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THE BLITZ  作者: Forest4ta
チャプター1
7/12

THE BLITZ チャプター1‐第7話:バージンファイト

‐1‐


 「どんな気分だ?博士」

 

 その言葉を能動したのはグラント、受動したのは風沙だ。研究所が『心ある力』にジャックされ、文字通り八方塞がりな状況になっていた。

 

 「いい気分ではないよ」

 

 風沙は今の状況を互いに確認するかのように言葉にした。後ろにはライフルを構えた構成員、前には日本で生まれた者とは思えない顔立ちと肌の色素のある男が立っていた。

 

 「だろうな、だがこれから言う質問に答えてくれれば生きたまま楽にしてやる。スーツはどこだ?」

 

 「スーツか。あいにく、クリーニングに出していてね。この前食事をして汚してしまっ……!」

 

 当然の返答のごとく風沙の右頬に石のように硬く人の温もりを持つ拳が返ってきた。

 

 「なんのスーツかわからないなら教えてやる。『ガーディアンスーツ』だ。『守護者計画』で使ってる、あんたらが新しく作ったあのスーツだ」

 

 守護者計画、ガーディアンスーツ。普通に生活すればなんのことかさっぱりわからないだろう。風沙はその意味では普通ではなかった。

 ガーディアンスーツとは風沙が灯夜に着せたレーシングスーツのような見た目のモノのことだ。だがそれは今どこにも見当たらない。肝心の着用者も先程まで居たはずのポッドの中には居ない。

 

 さぁ、急いでくれ

 

 風沙は心の中で自分の願望を唱えた。でなければ、十中八九彼らに殺されるからだ

 

‐2‐


 「そういえば、このぴちぴちスーツだけ着て戦うって訳じゃないよな」

 

 そう疑問を出力したのは灯夜だった。前に観たブリッツマンの戦いで、彼の着ていたのはアーマーのようなモノだった。

 そのアーマーの手の甲からエネルギーが放出され、手からは遠距離の攻撃に使う電撃に見えるエナジーショットや近距離にて斬撃を行えるエナジーブレードが使える。そして、手と足から放出されるエネルギーを収束及び放出し、姿勢を安定させることによって空を飛ぶことも出来る。

 まさに、ヒーローという見た目に相応しい戦闘と移動の手段を持っているブリッツマン。おまけに見た目も名前負けという言葉が嫌味に聞こえるほどだった。それらを評価し、後に言うことになる灯夜の感想は「製作者らは楽しそうなのかも」。

 

 「そのスーツ、『繭』は基礎部分のようなモノだ。ガーディアンスーツ、今お前が着ているスーツが後に装着するアーマーに必要なのだ。一応、緊急時にも使えるがアーマーがあるならアーマーを付けたほうがいい」

 

 ガーディアンスーツはレーシングスーツのようなスーツとアーマーの総称だ。ガーディアンの名の通り、この『島』を守る者が着るものだ。

  

 「俺がこれを着たらブリッツマン2になるのか?それともミニブリッツマンとかか?」

 

 灯夜の疑問が出てきた。

 

 「こいつのコードネームはリヒトワンドだ。ドイツ語で光の壁」

 

 「ドイツ語かぁ」

 

 そう言い放ったものの灯夜は不満があるわけではない。見知らぬ外国語を使うと何故、人はそれに対して字面が良い感じに見える/聞こえるという簡単な条件だけで人はかっこよく感じてしまうのだろうとその言葉を発する中で考えていた。

 

 「どんなことが出来るんだ?」

 

 性能のことを聞いた。自分が機械を使うからには使い方を知らなければならない。

 

 「こいつはエナジーフィールドを、いわばバリアのことで、それを遠距離から張れることが長所だ。例えるなら、水を吐き出し何かへ付いたら氷になるイメージをしてくれ」

 

 灯夜が思い返したのは先程―喫茶店のテレビで見たブリッツマン活躍を見た時―のことだ。

 あの時、ブリッツマンは銃弾の弾道にあった車にエナジーフィールドを張った。

 リヒトワンドが遠距離からエナジーフィールドを張るというのはエナジーショットを撃つ要領でエナジーフィールドを張れる。


「それになんの意味が?」


 遠距離から攻撃を防げるエナジーフィールドを張れるというのはつまりリヒトワンド自身がそこに行かなくてもエナジーフィールドを張れるということだ。もし、非戦闘員が戦闘に巻き込まれる、あるいはどこか大事なポジションを守るべき時に防御の手段を与えられるということだ。


