02 図書委員
書いているうちに想定外の設定が追加されていく
どうにかならないものか・・
俺は図書委員だった。
特に本が好きだったわけではない。
他にやる人がいなかったので、手を挙げたのだ。
進まないからね。
やることも大したものはなかった。
当番制で図書室に行って
たまに本の整理とか、貸出の手続きをする程度。
とは言っても実質ぼーっとしているだけでいい。
なぜなら、この学校の図書室というのは利用者がほとんどいないのだ。
利用するのはごく少数、全員の顔を覚えられるほどだ。
そして、彼ら(彼女ら)はしっかりマナーを守ってくれる。
よって、非常に静かに過ごせるのである。
俺は騒いだりするのが嫌いなわけではない。
友人とわいわいやるのも好きだ。
しかし、静かに過ごすのもまた好きだった。
高月 葵と出会ったのはこの委員会活動を通してである。
彼女は別のクラスでこれがなければ話すことはなかっただろう。
成績は中の上
部活には入っていないが運動も得意
これが俺が彼女について知っていることだ。
それに加えて、
主観を除いても十分に美少女。
俺の基準からすればこれはもう完璧と言っちゃっていいと思う。
だが、特に目立つことはない。
なぜならこの学校かなり特殊な状況なのである。
男女ともレベルが異常に高い。
なぜって?
俺もよく知らないが
元々が有名な女子校というか、お嬢様学校というか
まあ、そんな感じだったらしい。
それがある時男女共学になった。
それでも入れるのはごく一部のみ。
何か事情があったのだろうか?
随分昔のはずだが一般の人でも入学できるようになった。
そして、今では幼児教育から大学まですべて揃っている。
それでも良家の〜、大会社の〜、芸能人の〜のような肩書のある人物は多いし、
あるいはモデルとか俳優、女優を目指すような人物も入ってくる。
そんなわけでかなりハイレベルなのである。
もちろん、そうではない人も普通にいる。
地元からの進学も多い。
途中からも入れるのだから。
俺もそうだし。
こういった人たちの多い学校だけに設備は整っているし、
慈善事業のような形で一般の人への奨学金も出してくれるのだ。
誰にでも教育を行き渡らせたいらしい。
試験が難しいかといえばそうでもない。
レベルごとに分けられるからだ。
下のレベルだと環境が悪かといえば
まあ、それは上と比べれば変わってくるが
普通の学校よりは断然いい。
まあ、素行不良とかは厳しいようだけれど。
今まで入学した中に問題を起こした人物はいないらしい。
警備もしっかりしているし実に安全だ。
えっ?そんな学校なのに図書室に来る人が少ないはずがない?
実は「図書館」が複数あるのだ。
多くの人はそちらを使う。
「図書室」は旧校舎の離れとして建てられた
古い施設で快適とは言いがたいが
歴史的に価値があるとかで未だ現役なのだ。
使わないとダメになるのだろう。
と、まあこんな学校にいると
いろいろな感覚とか価値観が麻痺するのだ。
致命的におかしくはならないけど。
では、話を戻そう。
彼女の話だ。
そこそこ話したりもする。
もちろん、図書室の中で、ではない。
朝、昼休み、放課後に鍵を開けたり、
朝と放課後、軽く周囲の掃除をするのも図書委員の仕事なのだ。
そういうときに話をしたのだ。
成績や運動のことはここで知った。
勉強を教えてもらうこともたまにあった。
因みに俺の成績は中の下くらい、ボリュームゾーンである。
俺が特に意味もなく話をする女子生徒というのは彼女ぐらいだった。