09 もやしな生活 = !!
〈俺は――〉
〈悲鳴を聞いた――〉
〈私は――〉
〈悲鳴を上げた――〉
《そうして駆け出す――》
・・・・・・
・・・
・・・
私は今、キッチンに立っている。
今日は名島君が一人で食材集めに行った。
私は留守番だ。
でも、何もしないで待っているわけではない。
もやしと大豆でできるメニューを考えているのだ。
幸い材料にも時間にも余裕がある。
いろいろ試せると思う。
お昼頃には戻ると言っていたので
それまでに仕上げる。
手始めにもやしと大豆で
ハンバーグモドキでも作ってみようか。
大豆は茹でてすり潰して。
もやしの食感は残したほうがいいかな。
なんて考えて包丁を手に取る。
本当に刀そっくりな見た目だ。
おっと、鍋を用意しなくちゃ――
「ひゃっ!」
足に何かが――
見ると
白い
細い
長い
たくさんの
もやしが
蠢いていた
「キャーー!!」
思わず叫んだ。
そして駆け出した。
あのトンネルへ。
・・・
・・・
・・・・・・
俺は駆け出していた。
今のは間違いない。
高月さんの悲鳴。
何があったんだ?
大丈夫なのか?
別行動なんてしなければ・・・
いや、今は後悔している場合じゃない。
いろいろな思考が頭を巡る。
こんな時に限ってやたらモンスターが現れる気がする。
しかし、放置するわけにはいかない。
いくら貧弱なタオルと言っても
数というのはそれだけで脅威となり得る。
現についさっき数枚のタオルに絡まれ転びかけた。
数が増えたら手に負えないだろう。
焦りながらも
タオルや毛布を確実に片付けていく。
早く!
急がないと!
・・・
・・・・・・
・・・
走っている。
手にした包丁をポケットにしまう。
全力で走る。
ただ走る。
現れた枕を後ろへ投げる。
振り向くと光の粒が消えていくところだった。
他の枕も絡みつかれて暴れているが
すぐに動かなくなる。
逃げなきゃ。
もやしだと思ってなめていた。
最初のうちは余裕があった。
でも、このもやしずっと同じ速度で追ってくる。
それに対して私のスピードは徐々に落ちている。
後ろを見る。
まだ追ってきている。
蠢くもやしを見て寒けがした。
絶対に捕まりたくない。
捕まったら
終わる。
・・・・・・
・・・
・・・
もやしな生活 = 暴走