星は鳥と歌う。
ぼくは星。
いちめんのくろい絨毯にきらきらと輝くほし。
でもひときわ元気のない、ほし。
なんでぼくだけあまりかがやけないんだろう。
みんなと同じようにきらきらとしたいのに。
ぼくは星なのに。
したをみるとみんなを観察しているにんげんたちがいた。
「ほら、ごらん。みんな綺麗に輝いてるね」
そのみんなに僕は入ってはいないんだ。
なんでぼくだけ見てもらえないんだろう。なんで僕はみんなとはちがうんだろう。
ぼくだってほしなのに。
かなしくてなみだがでる。ぼくだって星なんだよ。認めておくれよ。
かなしくてきょうも一人なかまはずれ。
またひとりのよるがすぎていった。
今日は早起きをした。みんなはまだ眠っている。
ぼくだけが目を覚ました。
「そうだ、今ならぼくに気付いてくれるかもしれない」
ぼくはまだ薄明るい空に一人ですがたをあらわした。
まわりをみてもぼくだけしかいない。
みんな気付いておくれ。ぼくだってきらきらかがやいてるよ。
だんだんと暗くなる空の中、だれも僕に気付いてくれなかった。
みんなも起き始めて輝きだす。
またぼくは目立たなくなった。
どうしてなんだろ。
どうしてぼくはほしなんだろ。
本当に星なのだろうか。
お月様に聞いてみよう。
お月様のところに向かって飛んでいった。
「あ、流れ星。でもあんまり綺麗じゃないね」
にんげんの声が聞こえた。
やっぱりぼくはほしじゃないのかな。
「お月様、どうして僕はみんなとちがうの?」
お月様はいつもにこにこみんなを見ている。
「どうしてそう思う?」
お月様はにこにこして僕に問う。
「ぼくは星じゃないから?」
ぼくはほしじゃなくて本当はもっと別の何かなのかなとおもった。
「じゃあ探しておいで。本当のきみを」
お月様はにこにことまた他の星達を眺めはじめた。
そうか、探せばいいのか。ぼくはほんとうの僕を探しに行った。
どこから探そうか。
あてもなく彷徨っていると雲に出会った。
他の星達の輝きに反射して雲の形がはっきりと見える。とても大きく、そして美しく。
自分では光っていない。ぼくと同じだ。
ぼくは雲なのかもしれない。
「くもさん。ぼくは雲なのかな」
雲さんはもこもことした口調で答えた。
「きみが雲なわけないよ。だってきみはもこもこじゃないだろ?」
そっか。ぼくはもこもこじゃない。だからくもじゃないんだ。
残念な気持ちでまた彷徨った。
遠くから見た雲さんは自分で光っていないのにとても綺麗に見えた。
ぼくと同じだとおもったのに。
今度はたかいたかい山に着いた。
その山のてっぺんに大きな木が立っていた。
そうか、ぼくは木なのかもしれない。
「木さん。ぼくは木なのかな」
木さんはとてもきりきりとした口調で答えた。
「きみが木なわけないよ。だって飛んでいるじゃないか」
そっか。ぼくは飛んでいる。だから木じゃないんだ。
暗い気持ちでまた彷徨った。
近くで見た木さんは風を受けて自分の葉を舞わせて踊っているようでとても綺麗に見えた。
ぼくと同じだとおもったのに。
いくら彷徨っても本当のぼくはわからなかった。
なんにちもなんにちも過ぎた。
ぼくの横を鳥さんが飛んできた。
「星さん、星さん」
星さん?最初はだれのことかと思った。
「え、ぼくのこと?」
「そうだよ、君しかいないでしょ」
ぼくは星じゃないのに。
「わたし、星になりたいんだけどどうすればなれるのかしら」
星じゃないぼくに聞かれてもわからないよ。
そう答えると鳥さんは
「なんできみは星じゃないの?」
すごく不思議そうな顔で聞いてきた。
そんなのぼくが知りたいよ。
星じゃない理由を教えてよ。
どうしたら星になれるのさ。
ぼくだってしりたいよ。
「あ」
ぼくは気付いた。
ほんとうのぼくを探していたんじゃなく
ぼくは星になる方法を探してたんだ。
「ぼくも星になる方法をしりたい」
鳥さんはうれしそうに
「じゃあ一緒にさがしましょ」
ぼくはとりさんと二人で星になる方法を探した。
なんねんもなんねんも過ぎた。
二人でずっと一緒に探したけれど、星になる方法は見つからなかった。
いろいろ聞いたけど、ぜんぜんわからなかった。
やがて鳥さんは長旅で疲れたのか
ちょっと休むね、といって目を閉じた。
そしてその目はもう開くことはなかった。
ぼくは鳥さんのお墓をつくった。空につくった。
また一人になった。その場から離れた。
遠くからみたそのお墓はまるで星のように見えた。
「そうか、鳥さんは星になれたんだね」
ぼくはなんだかすごく満足した。
それで僕も眠くなったんだ。
周りの星達も起きだして、鳥さんのお墓を見て寄ってきた。
ぼくは眠ってて見えなかったけど、下から声が聞こえた。
「パパ、見て。お空がすごく綺麗だよ」
「本当だ。まるで星の鳥だな」
「みんなすごく綺麗だね」
そのみんなの中にぼくはいない。
でも星になりたかった鳥さんはちゃんと入ってる。
それだけで嬉しかったんだ。
ぼくはとてもうれしかった。
だからもういいんだ。
ぼくはなんでも。
たった一人のともだちが星になれたんだから。
ぼくは泣いていた。
涙がとまらなかったんだ。
その場に居られなくて離れた。
「パパ、綺麗な流れ星」
なみだがみんなの光に反射してとても綺麗に光った。
「すごいな、本当に美しい」
そうか、ぼくはなれたんだ。綺麗な星に。
ぼくは星。
いちめんのくろい絨毯にきらきらと輝くほし。
でもひときわ元気のない、ほし。
でもみんなのおかげで輝く星になれた。
だれもが認めるきらきら星に。