座敷わらしの怪、第一幕
既に陽は沈み、冷たい夜の風だけが辺りに立ち込めていた。
つい1時間前までは聞こえていた子供たちの笑い声も、奥様方の話し声も、全て暗い路地の向こう側へ流されていった。
冷たい街灯に照らされた青白い公園の砂浜で、ガラの悪い二人組が腹を押さえて声を上げる。それはまるで車に轢かれた蛙のような、醜く痛々しい叫び声だった。
「クソぉ、ヤンラック。覚えてろよ……」
顔中砂まみれになった少年が、目の前でメガネの位置を正している学生を睨みつける。
「同じ高校に入れると思ったら、貴様だけ進学校に逃げるなんてよォ、その血を吸い続けた拳を学業のために使うなんてェ、頭のネジハズレちったんじゃねぇのかよォ」
納得がいかない様子で少年は口を開くが、ヤンラックと呼ばれた学生は、ただ息をするように言葉を漏らした。
「誰がヤンキー辞めるって言ったよ。喧嘩したけりゃ来いよ。すぐさま殺してやる。」
「じゃぁなんで進学校なんかに…」
「は?お前らの相手するのが面倒くせぇからだよ。真面目に勉強する暇もくれやしねえ。迷惑なんだよ」
そう言うと、ため息を付きながらヤンラックは踵を返した。
「本当に運が悪い。入学式の帰り際に襲われるなんて。ちくしょう、犬の糞踏んじまった」
体を丸めた少年は朦朧とする意識の中で、ヤンラックの体毛が逆だっているように見えた。そのおどろおどろしい姿は、冷たい光の差し込む公園で、業火のごとく熱を帯びていた。ヤンラックの姿が見えなくなったのを確認してようやく口を開いたガラの悪い少年の片割れは、ケロッとした表情で身を起こした。
「本当に、俺たちはラッキーだよ……。『ヤンキーにとってラッキーな存在』とはよく言ったものだ。あんなに強いとは思わなかった。それなのに、この程度で済むなんて。普通なら俺ら、死んでいたな。」
彼はヤンラックに喧嘩を売った張本人なのだが、標的を見つけ反射的に飛びかかったと同時に反撃され、一撃で伸びてしまったのだ。
「ちくしょう、強すぎるぜ。思いっきりバットで顔面殴ってやったのに。立てるか?」
「ああ、大丈夫。頭がくらくらするぐらいだ」
「そうか、もう帰ろう。悪かったよ、ヤンラックに喧嘩ふっかけようなんて言って」
「いや、いいよ。俺もおかげでヤンキー辞めるの、決断できたし」
成す術なく地面を舐めさせられたというのに、二人の顔はとても清々しい表情を浮かべていた。もう未練はない。そう言いたげに二人は笑い合い、まるでピクニックを終えた子供のように帰路へついた。
そして、二人が楽しそうに帰るのを知ってか知らずか。ヤンラックこと花澤開は、公園近くの販売機にしゃがみこんで画面の割れたスマートフォンを惜しそうに見つめていた。
「ちくしょうあいつら、入学祝いで買ってもらったアイフォン6をいきなり壊しやがって。本当についてねぇ。不運だ」
ガラの悪い少年が突然振り上げた金属バットは、顔面に当たるわけではなく、ただ携帯電話に直撃し、破壊しただけだったのだ。
「進学校に入れば悪運ともおさらばだと思ってたのに……」
涙をこらえるなんて、それこそ不可能な話だった。
「喉渇いたろ。俺、ジュース買ってくるよ」
ガラの悪い少年の一人が、頭を抑える片割れのためにと開のいる自動販売機へ足先を向けた時だった。
「アンラッキーはもうお終い」
彼のちょうど真後ろから声が聞こえた。
「ん?三原、何か言ったか?」
販売機に向かう足を止め、彼は頭を抱える少年を振り返った。
「なにか?いや、何も言ってな……」
三原と呼ばれた少年は、突然振り返った相方に首を傾げ否定の言葉を投げ返そうとし、息を詰まらせた。
「た、高木。う、後ろ見ろよ」
