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ミッションプリンセス  作者: 雪ノ音
1章 王女の目覚め
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+0.5 生まれつき?

未だに世界の常識を理解していない状態は変わらなかったが、ナナカは一つの仕事を乗り越えた。

だが、ナナカの本当の試練はここからだった!

 会見場を後にしたカジルとナナカの2人は寝室を目指していた。

 ナナカは今日一緒に行動してみて、不思議に思っていた事がいくつかあった。いや不思議に思われていてもおかしくはないだろう。


 ……聞いてみるか。


「カジル。聞きたい事があるんだが構わないか?」

「はい。構いませんが、どのような内容でしょうか?」

「まず、分かっている……いやバレているとは思うのだが私は眠りに入る前の記憶がかなりあやふやだ。自身の事すら、よく思い出せない状態だ。それでだ……その……眠る前と今の私で変わった所はあるのだろうか?」


 ナナカからの質問の内容に、カジルはゆっくりと右の手を顎下へと持ち上げ、考え込むように足を止めた。その表情からも質問の返答を慎重に選んでいる様子は誰にでも分かる。色々と疑問に思われていても仕方がないと言っても良いだろう。記憶にない話し方や偽りの性格など作りようがなかったのだ。29年の夢の世界の感覚で動くしか選択はなかったのだから。もちろん地雷を自ら踏んでしまったかもしれないと多少の後悔もあったが、結局のところは先か後かの問題である。いずれ対峙する問題であれば今のうちに片づけるべきだと多少甘い判断に流されておく。


 やがて、こちらの思いを知ってか知らずか、天然記念物でも見るかのように見つめてくる視線に怖さすら覚えた時に、その口は開かれた。


「姫様、お伝え難い事になりますが……失礼を承知でお答えいたします。以前の姫様は……」

「お……おう。遠慮せず言ってくれ」

「はっきり言ってしまえば、おてんばで男勝りで頑固で、更には子供にしては背伸びをした考え方や話し方をした、世間では『おませさん』と言われる部類に入っていたかと。眼が覚めてからの方が、おとなしくというよりも大人になった気がするくらいです」

「ちょっとまて。それは今の私とあまり変わらない気が……というか悪口も入ってないか?」

「私は正直に申し上げたまでです」

「そ、そうか。すまん」


 29年の経験を以てすれば、これくらい言われても怒るナナカではない。

 とりあえずは夢の中で性格が変化したわけではなく、元々もカジルの言う性格通りなら今よりもひどかったという事。無駄な心配をしていたのは自分だけだったといえる。


「まあ、いいか……。では、もう一つ。先程、魔法について話が出ていたが、この館の中でも使える者は何人か居たりするのか?」

「はい。何人かおります。そして私もその1人ではあります」

「そうか。カジルも……って、カジル! 使えるのか!?」

「はい。宜しければお見せ致しましょうか?」

「おおおぉぉ、見たい! 見せてくれ!」

「では、得意の風の魔法を……」

「ちょっと待て! 場所は……場所は変えなくてもいいのか!?」

「私程度が使える魔法では、それほど規模の大きなものではありません。この通路でも周りに影響はないと思われます」

「えっ? そうなのか?」


 魔法と言えばモンスターをなぎ倒し、戦況を逆転させる奥の手という意識が強かった為、この通路内で使っても周りに影響がない程度とは拍子抜けと言うしかなかった。それともカジルの力不足なのかもしれないと、もしかすると失礼かもしれない感想が生まれてくるのも仕方がないだろう。


「では、行きますね。……風よ、見えぬ、その力にて世界に変化をっ! シルクウィンド!」


 生み出された風は床から天井へと上昇気流を思わせる温かみのある力を発揮した。

 まるで巨大な動物に息を吹きかけられたかのような感覚である。

 

 ……おおおっ! 思ったよりも結構あるじゃないか風! けっこう強い……って


「えええええええ!!! ちょっ、ちょっと待って~~~!!!」


 ナナカは館中に轟くような声を張り上げ、その声に釣られたかの様に風に巻き上げられてくる物を両手で抑え込むのに全精力をつぎ込む。


「きゃあああああぁぁぁぁぁ~~~~!!!」


 ナナカの声など無視した風魔法は容赦なく、抑えられた物=スカートをこれでもかと言わんばかりに巻き上げる。この時、1つだけハッキリ理解できた事といえば、自然と体の中から湧き上がった声は間違いなく女だったという事。


 ……夢の中で子供の頃には男の子としてスカート捲りをした事は数えきれない程あったが……これは恥ずい!! 恥ずかしすぎる!! 間違いなく女性の尊厳を著しく傷つける!! こんな行為は法律で禁止するべきだ!!!


 風はそれほど長い時間巻き起こっていたわけではないのかもしれない。やっていた側は大した時間ではなかった感覚しかないとしても不思議ではない。しかし、やられている側としては長い長い、とても長い時間を感じたとしても、これも不思議ではない。これを相対性理論ぜったいにちがうとでも言っておこうか。


 その相違点のあると思われる行為は幼い少女の顔が、熟れたトマトの様に染まり切った時にようやく風終結を迎えたのだった。


 残ったのものは目の前での絶叫など聞こえなかったかのように「私の風魔法見ましたか?」と自慢げに視線を送ってくるカジルが悪気もなく見せるポーズと、ナナカの羞恥心のみ。


 だからナナカは染まった顔を隠すように俯いたまま……


「な、なかなかの魔法だった。褒めて遣わす。私の前にひざまつくが良い」


 少々震えが混じってしまった声に違和感を感じたような表情を見せながらも、言われるがままにカジルは6歳の姫の身長に自身の頭の高さを合わせた。


 そしてナナカとしては狙い通りの、この高さが必要だったのだ。


「見たか……?」

「はい???」

「見たかと聞いている!」

「それは姫の青と白のストライプのした……」

「カジル――――――!」


 そこへ先ほどのナナカの絶叫に何事かと駆けつけたメイド達が丁度通路の角を折り返し現れた。もちろん、そんなことにナナカの意識は向けられていない。ただ、右腕に魔法よ宿れと願いながら振り上げ――


「このロリコン――! 変態野郎――!!」


 下ろされたナナカの右腕が風を切り、通路に乾いた音が響き渡ったのだった。

 この出来事の後から、ナナカ以外は意味も知らない「ロリコン」という言葉はカジルの二つ名として館の全員に認識されたのである。


 その後、崩れ去るように両腕を床についた男には、先ほど音がした方と逆の頬も捥ぎ立ての果実の様に変化していたという噂がメイド達の間では流れたと言われているが、それが示す真実についてナナカに確認した者は居なかったのだった。

すいません。ほぼストーリーと関係ありません。

しかし、これでみなさんもカジルさんを少し理解しましたね。ニコッ♪

もちろん、カジルさんからの反論は受け付けておりません。

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