THE BLITZ チャプター1‐第2話:雷撃と電撃
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あれは鳥か、飛行機か。そのどちらでもない。だが、飛べる物体のことを鳥か飛行機かと言うならば間違いなく鳥か飛行機だろう。
だが鳥はあれ程大きくはなく、飛行機にしては小さすぎる。"それ"は海を渡るかもめの十数メートル横を通り過ぎ、"それ"が通り過ぎた数秒後にヘリコプターが続いた。
"それ"とヘリコプターはまっすぐ灯夜が乗っている船に突き進んでいた。テロリストにシージャックされた船の乗客救出、ならびにテロリスト構成員の無力化の為に。
"それ"はヘリコプターの前を既に数百メートル先を行っていた。先に船に着き、ヘリコプターに居る"雷撃"達を有利に立たせるためだ。
≪こちらストラックチーム、目標まであと2分弱で着く≫
「了解。クラウド、ブリッツ1は攻撃を仕掛ける。交戦許可を」
"雷撃"の遥か前を行く"電撃"は既に攻撃の準備に入っていた。
≪クラウド了解。クリアードトゥエンゲージ≫
交戦許可を得た直後、自分を包むスーツが自分の緊張を圧縮してるかのような錯覚を”それ”こと"電撃"は感じていた。
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"電撃"が船に居る構成員に先制攻撃を仕掛ける。構成員にはおよそ十秒後に気づく距離だ。格闘を仕掛ける前に気づかれて集中砲火を受けるだろう。攻撃手段が格闘のみならば。
"電撃"は海に落ちる事態を防ぐ柵と船の船室の建物に挟まれたデッキに居る構成員3人を被ってるヘルメットのバイザーにて捕捉、"電撃"の持つ電撃が構成員に直撃。撃った電撃の数は3発、それが3人の構成員に全て命中。
電撃というには閃光が帯びておらず、見た目は収束したビームそのものだ。痺れも無く、凄まじい強さの拳を喰らった感触を構成員達は感じた。
ジャスト十数秒後、"電撃"はそこに着地。周囲には電撃をくらい気絶している構成員が寝ている体制だった。着地後すぐさま周囲のクリアを確認。
異音を検知した他の構成員が"電撃"の居るそこへ。"電撃"の左右から。すぐさまに一名をもう一人の視界外にて格闘で戦闘不能に。
もう一人が視界の中に"電撃"を確認。腰だめでは当てられないのをもう一人は承知していた。そのため狙いを定める。これを数秒のうちに行った。
"電撃"はその数秒の一瞬のうちにもう一人に近付き、彼のみぞおちへ拳を食らわせる。
合計5名の魂の抜けていないもぬけが"電撃"の周りに横たわっていた。これを確認後、デッキ上に居る全ての構成員に交戦を仕掛けた。結果は言うまでもない。距離からしてヘリはまもなく全員に気づかれる。
「こちらブリッツ1、船に侵入し、ブラボー地点のデッキ上の全構成員を戦闘不能にした」
≪ストラックチーム了解、残り1分で船に着く。我々はアルファ地点から降下し、内部の制圧を急ぐ。そちらはブラボー地点から予定通りに≫
アルファ地点とは灯夜が居る客室の一つが近くにある。侵入後は敵を戦闘不能及び排除し、人質を奪還する。それが予定通りだ。
‐3‐
あとは、想像に難くない。"電撃"と"雷撃"はまるで光が地面を照らすかのように素早く容易く作戦を遂行した。人質は解放。タスクフォース∞(インフィニット)は帰還。そのまま船は航行を継続し、灯夜は島に着いた。構成員はストラックチームに連行され、出来た遺体は在るべき場所である遺体袋に入れられる。両方とも輸送ヘリに詰め込まれた
"電撃"は人質解放後、すぐに飛び立った。その時に、人々は"電撃"に感謝を叫んだ。人々のヒーローは勇気や希望を持たせることが仕事だ。"電撃"はそれを果たしたとも言える。
感謝を伝えた人々はテロリストの構成員が死んだことを何も感じていない者が多い。彼らは人道を外れた行為を数度行った。彼らにとって、同情の余地は無かった。
それが正しいのかは誰も判断する気はない。少なくとも乗客たちは。だが、少なくとも"電撃"には人々へ希望を与え、光を未来に指すことが仕事であり義務だった。そして、教える事で光を継がせることも出来る人間だ。
それはヒーローと呼ぶのがふさわしい仕事だ。そのヒーローの名を"ブリッツマン"と呼ぶ。
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あの人達、なにも感じないのかな。自分達に危害を加えたとはいえ一応人間なのに。でも、俺も同じくなにも感じていない。
確かにビックリはしたし怖かった。でも、まるでただ一時の平穏を乱した災害のようだ。俺のように園葉島に来るのが初めての人もテロリストについてはもうなにも考えていないように見える。あるのは災害のようにただ過ぎ去ってほしいという感情。彼らの言動からそう感じられるんだ。
「早く終わってほしい」、「どうしてこんなことをするの」、「迷惑だ」
それ自体はなにも間違ってはいないと思う。でも何か足りないと思うんだ。まるで、自分達はなにも関係ないかのような、テロリスト達についてはなにも考えないのか?
彼らが何を考えているのかを。彼らの死ぬ以前の生活などを。命がこんな無意味に終わっていいのか。
俺があのテロリストについてなにも知らないからこう言えるのか?それとも『自分達にはなにも被害が被られていない』からなのか?なんにせよ、どこかおかしいと感じるのは確かだ。
怖いから自分の考えから遠ざけるって正しいのか?
俺もこうなるんだろうか
モンスターエナジーとレッドブルが心の源な作者のツイッターアカウント:@Zebra_Forest(https://twitter.com/Zebra_Forest)