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夢の通ひ路  作者: 江南
9/10

退寮と挨拶_5(完)

「まぁまぁまぁお帰りなさい! アキくんも、よく来てくれたわね!」


 いらっしゃい、ではなく、お帰りなさい、と。ここが帰る場所なのだと。


 意図的なのか天然なのかは計り知れないが。いつでも陽気な伯母に出迎えられ。居間に行って伯父に挨拶すれば苦笑された。己の連れ合いのテンションの高さには、もう笑うしかないのだろう。

 共働きな従姉がほぼオヤに預けっ放しにしているコドモらも、当然そこにいた。


「ユキ、ソウ、久しぶり」

「「ハルちゃん!」」


 そうか覚えてくれていたかと心がほころぶ。コドモの笑顔は無敵だ。


「そっちのひとは?」

「俺の友達で、アキだよ。お医者さん。俺の脚を治してくれたひと」

「じゃ、すごいひと?」

「どうよ、アキ?」

「…すごくはないよ。すごいのは、君らのおばあちゃん」

「そうなの?」

「そうなの」


 こてん、と首を傾げて見上げてくる幼児の可愛さは凶悪だ。常にシニカルな笑みを浮かべる久我さえもが、顔を変え膝を折り目線を合わせ、コドモらの頭を撫でているのだから、いやまったくもって。


「ユキもソウも。初めて会うお客様なんだから、まずは自己紹介しなさいな」


 説明しようかと思ったところで伯母が教育的指導。電話するたびバババカ丸出しなクセに、さすがだ。そしてコドモらもそれに素直に従うのが微笑ましい。


「高野幸奈、6歳です」

「高野壮太、4歳です」

「久我朗人、28歳。ハルの同級生だよ。よろしくね」

「「よろしく!」」


 久我の態度は微笑ましいのを通り越して爆笑ものだが。


「ハルちゃんよりおとーさんよりカッコいい!」


 …そんなユキの率直な感想には正直ヘコんだ。伯父も伯母も吹いているのがなんともはや。幼児であろうとオンナノコはオンナノコ。恐るべし。


 とまれ。

 夕飯には少し早い時間の到着だったこともあり、茶菓子を供され歓談する間に、定時に上がれたらしい従姉(看護師学校講師)とその連れ合い(市職員)も帰ってきた。そして鍋と刺身とその他諸々が続々と。どんなパーティですかねコレ。


 そして。

 ねむねむになったコドモらを抱きかかえて従姉夫妻が帰ったところで。朝の早い伯父が寝落ちする前に正座した。


「夏の件ではご迷惑をお掛けしました」


 口火を切ったのは何故か久我だった。


「俺のことを覚えていてくれて、本当に助かりました。千葉の方もですが」

「忘れるわけないじゃない。ハルちゃんが連れてきたの、アキくんだけだもの」

「そうなんですか?」

「そうよぉ」

「伯母さん頼むやめてくれ!」

「まー照れちゃって」


 いやまったくもって勘弁してほしい。一体なんの羞恥プレイだ。久我も笑っていやがるし。


 とりあえずそんな久我のアタマをどついておいて。


「心配かけました、すみません。でも、もう大丈夫だから。…こいつが、ちゃんと診て、つきっきりで治してくれたから」

「…そうか。良かった。信頼できる、自分を任せられるお医者さんがいるのは幸せだよね」

「……そうだね。うん、本当に、そう思うよ」


 伯父の言葉には素直に応えたが。それが隣で笑いを堪えているコレだったのだけは業腹だが。


「札幌の寮も、今日引き払ってきた。まだ病院の関係もあるから、もうしばらくはコイツのとこに厄介になる予定。色々便利だし」

「あんまり迷惑かけないようにね?」

「家事くらいしてるよ」

「そう? ならまぁ及第点かしらね。アキくん、不束者だけどよろしくね」

「はい」


 だからなんでそうなる! 伯母も久我もなんか間違ってる!


 そんなこんなの2泊3日。穂積さんに勝るとも劣らない朝食を食べさせてもらい、帰路についたのだった。


 ちなみに朝食のメニューは。

 シナモンたっぷりなフレンチトースト(好みでグラニュー糖かハチミツを)、キャベツ人参玉ねぎの酢漬けサラダ(そのままでも充分美味いが、好みで黒胡椒とかシーザードレとか)、厚切りのベーコンとジャガイモのソテー(これは塩と黒胡椒のみ、それが正義!)、手作りのコーンスープ。このスープが、実に美味い。この時期はさすがに冷凍だが、旬の時期に生で作ってくれたそれは、砂糖は入れてないというのに本当に甘くて美味かったのだ。勿論、冷凍ものでも充分美味い。

 いやもうホントに北海道すごい。ごちそうさまありがとう!

結局メシばかり…

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