退寮と挨拶_1
「久我。お前、連休取れるか?」
「…なんだいきなり。シフトは基本的にひと月前の申告制だ、今からすぐに、とはいかない。身内の葬儀でもない限りな」
「……んじゃ、独りで行くか」
「だから、なんの話だ?」
「寮を、引き払いに行かにゃならんから」
「分かった、近いうちに休みをもぎ取る。お前絡みで休みなしだったしな。1週間以内にどうにかする。悪いが、日程が決まるまでチケットの確保は待ってくれ」
「い…いやいや、予約は別にいつでもいいんだけどもよ。休みホントに取れんのかよ?」
「取ると言ったら取るに決まってるだろうが。舐めてんのかお前」
「…はいそうですねそーですね。できれば2泊3日を希望します」
「了解。だが、2泊3日ということは、寮以外にもなにかあるのか?」
「そりゃやっぱ、最低でも富良野に顔出さんわけにはいかんだろがよ」
「ああ、まぁ確かにな。俺もいきなり無理言ったし、挨拶したい」
「や、それは俺のことなんだし、俺がするからいいとして」
「ともかく、寮の片付けが1日、終わったら富良野で1日、ということか?」
「他にどっか行きたいとこあるなら、クルマ処分する前に日程組むけど。旭川近辺なら伯父さんが連れてってくれるだろうし」
「あっちはもう雪が積もってるだろ? 無理を言う気はない。てかクルマ処分するのか?」
「ココにいるならお前のクルマあるし、どうにでもなるだろ。むしろもう一台分の駐車料金を考えたくねぇよ」
「ま、ごもっとも」
「てなワケなんで、そっちの日程決められたら教えてくれ。それ次第で、むこうに連絡入れるから」
「それも了解。休みも1週間以内にはねじ込んでやる」
「…お前、まだ若手の部類とか言ってなかったか? そんな豪腕……」
「だから、俺を舐めてんのか?」
「違いますすいませんよろしくお願いします」