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私はこんな夢を見た

作者: 川里隼生

私はこんな夢を見た。青緑色の月明かりが差し込んでいる私の部屋にいた。ドアを開けたところに立っていたのだ。目の前にはベッドがある。誰か眠っているようだ。回り込んで顔を見ると、それは私の死に顔だった。


「ひでえ夢だな」

私は「夢」と言った。しかし、夢だとは気づかなかった。

「何だよ」

死に顔の私が言った。起きていたのだ。しかし、不思議なことに私は驚かなかった。


「俺はもう死ぬ。起こさないでくれ」

死に顔の私が言った。たしかに死ぬな、と思った。


懐かしい感じがした。私はまるで夏目漱石。明治の文豪が描いた夢の情景に似ていると気づいた。涙が出た、と思ったが、それは死に顔の私の方だった。そいつの涙を拭いてやった。もう死んでいた。


私も何だか瞼が重くなる。

「そうか。俺がもう死ぬと言ったんだからな。俺はもう死ぬんだ」

誰も聞く者はいない。私の掌は青白く光っていた。自分の涙を拭いた掌だ。


そこで夢は終わった。


さて、仮眠は終わりだ。私は仕事場に戻る。青緑色の服で全身を包む。口には大きな白いマスク。


「それでは、腫瘍摘出手術を始めます」

私の右側にいる助手がメスを渡す。ベッドの上には今にも死んでしまいそうな顔の男が横たわっている。今、楽にしてやるからな。


今、楽にしてやるからな。

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