第9話① 片鱗
久々の投稿になります。
ぜひ読んでいってください。
伏線会です。
カウントは、既に2まで数え終わっていた。
最後の2秒になるまで僕は自らの状況を整理しきれなかった。
いや、最後の2秒になっても整理しきれていない。
だが、やるしかないのは把握できた。
勢いよく走り出すと同時に注目したのは右目。
眼帯をしていることから、おそらく視力はないだろう。
つまり・・・・
残り1秒のカウントを終えたとき、奴までの距離は残すところ2m程度だった。
カウントが0を迎えると同時に僕の拳はやつへ吸い込まれた。
何故か僕の左腕は血を大量に噴出していた。
「・・グッ・!!!!」
体全体がバーナーで炙られ続けているようだった。
意識は影が視界を覆う瞬間まで、意識は続いた。
暗い。ここはどこだろう。
何故かそんなこともわからなかった。
正確には、目覚めたばかりで周囲に興味を持つ以前だった。
どうやら洞窟の中のようだった。
隣には脱出後の為の荷物。
調度目に映った左腕には、一切の傷が残っていない。
ようやく現実味を帯びてきた思考に、絵空事のような気持ち悪さが纏わり付く。
どうやら洞窟は思ったより小さい様で、出てみると、200m程先に村の外壁が見えた。
「成功したっことで良いのか?」
独りでぼやきながらも、記憶の糸を辿っていく。
あの時僕は・・・・
いくつか上がった断片的な記憶。
奴の攻撃は僕に当たらなかったこと。
その後血で視界を奪って逃げたこと。
それから逃げている途中で意識が途絶えたこと。
何故生きてここにいるのだろうか。
そもそも今日は何日で今は何時か。
今は時間がある。
状況の整理をしなくてはならない。
繋がった左腕を不思議だ、と思う。
不思議な思考をしながらそれは当然のように思えていた。