 「お前の持つ『素晴らしい素養』について説明はしてなかったな」


 風沙は質問の雨あられの中から自ら水を噴出したようなものだ。

 灯夜の持つ素養とはスーツを操る適正だ。

 このスーツへの適性があることによって『ガーディアンスーツ』及びアーマーを手足のように扱えるのだ。飛ぶことも、手に持っていない武器もまるで赤子の頃から扱っていたかのように。

 

 「……本当に俺なんかが人を守れるのかな」


 そのような不安をしつこく吐いていた灯夜。今だに実感が湧かないいせいもあった。


 「待て……何かが来ているようだ」


 そう言い、風沙はポッドを床の下へ潜り込ませた。ボタンを押して。


 「何をやってんだよ。どうしてポッドを床下に隠す必要があるんだ」


 「奴らがきた」


‐3‐


 「さて、洗いざらい情報を吐いていただかないと少し痛い目にあうぞ」

 

 「何を話せというのだ?守護者計画?それを知ってどうしようというんだね?君たちじゃ止めることは出来ないさ」

 

 風沙は守護者計画をしらばっくれたことを撤回するかのような口調で言葉を吐いた。

 

 「情報もそうだが、俺達が欲しいのはあんた達の作った新しい守護者のスーツさ。それに、止めるんじゃない。ぶっ壊しに来」

 

 アラームが加賀魅の声を遮る。この場でアラームが鳴っても不思議ではなかった。銃を持った過激派が研究所に入ってきているのだから。だが、警報を伝えるような雰囲気ではなかった。何かが準備完了したことを伝えるかのような音に聞こえる。

 

 「悪いが、次の守護者が目覚めた」

 

 その数秒後、沈黙を破るかのように2つの電撃が床を破り、テロリストの構成員を二人戦闘不能に追いやった。

 直後、グラントは床へアサルトライフルで発砲。床自体ではなく、床の下に居る何かに対して。

 

 今のはまさか

 

 グラントの思考を嘲笑うかのように次の行動は常人では考えられないことをリヒトワンドは行った。

 即座に窓の外に飛び出て、一階上の高度にエナジーショットの反動を活かし上昇、直後に次の目的の方向へ進むように再度噴射。グラント達の居る階の通路の窓は破れ、そのまま真っ直ぐ突っ込んだ。風沙の閉じ込められている部屋に。グラントはリヒトワンドのタックルを被弾。

 

 「あぁ……クソが、マジかよ。おい先生!出番だ!」

 

 グラントはタックルを受けた胸部のダメージを確認しながら『先生』を呼んだ。

 

 「あんた、その無線を外せ」

 

 リヒトワンドはタックル後に速やかにグラントの傍を離れていた。エナジーショットでの威嚇をするためだ。

 

 「考え直しな、先生が黙っちゃいねぇぞ」

 

 リヒトワンドは疑問に思いながら後ろに違和感を感じた。気配のようなものだ。明らかに視線を感じた。それ以前に何かが昇ってきた音もした。明らかに第六感で感じるそれではなかった。

 直後、灯夜は背後から何かに撃たれた。自分の感じたことのない痛みだった。この痛みの正体をすぐさま判別出来た。リヒトワンドやブリッツマンの撃つエナジーショットの類だということを。

 

 嘘だろ、もう一人居るのかよ。それも敵に。

 

 直後、リヒトワンドは『もう一人』によるタックルをそのまま背中に喰らった。グラントは直前にその動作に反応し、風沙のいる方向へ緊急回避。直後、風沙を攫い一時的な人質として通路へ逃げた。

 一方でリヒトワンドはタックルによって壁を貫通していた

 

 貫通した壁の向こうは会議室だった。そこは会議に使われる長机が数個揃っていた。その整っていた長机はリヒトワンドに与えられた直線運動によって均衡は崩された。

 リヒトワンドは体勢を整えて、長机を大剣のように振る構えを備えた。攻撃を受けた痛みはある。だが、それを気にする余裕が無い。

 

 さぁ、来い

 

 リヒトワンドに高速で向かってきた『もう一人』。リヒトワンドは長机をハンマーのように力強く振る。

 長机は『もう一人』に叩きつけられた。だが、それは2つに割れただけでダメージは与えられなかった。直後、リヒトワンドは長机の片割れをすぐさまキャッチし、その片割れで突きを行った。『もう一人』は回避し、エナジーショットを発射。リヒトワンドに衝撃とダメージ。

 

 動きが読まれている?だとしたらなんで?

