07 四畳半の異世界
部屋に戻ってみると
少し変化がある。
のだが・・・
居間、キッチン、トイレ、風呂、全部含めて四畳半程度しかない。
主人公が異世界にトリップする話はよくある。
そういった物語では狭くて質素な宿で生活を始めたりする。
それなら俺だって文句は言わない。
だが、トリップした異世界が宿サイズというのはどうなんだろう?
狭過ぎやしないか?
でもまあ、少しは快適になった訳だし文句ばかり言うのも良くない。
見方を変えてみよう。
まず、何もなく殺風景だった白っぽい壁は・・・
なんということでしょう!
小さいながらも機能的なキッチンに生まれ変わっているではありませんか!
そしてもう一方の壁。
かつて分かりにくかったトイレの扉は
開き戸に変わっています。
これでもう暗がりで迷う心配もありません。
その隣にも新たな扉が
その先には今までなかった浴室を完備
もちろん脱衣所も備えています。
これで戦闘から帰ってもしっかり疲れを癒せることでしょう。
・・・・・・
・・・
「名島君、何してるの?」
すでにおかしくなってきているようだ。
「いや、面白いかと思って」
滑ってしまったか。
変なノリになっている。
「微妙かなー」
そう言いながらも彼女は笑ってくれた。
匠には1つだけ言っておきたい。
明かりも替えて欲しかったと。
まあ、暗視スキルのお陰で随分と見やすくなったんですけど。
できれば・・・明るいところでもう一度・・・
まあそれは置いておいて、
今持ち帰って来たものを確かめる。
枕
もやし
短刀
見事にバラバラである。
恐る恐る
短刀をその鞘から抜いてみる。
・・・・
これって
もしかして
「・・・包丁?」
そう、彼女の言う通り
これは包丁だろう。
なんでこんな見た目なんだ?
紛らわしい。
それに自動で働くんじゃなかったのか?
アナライズって。
アナライズしてみよう。
Info.
枕
大きめ、2人でも十分使える。
もやし
価格の優等生、家計の味方。
包丁
短刀のようなデザイン。
・・・なんだろう?
この不思議な気持ちは。
彼女も黙っている。
間違いなく包丁だということも分かった。
ということは刀が必要な相手は出て来ないと思われる。
(楽観的かもしれないが)
出て来るのは包丁が必要な相手・・・また食材か?
もやし以外が期待できる。
という訳でもう一度扉の奥へと向かってみることにした。
もちろん一気に進んだりはしない。
本当に危ない相手が出て来ないとは限らないのだから。
今回現れたのもこいつだ。
Info.
モンスター
一見するとただの枕。
攻撃
体当たり
まんま枕である。
でもそんなに枕ばかりはいらない。
「今回は私も手伝うよ」
「そうしよう」
枕くらいなら大丈夫だろう。
Info.
モンスターを倒しました!
高月 葵
経験を積みました!
Skill Get!
殴る
蹴り
名島 蛍
経験を積みました!
Skill Get!
蹴り
思わず見惚れてしまった。
何をやっても様になる。
今回はもやしの他にこんなものがとれた。
Info.
緑豆
もやしの原料になる。
育てろということだろう。
ただ枕は1つも得られなかった。
・・・レアだったのかな?
きっとそうだ。
いずれ手に入るに違いない。
沢山あっても処理に困るし問題ない。
さて、もう少し進むと新しいモンスターが現れた。
Info.
モンスター
一見するとただの毛布。
攻撃
巻き付き
静電気
静電気って・・・
天然素材ではないのか?
ポリエステルなのか?
Info.
モンスターを倒しました!
Level Up!
レベル1→レベル2
何度か戦ったがこいつから得られるのは
Info.
毛布
大きめ、温かいが静電気に注意。
Info.
大豆
畑の肉の異名を持つ。
ベジタリアンではないのに・・・
そして拭えない人口繊維疑惑。
問題はこの毛布も1つしか得られていないことだ。
建物の構造といい、得られるアイテムといい
誰かの思惑があるのではないかと疑いたくなる。
パーティーだということ、少なくとも2人以上いること
分かっているはずだよな。
なぜ1つしかくれないのか。
ここで一度戻ることにした。
アイテムは毛布に包んだ。
「お腹も空いてるし
食べてみよう。」
「そうだな」
キッチンスペース行くと
調味料は多少置いてあった。
一体何なんだろうここは。
設備の整い方が偏っている。
そして、確認しておきたいことがある。
キッチンの引き出しを開ける。
中には食器が並んでいる。
あった。
茶碗だ。
普通の
良かった。
これがもしも
夫婦茶碗とかだったら・・・
本当に何者かの存在を疑うところだった。
「名島君?どうかしたの?」
「いや別に。早速つくろう」
出来たのはシンプルなもやしの炒めものだ。
Info.
経験を積みました!
Skill Get!
料理
「こういうスキルもあるんだね」
「何か効果があるのかな」
「名島君、一人暮らしだけあって
ちゃんと料理できるんだね〜。意外」
「俺ってどういうイメージなわけ?」
「いつもぼーっとしてる」
「否定出来ない・・・」
ここに来ていろいろあった筈だ。
ハプニング的なことが。
しかし、険悪になるよりはむしろ
距離が縮まったように感じてさえいる。
もしかすると今まで眠っていた俺のイケメンな何かが目覚めたのか?
ないな。
なんだよ、イケメンな何かって。
これが吊り橋効果というやつだろうか。
今俺たちは、背中合わせになる形で寝ている。
なぜって?
急に寒くなって来たんだよ。
この毛布だけでは足りなくなりそうだ。
どうにかしてもう一枚手に入れたい。