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テンダリスドール  作者: 比嘉 江志
第1章 回生
4/9

第4話 カルマ

4話です。

ゴーン ゴーン ゴーン

朝6時を告げる鐘で、勢い良く目を開ける。


「なんてったって、今日はカルマを教えてもらうんだからな!」

呟き、ベットからはね起きると、素早く身支度を整える。


こうも感情が昂ぶっているのは、この世界に来てから、やっと自分の中に頼れるものを作れるかも知れないからだ。


「ガタガタうるさいなぇ。」

「わかりやすくって、可愛らしいですね。」


バンッ!と扉を開ける音に続いて、

ガタガタガタッ!と階段を降りる音。


「シアンいるか!?」

「はい。こちらに居ますよ。」

「昨日の約束通り、色々教えてくれよ!!」

「もちろんです、が、ここでは危ないので、場所を移動しましょう。」


シアンは後ろ手にドアを開けて外に出る。

追いかける様にして僕も続く。


「ねぇシアン、どこに行くの?」

「この村の外れに、『霞の森』という場所があります。」

「そこに向かうのか?」

「えぇ。人目を避けられますし。」


そんな場所があるなんて、タキの日記には書いてなかったけど。

まぁそんな場所だからこそ、か。


そんな思考を繰り返すうちに、

「もう着きますよ。」

とシアン。


「え?まだ街から出てないけど?」

「そこの穴に飛び込んでください。」

「は?ちょっと待てよ?」


中を見に行ったのが運の尽き。

ドッ。

背中から鈍い音がした。


「うわああああああああああ!!!???」


落ちている最中、後ろから控えめな笑い声が聞こえた気がした。



–––––数十秒後–––––

「着きましたね。」

シアンの声に目を覚ますと、そこは木々に囲まれた半径15メートル程の空き地にだった。


「目が覚めた様ですし、早速始めましょうか。」

淡々と話すが、こいつはどうやってここに来たのだろう。


・・・・まぁ、いいか。・・・・

「おう。始めるか。」


「まず、カルマの説明からですね。」

「頼む。」


「カルマは、人の体内に存在するアルカエネルギーに、命令を与え、その性質を変化させるものです。」


「具体的にはどう使うんだ?」


「体の外に出してしまうと、その力は著しく下がってしまうので、基本的に身体能力の強化に使います。」


「あぁ、そうだったな。」


「次にカルマの発動方法ですが、これは感覚です。」

「えっと、つまり、どんな?」


「まず、体内のアルカを感じとる必要があります。目を閉じて、自分の体、心の内側に意識を集中してください。」


言われるがまま目を閉じ、心臓のあたりを強く意識する。


鼓動が、聞こえる。


今、今この瞬間の僕は何者だろうか。


この鼓動は僕のものではなく、タキのものだ。

それなら、この音を聞いている心は僕なのだろうか。


僕の中には、タキと僕の2人がいる。


そんな思考の中で、目の前に純白と漆黒の色をした2つの丸い光が現れた。


「うっわっっ!」


驚いて後ろに倒れると、目の前には先ほどの木々と、シアンが居た。


「見えましたか?」


この質問の意図を理解するのに時間はかからなかった。


「まぁ、一瞬だけど。」

「第1関門は突破の様ですね。」


シアンは嬉しそうに言う。


「次からは簡単です。もうあなたには、体の中を巡るアルカが感じられるでしょう。」


なんとなく、だが確実に、そこにあるものを感じた。

「そうみたいだ。」


「では、そのアルカを、出来るだけ体の外側へと送ってください。」


内に感じるエネルギーを発散するイメージで力を込める。


「こ、こうか?」

「もう少し外側に、もう少しです。」


「ふっっっ!!」

力を思い切り入れると、皮膚にどこか禍々しく、だがどこか美しい模様が浮かび上がった。


不思議ともとから知っているかのような懐かしさと、触れてはいけないような儚さを感じた。


「もう、力を抜いても大丈夫ですよ。」

「ん?お、おう。」


言う通り力を抜いてもエネルギーは体表に留まったままだ。


「アルカは体の中に向かって行きますが、それ単独の力では体表を通過できないのです。」

「なるほど、だから出るときは出るけど戻れないってことね。」


「はい。戻すときも自分の意思で戻せますよ。」

「これで何が変わったんだ?」


「その場で跳んでみてください。」


意味がわからないが、とりあえずやってみる。


まず激しい重力感、その後に急な浮遊感。


「はっ???????????」


地面が10メートルは下にある。

もうだめだ、目を瞑ろう。


と思うのもつかの間。

地面が足元にある。痛みやおかしなところはない。


「わかりましたか?」

「こいつは凄いな。」

「じゃあ、その状態で私に触れたら今日は終わりにしましょう。」


・・・・・・・・・・・

「いや、いくらなんでも楽すぎじゃ・・・」

「そう思うなら、やってみてください。」

浮かべた微笑はいつもと違う色を帯びている。


「じゃあ、いくぞ。どうなっても・・・」

言いかけたとき、20メートル程の場所に離れていったシアンの体に模様が浮かび上がった。


鮮やかで透明感のある赤の中に、毒々しいが美しい紫が咲いていた。


何より、これはやばい、しか出てこない。

緊迫した威圧感が僕の頭を縛った。


その、あるいは恐怖のような感情を振り切るようにして走り出す。


空気は轟音を耳に届けるが、減速はまるでしない。


右斜めからシアンに突進し、衝突する数歩手前で跳び、宙返りしながら彼女の肩へ手を伸ばす。


次の瞬間、彼女はそこに居なかった。


追いつかない頭を必死で回す。


つまり、回転で視線を切った一瞬に移動した、ということか?


そんなバカな。


「ヨウさん、貴方は確かに速くなったかも知れませんが、それは相手との距離の変化が生じ易い、ということですよ。」


「その力に見合った戦い方を教えるのが私の役目ですから、ゆっくり頑張りましょう。」


「夜までは、後何時間もありますし。」


彼女の言葉を聞いたかのように、太陽が視界の端で照りつけた。

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