高木は怪訝そうに眉をひそませ「なぜか」と問おうとした時だった。今度ははっきりと、真後ろから女の子の笑い声が聞こえてきたのだ。
「み、三原?なんかいるのか?」
高木は背筋を撫でる冷や汗を必死に我慢し、頭を抑えながらこちらを睨めつける三原の顔を見つめた。
「三原?俺の後ろになんかいるのか?」
しかし、三原は何も答えようとはしなかった。ただ、暗がりの中でもはっきりと、目を血走らせ大きく開き、共学の表情を浮かべる三原の顔が見て取れた。高木の目には、必死に呼吸を整えようと努力する友人の顔が強く焼き付いた。
「三原、大丈夫かよ!」
三原はまるで石像のように固まって、一向に動こうとはしなかった。それがむしろ恐怖を増大させる要因となっていた。三原はこれでもかと言わんばかりに目を開き、声を出さまいと口を抑えているようだった。震える片手で自分の髪の毛を握り締め、蛇に睨まれた蛙のように、ただじっとそこから動かなかった。
「おい、悪い冗談はやめてくれよ」
高木は静まり返った夜の公園を出来るだけ明るくしようと声を大きくした。だがもちろん、後ろを振り返る勇気など持ち合わせてはいなかった。
次第に大きくなる笑い声、何か小さなボールが弾むような音が確かにする。
その、目に見えない『何か』は高木の鼓動をより一層早め、全身の毛穴から機械油のような汗がにじみ出ていた。
「なぁ、高木。ここだよな?最近火事のあった家が見える公園って」
ようやく口を開いた三原の声を、高木は始め、彼本人の声とは思えなかった。普段の彼からは想像のつかないような、か細く苦しげに震えた弱者の声だったからだ。
先程まで伝説のヤンラックに殴られておきながら笑っていた彼とは、到底思えないような聞き取ることさえ困難なか弱い声だった。
「火事の、公園?」
得体の知れない恐怖に駆られ、高木の口からそれ以上の言葉は出てこなかった。しかし、三原は違った。まるで何かに追われるように、それを言わなくてはいけないと言いたげに、震える息に声を混ぜた。
「ああ。最近。最近の話だ。この公園の近くで、一人暮らしのおっさんの家で火事があったって話、噂。聞いたことあるよな?」
三原の瞳は、一度たりとも高木の背後を捉えたきり動こうとはしなかった。そんな彼に、高木はただ無言で頷く以外できなかった。もう既に自分の後ろに何がいるのかは、声と三原の言葉で大体の想像はついていた。
「そう、一人暮らしのはずなんだ。それなのに、家からは業火に焼かれた女の子が飛び出したって。笑いながら、嬉しそうに、飛び出したって。」
近所に一つはあるようなありきたりな噂話。のはずだった。
しかし三原のその表情は、真剣そのものだった。彼は震える指先を水平に伸ばし、声にならない息を漏らした。
その動きに操られるように、高木の首はゆっくり後ろへ回っていく。体を震わせながら、笑い声の主を確認するために。一度習った計算式を、証明を交えて懇切丁寧に噛み締めさせられるように、ゆっくりと、順序だてて後ろを向いた。
高木の目は、まるで針金が固定しているのではと思わせるほどに瞬きを許さなかった。そしてその体はバケツの上で絞る雑巾のように、冷たい汗が流れ落ちた。
しかし、彼が後ろを振り向いたときに、まるでそれを見計らっていたかの如く笑い声はパタリと止んでしまった。ただ一つ、片手サイズの小さな毬が誰もいない空間で、独りでに音を立てて弾んでいた。
理想的なテンポを刻み、ゆっくりと、ゆっくりと。二人のもとから離れていった。
日はとっくに沈み、冷たい色だけを残した公園の中心に、赤と黄色の暖色を織り交ぜた小さな毬だけが、空間を捻じ曲げたと錯覚させるようなぼんやりとした光に包まれながら弾んでいた。
「三原、なんだよ、あれ」
