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テンダリスドール  作者: 比嘉 江志
第1章 回生
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第8話 開演

––––教会侵入後、中央聖堂––––

現在侵入から10分が経過したが、裏口からの道は曲がりくねっていて、中央聖堂に着くにも時間がかかってしまった。

だが、シアンの事前調査によると、おそらくここに地下への入り口があるはずだ。


正直どうやって事前調査したのかは謎だが、あえてそこには触れなかった。

「聞きたい事が1つできたな。」

このためにも、必ず帰らなくてはならない。


と、そんなことを考えていると、地下への入り口と思しき扉を見つけた。

「・・・開けてみるか。」

もうとっくに教会に侵入しているはずだった。


それなのに、自分がこの扉を開けた瞬間から、「決定的犯罪」を犯してひきかえせなくなるような気がした。


張り詰めた鼓動を聞きながら、息をのむ。

ゴクリ、という音が自分の外に大音量で流れている感覚。

「いくぞ」


ゆっくりと、扉を押した。




この少年は、何をしているのだろう。

酷く緊張しているように感じる。

教会地下、物置部屋前の個室で、金髪の警備員は考えた。


今この上を歩いている少年は、誰で、何をしているのだろう。

普段だってこの上を通る人間はいる。


ただ、この少年には他の人間とは違う点が存在する。

それは「地下に降り、こちらに向かって歩いている」という点だ。


警備員は、いや、その男は、久々の来客に胸を躍らせていたのだ。


男は、この地下空間でもう7年も生活している。

外に出ることのできないこの男にとって、ここに訪れる人間は何よりの楽しみだった。


・・・最後にここに訪れたのは誰だったろうか。・・

確か、2年前に新しい警備員が2人来た。それが最後だったが・・・


「あの2人は、つまらなかったなぁ」

今も警備を続けるその2人は、ただただ、教会というものを信じているようだった。


「妄信的な思想は、判断を鈍らせ、自らを死に近づける。」

今では体に染みこんだその言葉を忘れないよう、暗闇の中で、1人つぶやく。


「彼はどんな子かな。見たいもの、見せてくれるかな。」

自分でも気づいている、狂気的で薄い笑みを浮かべる。


・・・自分から網に掛かりに来る獲物か、蜘蛛殺しの蛇か、楽しみだね・・・・

彼の意識は再び、闇の中に消えていった。




扉を開けると、そこには幅70cm程の階段が広がっていた。

「1人なら、通れそうだな。」

蝋燭の明かりでは、暗い足下がギリギリ見える程度だったので、足下を注意深く確認しながら下っていく。


カン、カン、カン、カン。

しばらくは、足音だけが、終わらない回廊とともに流れていた。

「ん?」


気が付くと、そこには床が広がって居た。

「!!!!!!!」

なにより、それと同時に聞こえて来た2つの足音は、僕の意識を明確に取り戻させた。


事前の作戦では、警備は3人、行方は気になるが、居ないのなら好都合。

さらに状況を分析していくと、どうやらこの2人は1本の廊下を左右対称に往復しているようだ。


・・これなら行ける!・・・


呼吸を整え、2人が廊下の真ん中で交差する瞬間、

T字に交わった階段から飛び出し、瞬時にカルマを発動。

全力で両手で抑えた頭を壁にぶつける。


ゴンッと鈍い音がして、2人の警備員はその場に倒れた。

心の中でふぅ、と安堵の息を漏らしながらも、次の行動へ進む。


おそらく物置部屋には鍵かが掛かっていて、その鍵はこいつらが持っているはずだ。

「っと、予想通り。」

鍵は背の高い方の胸ポケットに入っていた。


そして、どうやら通路は右に続いて・・・・

「あ?」

右を見た先に映ったのは、明らかに扉で、鍵もついていた。


これは・・

「こんな近くにあるとはね。」

ぼそっと呟き、一刻も早く地図を回収するために動く。


ガチャッ、とたいそう古ぼけた鍵を開けて入ったものの、広い部屋の中にはほとんど何もなかった。


「これが、多分地図だな。閉じてるけど・・」

今は開いて中を見るよりもここから出ることが先決だ。


物置部屋の扉を開け、廊下に戻った。


次の瞬間、僕の目に映ったのは、元の廊下ではなかった。

少し痩せた、だが筋肉質な肌を袖から晒し、緩くつり上げた口角を機械かと疑うほど微動だにしない微笑みを浮かべた男。


年齢は・・20代後半くらいに見える。


「誰だ、そこで何をしている。私はここの警備をしているも・・・」

「ハッハッハ、それはちょっとむりがあるねぇ?」

とりあえず思いつきで言ってみたが、やはりこの男も警備員。


「そうだな、悪いけど、そこ通してくれないか?」

「そうだね、悪いけど、ここは通せないな。」


ここまで来たら力ずくでやるしか・・


「でもね、僕は別にここ通してやっても良いんだ。」

「・・どういうことだ。」


男はニヤリと笑うと、道化のように語り出した。

「僕はここを通しても良いんだけど、その前に、君とちょっとおしゃべりがしたくってね。」


この男の言っていることにはまるで信憑性が無い、が、男の腕を纏っている紫色のカルマは、僕に選択肢を与えているようには見えなかった。


その思考を察したのか、男は口を開き始めた。

「5秒待つから、その間に僕を殺してごらん。よーいドンッ!」



「は?」





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