


 バッテンを作って叫んだ彼女に思わずビクッと肩を強張らせた。俺は何か間違えたのだろうか?


「私は今年で17歳になります。さらに言えば今はまだピチピチの16歳です」


「は?」


 おそらく頭が真っ白になるとはこのことだろう。16歳?俺の知っている16歳と言えば一応成人としては扱われるが、まだまだ子供の範囲をでないような年齢だ。


 俺は無意識に、彼女の容姿をじっと見つめた。肩まで伸びたストレートの水色の髪は一つにまとめられていて、出されているうなじが妙に色っぽい。紺色の目は彼女の落ち着いた雰囲気と芯の強さを感じさせ、整った顔立ちも合わさって頼れる美人といった印象を持たせる。


 なにより、彼女の170cmはあるだろう高身長からくるスラリと伸びた手足と、その大きな(…あまり言いたくはないがEは確実にあると思う)部分を見れば初見で彼女が二十歳未満だと気づく人はいないだろう。


 だが、心当たりはなくもない。彼女の口調や言葉はそれこそ年齢よりも落ち着いてはいるが、声質が若い。もっと言うならば少女特有の、頭に残る可愛らしい声している。


 そこがまたルーシーの魅力ではあるのだが。


「私って10歳も老けて見える?」


「いや、老けて見えるというか…」


 少なくとも少女には見えない。しかしこれを言ったら怒られるのは確実なので言わない。女性の年齢の問題はデリケートなものだと聞いたことがあるからだ。


「まあ、なら飲まない方がいいかもな。…俺も飲まないから、ルーシーの18歳の誕生日の時に一緒に飲もう」


 そう言ってから気づいた。これではまるで、来年も一緒にいることが確定してるみたいな言い方ではないか。


「わかったそうするわ。もうちょっと我慢する」


 拗ねたように酒瓶を仕舞いにいくルーシーに俺はなんだか泣きそうになっていた。来年の誕生日に俺がいることを当たり前のように受け入れてくれた。


 その事が、自分でも驚くほど嬉しかったのだ。



 軽く雑談をした後、ルーシーが二階に上がりリビングのソファに寝転んだ俺は、先ほどの出来事をよくよく思い返していた。




「俺とルーシーの年の差って10歳も離れているのか?」



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