高木の口はガタガタと震え、何度も何度も息を吐き出し、肺の中が空になりかけた頃にようやく言葉となって口から溢れた。
しかし、三原は動かない。何も答えず、後ろ手に荒々しい息使いだけが聞こえていた。
「三原……これ、なんかの冗談だよな?目の錯覚か何かだよな?」
高木の願う様な言葉を聞き、三原は少しだけ口を動かした。
「錯覚に見えるのか?」
その口調は、怒りと苦痛の入り混じった棘のある発音だった。しかし、その棘は今にも折れてしまいそうな細長い発音でしかなかった。
「あんなに焦げ付いた女の子が、笑ってるじゃないか。後ろ向きに歩きながら、こっちを見つめながら、少しずつ離れてるじゃないか」
高木は慌てて三原を振り返った。自分の耳を疑うしかなかった。
冗談だろうと小馬鹿にしたかった。しかし、三原のそれは決して作り物には聞こえなかった。
「高木ぃ、もしかして見えてないのか?俺だけなのか?」
「な、何言ってんだよ三原。お、女の子なんていないだろ。ほら、毬が弾んでるだけだろ」
何もない空間に毬が弾んでいる時点で常識から外れているのだが、高木にとって最早目に見えるものは恐怖から外されていた。ただ三原に見える『何か』にいまわの時が近づくのを感じた。
「いるだろうがよ!女の子が!こっちを見ながら笑ってるだろ!首を90°も傾けて、真っ黒に焦げ付いた頬を引きつらせて!それなのに綺麗な着物を着ている女の子が。10歳ほどの女の子がこっちを見て笑ってるんだ!毬を突きながら笑っているんだよ!こっちを見てるのに、体は滑るように後ろに移動して……」
それから、三原は口を閉じた。ただ一言、「消えた」という言葉を残して。
「なにが『ヤンラック』だよ。俺たち、とんだ不幸者じゃないか」
緊張の糸がほどけたのを合図にして、高木は脳みそが溢れるように口を開き、そのままその場に倒れた。いつの間にかうつ伏せになって寝ていた三原の上に覆いかぶさるようにして。
それから二人が目覚めた時、既に太陽は空高く登っていたという。
ちょうどガラの悪い二人組が肝を冷やし尿をこらえた格好で意識を失った頃、『ヤンラック』こと花澤開の全身を駆け巡る憤怒の溶岩がようやく練り固まり、冷えて静かになった。
画面全体が蜘蛛の巣のようにひび割れた携帯電話を胸ポケットに仕舞い、ハンカチで汗と涙を拭き取ってから思いついたように愚痴をついて立ち上がる。
「ちくしょう、不運だ」
叫びだそうとする喉仏を無理やり飲み込み、販売機に100円硬貨を食わせて水を買う。
カッカと焼けるような喉の粘膜を、冷たい水分が染み渡る。二、三度息継ぎを交えながら、小さなペットボトルに詰まった冷水を全て、酸の強い胃袋へ流し込んだ。
「さてと、もう帰ろう」
怒りと憎しみを通り越し、夢だと自分に言い聞かせたくなるような秋風落莫の思いがその身に広がっていった。
雲間に隠れた三日月も、一向に姿を表そうとせず、星一つ見えない夜空はそこに黒雲が厚く立ち込めていることを客観的に教えてくれた。
開は自分の運が悪いのだと何度も口にしながら、何も見えない空に目先を向けた。溢れようとする涙を抑えるためだったのだが、その行動のためにおろそかとなった足元は、ちょうどいい大きさの小石を踏み、地面を上手く捉えることができずに尻餅を付いた。
「いってぇ……本当に不運だ。糞ぅ、幸運になりたい」
いつもの調子で、呟いたつもりだった。近くに人の気配はしなかったから、ただの独り言のつもりだった。しかし、その仰向けに転ばされた開の傍から、唐突に笑い声が聞こえてきたのだ。
「クスクスクス、まさに不運の化身じゃの」
馬鹿にするような笑い声が木霊し、おちょくるような喋り声が聞こえてきた。
「あぁ?なんだよてめぇ」