 

 もちろん、動きは読まれていない。わかりやすいだけだった。『もう一人』にとってこのような攻撃は赤子の手を捻るようなものでしかない。

 リヒトワンドはエナジーショットを発射。回避された。

 

 「もうよせ」

 

 その言葉は強者による弱者への哀れみだった。

 『もう一人』はハンマーで釘を打ち付ける様に手を組んだ拳でリヒトワンドを下に打った。直前にリヒトワンドをダウンされていた。

 リヒトワンドはまさに釘の様に棟のあらゆる層を貫かれた。衝撃によるダメージはエナジーフィールドでも全部を防ぐことは不可能。

 『もう一人』は叩きつけた直後はブースターでホバリングしている。

 

 やはり奴でなければな

 

 『もう一人』はある男に闘争の意欲を向けていた。

 

‐4‐


 「まだ立っているのかコイツ。凄いな」

 

 ブリッツマンは手こずっていた。異能犯罪者との戦いで。

 この異能犯罪者は『心ある力』の別働隊の一人だ。彼の目的はブリッツマンとストラックチームの足止め。

 

 「さぁ、このデカブツ君はどこが弱点なんだろうねぇ。もう粗方叩いた筈なんだが。ヒロ!まだ叩いてないところがあったら教えてくれないか?」

 

 ≪アキレス腱はどうです?≫

 

 ヒロはブリッツマンとリヒトワンドへサポートが出来る。共有も出来ているのでひろは二人居るようなものだ。身体は二つ、心と脳は一つ。

 

 「あー……了解!」

 

 「こちらも了解。目標に火力を集中させる」

 

 目標とは人間にしては長く太い存在だ。見た目からして思想など持っていない様に見えるほど野蛮だった。実際、そのような考えはすでに排除されている。『目標』が異能犯罪者として身体が強化されてから。

 異能犯罪者が能力が付いた或いは身体が強化された場合、思考が弱体することがあるのだ。彼、『目標』はそうなってしまった一人だ。強い意識がなければ自分を抑えることが出来ない。

 もう彼に言葉を解すことは出来ない。あるのは身体に植え付けられた制御出来ない暴走欲。その欲によってハイウェイのあらゆる車はひっくり返され、破壊もされている。だからタスクフォース∞が出動しているのだ。

 だが、これは陽動だ。『心ある力』が『目標』を活かした

 身体の能力は確かに暴力性に溢れている。大きい身体のサイズが活かせる筋力、敏捷。だが、『目標』にそれを最大限に活かす戦闘は出来ない。ただ、暴走をしているからだ。

 

 「ストラックチームα、奴に火力を集中させろ」

 

 部隊長の指示によって各員は持てる限りの火力を集中させた。アサルトライフル、サブマシンガン、ハンドガン。今残されている射撃手段を使って。先までの戦闘で弾薬は大きく消費されていることもあり、火力はお世辞にも倒せるとは言い難かった。だが、陽動には足りていた。まさに今の『心ある力』の陽動のように

 『目標』はすぐさまストラックチームに身体を向けた。

 ところでブリッツマンはどこにいるのか。ハイウェイの下か、上空か、それとも研究所へ向かったのか。正解は『目標』の背後だ。

 

 「刺す!」

 

 アキレス腱を指した。エナジーブレードによって。

 エナジーブレードは二種類ある。手を拳の形にすることで手にエナジーフィールドが剣の形で形成される。これは使用時にエナジーブレードを振ることで刃が形状され、エネルギーが増幅する。これによってエネルギーの消費が節約されるのだ。

 もう一つは手に拳を作る。その拳は中に空洞を作る様に隙間を開ける。それはサーベルのようになっている。例えるなら拳の中にあるエネルギーは剣の柄、親指と人差し指で作られた輪は鞘、そこから伸びたエネルギは刃だ。これはサーベルと言ったほうがいいだろう。

 ブリッツマンの放ったブレードは後者のサーベルだ。

 

 「やったか!」

 

 アキレス腱は刺され、動くことが出来なくなっている。

 

 「よし、次だ!下がってろ皆!エナジーフィールド展開だ!」

 

 エナジーフィールドの展開によってブリッツマンの周囲に収束と形成されているバリアが解放され攻撃の手段に使えるのだ。エナジーフィールドの中に居ることでダメージが与えられる。ライトシースを持っていない者以外に。

 エナジーフィールドの展開は制御されている。少なくとも、ストラックチームが居ない所まで。展開される範囲が狭い。ダメージは与えられる量が展開された範囲に反比例している。つまり、『目標』へ与えられるダメージは致命的だ。先の戦いで与えられたダメージもあり、もはややりすぎなくらいでもある。

 

 「……終わったか」

 

 これでタスクフォース∞は灯夜と風沙の居る研究所へ向かえる。だが一つ問題があった。この今の状況を終えられたのは研究所での事件が終わる直前だったのだ。



ジャスティスリーグ新トレイラーがおもしろすぎて創作に申し訳なさが出てきた作者のツイッターアカウント→

@Zebra_Forest(https://twitter.com/Zebra_Forest)

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