いつものようにガラの悪い輩の挑発と思い、彼は声のした方を睨みつけた。
だが、そこに人の姿はなく、ただ寂しそうに赤と黄色の折り重ねられた小さな毬が転がっているだけであった。
「なんだこれ、あの笑い声はいったい」
気がつけば笑い声すら止んでいた。気のせいなのかと首をひねりながら、開は手元に転がった小さな毬を拾い上げ、スクールバッグの奥に詰め込んだ。
そんな彼の脇を冷たい春風が帰り道を案内するように優しく吹き抜けていった。
「寒……。とりあえず帰るか」
花澤開はその風に押されるように、帰路について右足を出した。
この毬が、彼の人生を大きく変える出会いの始まりであるとは、まだこの時の彼は知らなかった。生まれた時からの悪運を脱ぎ捨て、幸運の未来へ向けて脱皮する日の、小さな始まりの日であった。
「えっと……次、花澤、カイ?くん。かな?カイ君、お願いします」
四度目の自己紹介に、顔をしかめながら開は立ち上がり、自らを数学教師だと名乗った男の眼球をしっかりと睨みつけて名前を正してやった。
「どうもみなさん。俺の名前は花澤開といいます。開くと書いてハルキと読みます。覚えやすいと思いますので、以後お見知りおきを」
少し刺がある言い方だったかなと、軽いお辞儀をしながら反省した。言い訳にしかならないが、昨日のクラスに向けた自己紹介に続き、初めての授業だからという理由でそれぞれの教科担任への自己アピールを半強制的にさせられたことが、あまりにも鬱陶しく感じさせられ、つい態度に出てしまったのだ。毎時間毎時間同じ名前を対して興味もなさそうな人物に投げかけるのが嫌になってしまった。
やはり、自己紹介に蛇足を付けてしまったためか、定規のように角のあるメガネをかけた黒板前の男は、開を見定めるように睨み返し、まさかの質問攻めという奇行に走ったのだ。
「なるほど、開くと書いてハルキと読むのですか。最近流行りのDQNネームとかいうやつですかな。好きな食べ物は?嫌いな食べ物は?好きな教科や嫌いなスポーツ、最近読んだ本に将来の夢、自己紹介に大事なものがいろいろと欠けていますよハルキくん。自分の名前が珍しいからと自慢はなさらないように」
いや失礼だろう。全国のハルキさんに謝れよと叫びだそうとする気持ちをなんとか抑え、笑顔を繕った。
「あはは、そう言われたのは初めてですよ。可笑しいですね。昔からある名づけ辞書にも開くと書いてハルキと読めるって書いているんですけどね。まぁ、数学の先生だから仕方ないですよね。あはは」
しまった、つい挑発的な態度を再び取ってしまった。
開自身、その限りなくアウトに近い性格を反省し、日頃から短気を直そうと意識はしているのだが、その攻撃意思は巣を叩かれたハチのように当たり前のごとく湧き出し、言葉はその身を守ろうと条件反射として刺を出す。
そしてその針は他者の心を逆なでさせ、逆上させ、どんなにその気がなくとも攻撃的に変えてしまう。心底嫌な毒針だった。
「ちくしょう、不運だ」
自業自得とは言え、そうしなければ今まで生きてこられなかった彼は、見える世界を変えたいがために飛び込んだ進学校の中で、まさかここまでに苦悩するとは思いもしていなかった。
教師の表情も固まり始めているのがすぐに分かった。先程まで頬を緩ませながら相槌をうっていた教科担当の筋肉は弾力を失い、細い目をさらに細く、眉の距離も近くなっている。自業自得と言ってしまえばそこまでだが、開の目的は教師との抗争ではない。とりあえず関係を立て直さねばと彼は言葉を必死に選んだ。
「まぁ、滅多にない名前ですし、普通はカイって読みますしね。ちなみに、数学は中学の頃から好きな教科でしたので、これからよろしくお願いします。先生から、たくさん学ばせていただきますね」
会話スキルなんてものは習得していない。なんと言えば相手が喜び、なんと返せば快く受け入れてくれるのかを学ぶ時間は誰も与えてくれなかった。
それもまた言い訳だぞと、自分の毛並みを落ち着かせながら開は深々とお辞儀した。それで教卓に肘をついてこちらを見る男の眼光が弱まるとは思っていなかったが、それでも柔らかい関係を築けたらと期待した。
「次、花宮かけ……」
教師の温もりが消えた声色と、決して離そうとしない目線から、その期待は叶わない事をすぐさま思い知らされてしまった。
その教師は、まるで危険生物を見るような目で開を捉え、核弾頭を飛ばそうとする軍人のように冷たい眼を開の心臓にロックオンしていた。
「ちくしょう、出鼻くじかれた」
数学の授業は初日目から頭に入ってこなかったのは言うまでもない。
開はそれから家に帰り、その日の反省をしながらベッドに身をゆだねていた。
「ちくしょう……」
最早その言葉は彼の口癖となっていた。何か行動を起こすたびに、それは裏目に出てしまう。不運以外に言いようのない人生だ。
買い物に行けば賞味期限の切れたものを掴まされ、手持ちを気にしていれば電信柱に頭をぶつけ、痛みに頭を抑えるとその手を狙いすました鳥の糞が落ちてくる。
くしゃみをすればアイスを落とし、石を蹴ればヤンキーに絡まれ、ゲームをすれば泥棒扱い。小石が頭を直撃するなんて当たり前だ。
そんな人生、もうおさらばしたかった。
「幸運が、舞い降りんかな。……あれ?なんでこんなとこに毬が落ちてんだ?」
それは、いつものようについ口から溢れた願望だった。
叶うはずもない願いだった。
だが、いつの間にか転げ落ちていたであろう、鞄の中にしまっていたはずの毬を取り上げたとき、ふと背後から声が聞こえてきた。
「飢えておるのォ。お主を、幸運の者に変えてやろうか?」
少し笑の入り混じった幼子の声だった。突然の声に息を詰まらせながらも開は恐る恐る顔を上げる。
そこにはスミレ柄の和服を着た、10歳ほどの小さな女の子がほほ笑みを浮かべて立っていた。彼女は開の片手に収まった小さな毬を、そっと手に取り、再び口を開く。
「お主に、幸運を授けてやろう」
高木「おい、大丈夫か?起きろ」
三浦「はっ……朝か?俺たちあのままずっと寝てたのか?」
高木「そうらしい。」
三浦「ヤンラックは!?幼女は!?」
高木「ヤンラックはとっくに帰ったよ。全く、俺たちヤンキー辞める最後の喧嘩だって息巻いて襲いかかったのにコテンパンだな。これまでのヤンキー人生をどうしてくれるってんだよ」
三浦「ほんとな。ってかヤンキー人生はどうでもいいんだ。あの首を90°以上も傾けて張り付いた笑みを浮かべたまま毬をついていた幼女はどこだ!」
高木「まだ言ってるのかよ。そんなのいないっての」
三浦「いたんだって。くっそぉ」
高木「なぁ、その話はもうやめにしようぜ?俺もまだ思い出すだけで寒気がする」
三浦「寒気?なんでだよ。俺はむしろ熱くなったが」
高木「あれだろ?焼けた家の女の子だろ?お前燃やされるとこだったんじゃねえの?」
三浦「いや、既に萌えてたよ」
高木「……え?」
三浦「萌えすぎて今も忘れられない。まるであの子に取り憑かれたみたいだ」
高木「いや!それ取り憑かれてるって!燃えたんだろ?大丈夫かよ!」
三浦「いやぁ、多分もうだめだ。忘れられん。萌え広がっていくわ。今も俺の中で」
高木「やべえ!神社行こう!寺か!どっちでもいい!とりあえず早くお祓いしよう!」
三浦「何言ってんだよ。嫌に決まってんじゃん。俺のあの子の縁を切らないでくれ」
高木「嘘だろ……もう、取り返しのつかないところまで行ってしまったのかよ」
それから二人がどうなったのか、誰も知らない。